秋葉原水曜日の会 06/01/18
1月16日に長男誕生。妻と赤ちゃんがまだ産院におり、娘も保育所に預けているので颯爽と秋葉原に出向く。「車に子どもを乗せてパチンコしている主婦のようだ」と言われたが、今回の参加はちょっと理由があった。先日メールをくれたエリックというオランダ人にこのゲーム会を紹介したのである。日本語があまりできないというので、インストのサポートが必要かなと思ってきたが、それは杞憂だった。エリックは英語ルールもドイツ語ルールもすらすら読めるので、インストをしている間ルールブックを読んでもらい、ゲームが始まれば(コミュニケーションゲームでもない限り)言葉なんて全く関係ない。というわけで2ゲーム目から別卓になり、いろいろ楽しんでもらえたようだ。
何度も参加しているうち知り合いも増えてきたが、それでも敷居は上がらない水曜日の会。先日はシンガポール人が来ていたし、国際化までし始めた。ゲームは異なる文化や言語の人々をも結びつける。
All the King’s Men|クラウド9|カルカソンヌ・新たな地|クリムズテープの建築士|マニトウ
オール・ザ・キングス・メン(All the King’s Men / フーゴ・ハル、奥谷道草 / イエローサブマリン, 2006)
コワモテなキャラクターが繰り広げる一騎打ち!
強烈なイラストでインパクトのあるゲームを作っているフーゴ・ハル氏の新作。 フーゴ・ハル氏はイエローサブマリンこれで4作発表したことになる(「hydra」「たぶらか」「POTATOでチョ!」「All the King’s Men」)。いずれも他の国産ゲームにはない野趣に富んでいて、ドイツの2Fシュピーレのような魅力があると思う。イエローサブマリンから出るのはこれで最後らしいが、次の新作がどこかから出ることを望む。
今回の舞台はどっかの国のジャングル。国境を挟んで密輸団が対峙している。一方は、ポテトチップの密輸を企むレッドマフィア。もう一方は、ドーナツの密輸を企むブルーマフィア。命を取るか取られるか、血で血を洗う抗争が繰り広げられる。
ゲームは2人専用で、将棋のようにして進める。相手方のキングを取れば勝ちだが、ナンバー2と呼ばれるもうヤツが同じ姿をしていてどっちがどっちか分からないようになっている。ナンバー2が取られてもゲームは終わらない。
もう1つ、運び屋というヤツらがいて、それぞれポテチかドーナツをキープしている。これを相手方の陣地を抜けて向こう側まで進めればそれでも勝ちだ。しかし、コマはキングかナンバー2の視野(直線方向)に入っていないと動かせない。これがなかなか憎いルールで、運び屋を奥に進めるにはどうしてもキングかナンバー2も前に出て行かなければならなくなる。そのため相手の手下の餌食になりやすくなり……。
しかしこれだけではない。視野に入っている相手の手下は、寝返って自分の見方にすることができるのだ。前線まで突進してきた殺し屋が、相手のボスの視線に負けてUターン! 近づいてきた敵は、こうして反撃に使うのだ。コマにはどれも一癖も二癖もある顔が描いてあるので、寝返ったりすると可笑しくてたまらない。
さらに、中央に呪術師がいて、これをものにするとちょっとした特殊能力が使えるようにもなっている。これでガチガチのアブストラクト色が和らげられ、ゲーム中に驚きのある展開がもたらされる(ヴァリアントで、特殊能力をなくしてガチガチにすることも可能)。
かりんさんとサシで勝負。小競り合いが続いていたが、お互いのボスが前進してからは激しい戦いに。お互いに運び屋をつぶされ、残すは相手のキングの命(タマ)を取るだけとなった。ふと手にした呪術師の能力「早駆けの薬草」でがぶり寄って倒したボスがキング。あっけない幕切れで私の勝ちだった。
2人用のアブストラクトがベースなので好みが分かれるかもしれないが、テーマ設定が秀逸なのでブラフや特殊能力を使いながらノリで遊んでもよい。ギャングは皆顔が描き分けられていて、どれもコワ面白い。もちろん、ガチンコ勝負が好きな人にもオススメ。コンポーネントに比して値段がちょっと高めなのが難点か。
クライド9(Cloud 9 / A.ワイスブルム / アウト・オブ・ザ・ボックス, 2004)
成層圏突入!
フワフワ上昇していく気球。いつ落ちるかは操縦士の腕次第。さあ、操縦士を信じて乗り続けるか、さっさと降りてしまおうか? 5年ほど前に発売されていたが、しばらく絶版が続いていた。これをアメリカのアウト・オブ・ザ・ボックス社がリメイク。雰囲気満点の素敵な気球コマでリメイク前よりも魅力のあるコンポーネントになった。ヴァイスさんお持ち込み。
はじめはダイス2コのチャレンジから。操縦士がダイスを振ったら、気球に乗っている他の人は気球に残るか降りるかを選ぶ。その後で操縦士はダイスに指示されたカードを手札から出す。出せれば上昇成功でポイントアップ。操縦士を交代してさらにチャレンジを続けていく。気球が上がるほどに振るダイスの数は増え、それだけカードを出しにくくなっていく。出せなければ気球に残っている人は皆バーストで0点。降りていた人はどこまで乗ったかによって点数が入る。
上昇していくにつれ、気球の上では心細さが広がっていく。「もうそんなに出せないだろう、降りる降りる」と皆が逃げ出した後、操縦士が一人ズバーンを指示されたカードを出してさらなる上昇に成功するとまさに有頂天。みんなそれを夢見て気球に乗り込むはずなのだが、夢は夢で終わるのかもしれない……。もっともカードのカウンティングである程度までは予想することができるので、現実的な選択に少し背伸びするぐらいが堅いようだ。また、残っているメンバーによってあえてカードを出さないで気球を落としてしまうという戦略的行動もある。
いいところで降りるという堅い選択をしたかりんさんが頭ひとつ抜ける。しかし終盤になって気球の調子がどんどんよくなり(=皆手札が貯まってきた)、高く高く上がっていく。これで他の人も急速な追い上げをする中、序盤は撃墜王だったTさんが見事1位。バーストゲームというだけでない、展開の盛り上がりや細かな戦略性があって楽しめた。
カルカソンヌ・新たな地(Carcassonne – Neues Land / L.コロヴィーニ / ハンス・イム・グリュック,2005)
カルカソンヌより良いカルカソンヌ
拡張も含めると10作以上が発売されているカルカソンヌシリーズの中で、原作以外のデザイナーが携わったものが2つある。ひとつはR.クニツィアの2人用ゲーム「ディ・ブルク」、そしてもうひとつが昨秋発売されたばかりのこれだ。デザイナーはイタリアゲーム界の筆頭コロヴィーニ。もともとはイタリアのメーカーから発売される予定だったのが、結局元の鞘に納まってハンス社から発売された。FRTSさんお持ち込み。
この新作の最大の特徴は、手下を途中で回収できるというルールだ。原作では、地形が完成しない限り手下は回収できなかったため、周囲が塞がれてどうしようもない地形で泣くこともあった。乗っ取り合戦や、お互いの地形を潰しあうゲーマー的な展開はカルカソンヌがもつ平和な雰囲気を壊しがちだ。今度は、手下が4人と少ないけれども完成していない地形からも回収でき、見込みのない地形に見切りをつけることができるようになった。もちろん、完成まで頑張れば得点が高い。
しかしこれだけならば、カルカソンヌでもバリアントとして遊べるだろう。「新たな地」では、このルールを生かすための新しい得点ルールが採用されている。手下が置けるのは海・平原・山の3点だけだが、このうち山はその広さではなく、山にある都市と、山に隣接する平原の都市が得点になる。すなわち、山を完成させた後でも、山の隣にある平原をどんどん伸ばして都市を増やせば増やすほど、山の得点が上がるというわけだ。ついでにその平原にも自分の手下がいれば、1粒で二度美味しい。……そんなことを考えていると欲張ってしまってなかなか回収しづらいぞ!
ちなみに手下の多数工作による乗っ取りルールはなくなって、後でつながったらどちらも同じだけ得点できるようになっている。そこで共同で地形を育てていくという戦略も十分アリだ。初心者から上級者まで、カルカソンヌの軽さを損なわず、バランスよく仕上げたと思う。
FRTSさんが抜け目なく、中ぐらいの地形を手堅くまとめていって独走の展開。最後にずっと待っていた三方塞がりのタイルを引いて山を完成させたものの、近くに都市が少なくて追い上げきれず。勝敗を抜きにしても海と山が広がるタイルの光景が美しく楽しめた。ただ面白い改良を加えたとはいえ、カルカソンヌはカルカソンヌである。オリジナリティがあるとは言いがたい。まだカルカソンヌをもっていないという人、カルカソンヌが大々の大好きという人に薦めたい。
クリムズテープの建築士たち(Die Baumeister des Krimsutep / M.ズィーンホルツ / クリムズス クリムスクラムス-キステ, 2005)
技巧派のトリック&配置ゲーム
トリックテイキングをしながら、ナイル川沿岸に神殿やオアシスを作っていくカードゲーム(ボードはメーカーのサイトからダウンロードして自作)。昨秋にKKKK(クリムズのガラクタ箱)という小メーカーから発売された。メジャーとは言えないメーカーだが、エッセンには長いこと出展していて、日本にも少しずつ紹介されている。たけるべさんお持ち込み。
はじめにこのラウンドで建設したい品をひとつ、裏向きにして出す。オアシスか神殿か神柱の3種類。その種類でトリックテイキングに一番勝てば、建設時のボーナスが2倍になる。手札を見て、どれなら勝てそうか予想しよう。
トリックテイキングで決まるのはこのボーナスチェックのほかに建設監督がある。切り札のスートで一番勝った人が、そのラウンドの建設の順番を自分も含めて全員に指定できる。建設の順番がなぜ重要かというと、それは得点方法に関わるからだ。
オアシスは、隣接する神殿の数×ナイル川からの距離が最後に得点になる。したがって神殿のとなり、ナイル川から遠いところは誰でもオアシスを作りたがる。また先にオアシスを作った人は、そのとなりに神殿を建てることをもくろむだろう。
神殿は隣接する神殿の数が多いほど得点が高い。ただし4つまでしか大きくできないので、他の人が育てた神殿にちょうどよいタイミングでもぐりこめるかがカギだ。
大きさの制限がないのが神柱で、連結している限り、後から建てた人ほど得点が高くなる。これで大逆転のチャンスがあるが、建てるところがなくなったら終わり。なにしろナイル川沿岸は広いようで狭い。
こんなわけで後ほど有利な場合も、後では間に合わない場合もあり建設の順序が重要になることが分かるだろう。
草場さんが豊富な切り札で切りまくり先行、ほかの3人がそれを追う展開となった。神柱に一縷の望みを託したたけるべさんが、ワンチャンスで22点の大量得点をものにした。これで逃げ切り1位。私はというと、トリックの読みも冴えず、建てるもののタイミングが合わなくて裏目裏目になりビリ。トリックテイキングは配牌の運ではない。テクニカルで戦略的な手腕が試されるゲームである。
マニトウ(Manitou / G.ブルクハルト / ゴルトジーバー, 1997)
やたらシビアなバッファロー狩り
ハンターカードを出してバッファローを狩り、そのハンターカードを戦士カードで捕虜にする。3つの狩場で、以下に多くのバッファローとハンターを獲得できるか。
捻りのあるカードゲームが面白いブルクハルトの作品で、1997年のドイツ年間ゲーム大賞ノミネート、アラカルトゲーム賞5位、ドイツゲーム賞10位と3賞全部に入賞している。もっともこの年はボーナンザとカタンの開拓者カードゲームがヒットし、カードゲームが高く評価された年だった。
狩場にはバッファローカードが置かれる。そこに順番に1枚ずつ、自分のカードを出していく。手札を出し終わったところで、狩場ごとにハンターカードの数字が一番大きい人が大きいバッファローを、二番目に大きい人が小さいバッファローを取る。ここは純粋な数比べだ。
狩場にはハンターの代わりに戦士カードも出すことができる。戦士には強弱があって、負けた戦士は捕虜になってしまう。こちらはじゃんけんのような仕組みになっている。
手札を出し終わったところで、戦士はその狩場にいるハンター全員を捕虜にできる。バッファローは1~13点だがどれが取れるかはふたを開けてみるまで分からないが、捕虜は1枚1点で、確実に点数になる。両方を臨機応変に得点源にした人が勝つ。
これだけならば普通のカードゲームかもしれない。ここに2つの驚くべき仕掛けが入っている。1つはデッキ構築。ラウンドごとにカードを8枚選んでデッキを組み、そこから3枚を手札にするのだ。途中であのカードを入れておくんだったと後悔しても後の祭。読みがぴったり当たれば大喜び、外れれば悩ましい選択を迫られることになる。
もう1つは、ハンターを出しすぎた人に与えられるマイナス10点のペナルティ。バッファローを取るには数字の大きいハンターカードを出さなければならないわけだが、3つの狩場の合計が一番大きい人はマイナス10点になってしまう。だから狩場ごとにメリハリをつけ、同じ狩場でも僅差で勝てるように工夫しなければならない。最初から大きい数字のカードを出すのは危険だ。これがデッキの制限とあいまって、強烈なジレンマを引き起こす。
たけるべさんがその罠にはまり、実入りも大きいけれどもマイナス10点で抜かれてしまう。私は大きいバッファロー中心に狙っていったが、捕虜が手薄になって届かず。1位は、捕虜をごっそり集めつつ、バッファローの抜かりもなかったお向かいさん。
カードの数字を常に計算しながらしなければならないし、デッキ構築も難しいので気軽なカードゲームではない。中級ボードゲームに匹敵するぐらいの悩ましさと楽しさがある。