山形には温泉がたくさんある。全市町村に最低1つはあるという温泉王国だ。1日の最高気温が0度にもならない冬には、温泉につかるのが一番。手足のすみずみまで隈なく温まる上に、その温かさが持続し、ぽっかぽかでいられる。
筆者の実家の近くにも、小さい温泉がある。「あやめ温泉桜湯」という。小さいがゆえに商業化しておらず、地元の組合によって運営されている隠れ湯的な存在である。入浴料300円。
日帰り温泉だったが、最近別館が建てられ、宿泊ができるようになった。一泊体験入居できるモデルハウスが温泉のそばに建ったということらしい。写真左の建物が貸し切りで1泊15,000円。5人で泊まれば1人3,000円という破格のお値段となる。夕方お風呂に入って夕食をとり、夜遅くまで宴会をして翌朝もう一風呂なんてことも。
こんないいところを放っておくわけにはいかないということで、知り合いを呼んでボードゲーム会を開催した。
建物の中はドイツゲームにふさわしく総木目のつくり。カウンター席のあるキッチン、20人くらいは入れそうな宴会場、そして寝室が2つとヒノキ風呂。モデルハウスになっている。
当日は午後に集合し、実家で3ゲームほどした後、温泉に移動。入浴と夕食の後、軽く飲みながら深夜3時近くまで6ゲーム。朝起きてチェックアウトまで軽く1ゲームというスケジュール。
参加者は仙台から神尾さん、天童からmuraさん、山形からUさん。地元の友達のてっちゃんとみっちゃん。そして妻と私。
深夜は集中力が続かず、ベストを尽くしたとは言えないが、どっぷりと温泉とゲームに浸って、心から楽しむことができた。「ここでゲームをしたい!」という方、ご連絡ください。
パパラッツォ|魔女の踊り|シュティッヒルン || ギャンブラー|LCR|ダイナマイト|7人の賢者|ラストパラダイス|看板娘 || ケープからカイロへ
パパラッツォ(Paparazzo/F.Friese&W.Panning/Abacus, 1995)
有名人のスキャンダル写真をすっぱ抜いてお金を儲けるゲーム。ダイアナ妃の事故死で有名になったパパラッツォがこのゲームのテーマです。絶版ですが神尾さんのリクエストでエッセンから買ってきました。
ゲームには8人の有名人が登場します。そして彼らは人には言えない秘密を持っています。変な料理を作っている有名コック、プラモデル作りが趣味の大臣、女遊びばかりしている音楽プロデューサー…その写真を競りで買い集めます。スキャンダル写真がたくさん世に出回るほど、その写真は高騰していきます。勘と推理で、お値段の高い写真を集めます。
1ゲームで使う写真カードは全部ではありません。なので、ゲームごとにやたら写真が出てくる有名人と、ほとんど出てこない有名人がいたりします。1枚だと写真の価値は1,000ですが、最高の8枚出れば、36,000にもなります。
最初に場に出ているのはたったの3枚。残りはプレイヤーの手札の中にあります。はじめに全員、右隣のプレイヤーの手札を見せてもらいます。あとはそれ以外のプレイヤーの入札値から、どのカードが高くなりそうか推理していかなければなりません。高くなりそうもないのにわざと高い額をつけてブラフをかけたり、ブラフだと思ったらほんとうに高くなってしまってびっくりしたり、非公開情報の中での手探りが醍醐味です。
手番プレイヤーが場の3枚から1枚カードを選び、競りが始まります。ほかのプレイヤーは1巡だけ競りをします。手番プレイヤーはその最高値で買えますが、買わなければ最高値をつけたプレイヤーに買い取ってもらって、手数料を半額もらいます。ふっかけられてあまりに高かった場合、あるいは足許を見られて手持ち金以上つけられた場合には、買い取ってもらうことになるでしょう。
途中でお金がなくなってきたら、資金調達のために手持ちの写真を有名雑誌に売ることができます。まだ値段が上がるかもしれない写真を売るのは後ろ髪が引かれますが、競りを有利に進めるにはお金が必要。うまく見切ることになります。
最後に手持ちのカードをそのときの価値で計算し、残りのお金を足して一番多いプレイヤーが勝ちです。ゲームはボロボロ出てきた有名人のコックさんを初期に安く競り落としていたKyoさんが勝利。運の要素が大きいですが、1枚出るごとに競りが盛り上がって楽しいゲームだったと思います。
魔女の踊り(Hexentanz/B.Hoelle/F.X.Schmid, 1989)
ほかと外見上は見分けがつかない自分の魔女コマを、ボードを1周してゴールさせるゲーム。1989年の大賞ノミネート作。記憶の曖昧さを楽しみます。昔ニチユーで発売されていたのを神尾さんがもっていました。確か少し前新宿のYSに1コあったと記憶しています。
各プレイヤーのコマは底に絵が書いてあり、スタートを出るとほかのコマと見分けがつきません。サイコロを振って好きなコマを進めます。ボード上にはたくさんのコマがあり、ぐるぐる回っているので「たぶんこれがオレのかな…」というように記憶はすぐに曖昧になります。
ほかのコマのマスに入ると、そのコマを7マス戻すことができます。そのときに戻されたコマの中身が公開されます。「そんなところにいたのか…!」なんてことも。
自分のコマを全部ゴールに入れたら勝ち。地道に1周するよりも、ほかのコマをぶつけて戻し、逆向きに行った方が近いのでまた悩ましくなります。
muraさんとてっちゃんは1周してくる間にロストしていた模様。その2人が適当にコマを動かすのでいろいろな思惑は水の泡。「それはオレのだー!」と心の中で叫びます。最後は慎重に徐々にゴールに近づいていった私が混乱に乗じて勝ちました。記憶ゲームですが記憶力の強い人が勝つとは限らないゲームで、笑いを交えながら遊ぶのがよいだろうと思いました。
シュティッヒルン(Sticheln/K.Palesch/Amigo, 1993)
マイナスカードを押し付けあう変形トリックテイキングゲーム。メビウスの隠れたロングセラーです。93年にカードゲーム賞を受賞した古めの作品ですが、このごろ復刻しました。
カードが配られたら、自分のマイナス色を1つ決め、その色のカードを一斉に公開します。この色のカードを取ってしまったら、何とカードに書かれた数だけマイナスポイントになってしまいます。一方、それ以外のカードは1枚1点なので、-14などをつかまされてしまったら、まず立ち直れません。マイナス色はプレイヤーごとに違うので、さまざまな思惑がはたらきます。
さて、ゲームが始まったらスタートプレイヤーから1枚ずつ出していき、一番強いカードを出した人が全部を取ります(いわゆるトリックテイキング)。最初のカードを同じ色を出す必要はありません(いわゆるメイフォロー)。そして何と、同じ色でない方が強いというルールになっています(いわゆるリードカラー以外が切り札)。すなわち、数が小さくとも最初の色と違っていれば取れてしまうかもしれないのです。
マイナスは取りたくない、でもマイナスの入っていないトリックは取りたい、そしてマイナスはほかのプレイヤーに押し付けたい…どのカードでも出せ、しかも勝つ可能性がある中での選択は頭を悩ませます。実際、何年か前に1度遊んだときには考えるのがたいへんだったのでしばらく遊んでいませんでした。
今回は定石が分かってきて、楽しくなりました。スタートプレイヤーならば最後に出す人が取れないよう、マイナスカードから出す。上家ならば安牌(絶対取らなくて済むカード)を出してマイナスカードを押し付けられないようにする。最後あたりならばマイナスを押し付けられなさそうだということを読んで取りにいく。これらの原則のもと、今出ているカードの構成とほかのプレイヤーのマイナスカードを見比べながらカードを出していきます。それでも頭をかなり使いましたが、エキサイティングに盛り上がりました。2回行って神尾さんとUさんの同点優勝。
ギャンブラー(Gambler/Unknown/F.X.Schmid, 1998)
サイコロを振って数を揃え、チップを集めるゲーム。2回目です。今回は6分の1や36分の1という難関を、みんな平気でチャレンジするという文字通りギャンブラーな展開でした。その中から大金をものにする一握りの人々、そして散っていく数多くの人々。1位は、ゴッドハンドで着々と点数をためたUさん。
盛り上がり方では、明らかに同じダイスゲームのブラフよりも上です。ダイスを振った瞬間に結果が出るわけですから。1つだけマイナスの列が残り、最後の1コを出したら負けという状況で、ひとりひとりダイスを振っていくところは息をのみました。
考えるところは少なく、えいっとダイスを振るだけ。酒をのみながらでも盛り上がれるパーティーゲームでしょう。
LCR(LCR/Unknown/George&Company, 1992)
ダイスでチップを回し、チップがなくなったら抜けて最後まで残った人の勝ちという簡単ゲーム。Lが出たら左へ、Cが出たら対面へ、Rが出たら右へチップをあげなくてはなりません。「●」が出ればセーフ。チップがなくなってしまったら負け。残っている人で勝負を続けます。最後に1人生き残ったら勝ち。
2人まで残ったあたりでチップがいったりきたり、終わらない展開となり、判定で神尾さんの勝ちとなりました。ダイスはLCRが出ないようにするというネガティブなもので、自力でチップを集めるのではありません。自分の番でないときにチップが回ってきます。その歯がゆさがこのゲームの魅力と言えるでしょう。
ダイナマイト(Dynamite/H.Shafir/Shafir Games)
20秒前にセットされたダイナマイトを爆発させないように回すカードゲーム。イスラエルのゲームでだいぶ昔に発売されていたのですが、このごろ広島から入手できるようになりました。
手番にはカードを出しながらその分だけカウントダウンします。0以下にしてしまった時点で爆発、その人の負けです。5秒増やすもの、30秒前に戻すもの、リバース、次の人が2回という特殊カードもあります。
爆発カードが来たら、出してはいけません。残りの手札でやりくりしなければならなくなります。爆弾が迫ってくる焦りがよく表現されたゲームです。1ラウンドも早ければ数十秒で終わるというスピーディな感じもいい感じです。昔サルのように延々とやっていたなあと言ったら、神尾さんもそうだったということ。重いゲームに疲れたときや、手軽に遊びたいときなどにおすすめです。
7人の賢者(Die sieben Weisen/R.Stockhausen/alea, 2002)
ファンタジーワールドの7つの職業をわたりあるきながら価値の高いクリスタルを集めるゲーム。アレアの小箱シリーズ第3弾で、期待の高かった作品ですが、ドイツ語のカードがあったせいかしばらくメビウスからの発売が遅れ、発売から1年近くたって初めて遊ぶことができました。
ゲームはプレイヤーが2手に分かれて勝負し、買った方の陣営がクリスタルをもらえるというものです。どれだけ勝ち組に所属できるかがポイントとなります。
職業は「ドルイド」「尼僧」「魔法使い」「予言者」「ヒーラー」「魔女」「錬金術師」の7つ。これだけでもう心躍ってくる人もいるのではないでしょうか。はじめに手札を見ながら職業を1人ずつ選びます。
職業を選んだらみんな一斉に交渉を始め、2手に分かれます。各陣営の中ではカードを自由に交換できるので、手札をお互い見せ合いながら、気に入った職業の相棒を見つけます。
そして手札の交換が終わったら戦闘。順番に手札から1枚ずつカードを出し、力比べをします。原則として自分の職業のカードしか出せません。
勝負が決まったと思ったら戦闘から離脱できます。早く離脱すればカードをたくさん出さなくてすむので、次回の戦闘で有利になります。しかしあまり早く離脱しすぎると自分の陣営が勝てないというジレンマがあります。最後まで戦い抜くか、あとはおまかせで撤退するか、悩みどころです。
勝負が決まったら(どちらかの陣営がみんな降参して離脱したら)、クリスタルを買った陣営で分けます。このとき、6角形タイルによって職業の優先順位があり、上から順に高いクリスタルをもらいます。この優先順位も、職業選択や同盟に影響を及ぼすでしょう。
こうしてタイルを渡り歩き、下から終了タイルが出てきてそこに来たときにゲーム終了です。残りの手札に若干ボーナスがあって、クリスタルの合計点の一番大きいプレイヤーが勝ちます。
戦闘が白熱しました。今回は5人プレイだったため、3人の側につけばまず負けません。しかしもう勝ったと思って早々と抜けると、戦闘の後半に相手が数字の高いカードを出してきて逆転負けなんてことも。手札の配牌によるところがずいぶん大きいように感じましたが、その分意外性も楽しめるといったところでしょう。交渉が入ったりするのでプレイ時間は結構かかり、重い印象を受けました。
ラストパラダイス(Der letzte Paradies/R.Knizia/Frankh, 1993)
最後の楽園となった南国リゾートを自然に気をつけながら開発していくゲーム。私の前回のレポートを見て神尾さんが入手されたものだそうです。
今回は森が2本だけ作られ、自然保護ボーナスで建物をほとんど買わなかったてっちゃんが1位。私はエリアボーナスと自然保護ボーナスがあったのですが競りに突っ込んだお金が多くて2位。あとの森を作らなかった人たちは全員赤字という結果になりました。
競りの相場が15パラ(パラ…この島の通貨)くらいで推移していたので厳しかったと思います。同じメンバーで何度かやるとだんだん相場観がつかめてくるのではないでしょうか。
「全員が同じことをすると全員負ける」というのは、クニツィア氏のひとつのメッセージなのかもしれません。
看板娘(Fische Fluppen Frikadellen/F.Friese/2F Spiele, 2002)
街を回りながら物資を買ったり交換したりして、最終的に神像3つにするわらしべ長者のようなゲーム。昨年のエッセンで発売され、評判がとても高かった作品です。
まず街には12のお店が並べられます。物資を売買できるところ、物々交換できるところ、そして神像をくれるところの3種類で、ゲームごとに毎回変わります。1回の手番には3移動ポイントを使ってこれらの店を渡り歩きます。
それぞれの物資には現在の相場というものがあって、常に上下しています。安いものを買い、高いものに交換して売れば儲けになります。これがまた資金となり、物資をいくつか集めれば神像を入手できるようになります。
さて、プレイヤーが活動するとそれぞれのお店も動き始めます。タバコ屋さんでタバコを買うとハンバーガー屋さんに新しいハンバーガーが入荷したり、そのタバコを交換所でお酒に換えるとハンバーガーが値上がりしたりするのです。これが複雑に入り組み、ボード上は刻一刻と変わっていきます。
そこでプレイヤーは、ほかの人の動向を見ながらどのお店に行くか考えなければなりません。この結果、ゲームはとてもインタラクティブです。一足先にお店に入られて買うものがなくなってしまったり、値をつりあげられて買えなくなったりします。「あの人はそのお店に入るだろうから、そこで相場が上がったところで売れるな」などという読みが有効です。
お店は全部で36あり、効果がちょっとずつ異なります。ここから12のお店を使ったときに全ての物資がちゃんとそろうように配列されています。これがお店を変えてまた遊んでみようという気にさせます。システムとしては移動ポイントや相場変動など、目新しさはありませんが、その組み合わせの妙で楽しめるゲームとなっていました。店番の絵柄も見ていて楽しく、街でショッピングという雰囲気もよく出ています。噂にたがわず、とてもよいゲームです。序盤に荒稼ぎし、それで物資を揃えた私が僅差で勝利。
ケープからカイロへ(Vom Kap bis Kairo/G.Burkhardt/Adlung, 2001)
アフリカ大陸の厳しい地形を縦断して鉄道を引くカードゲーム。昨年のドイツカードゲーム賞で1位を取った作品です。「モイタラ」「操り人形」「フェレータ」など、ドイツカードゲーム賞歴代1位のゲームと比べると、ルールも少なくお手軽です。
はじめ地形をプレイヤーの数だけめくって競りをします。一斉公開で多い人から好きな地形を取っていきます。サバンナなどの渡りやすい地形から、川などの厳しい地形までいろいろありますので、状況を見て競り値を決めます。
地形を取り終わったら、そこに線路を引きます。山札からカードを1枚ずつ順々にめくります。地形カードには部品(線路マーク)が描かれており、地形が要求する部品数に最初に達した人が、線路を建設できます(カードを裏返して列車を1つ進める)。このようにして最初に8枚の地形に線路を建設した人の勝ちです。
誰かが先頭までいく度に地形の競りが行われるので、難しい地形に直面しているとなかなか進めないことがあります。しかしここがこのゲームの面白いところ。その先に置かれた地形カードに置かれた部品も利用することができるのです。あと、川を渡れないでいると部品の補給が受けられます。これらによって、後ろの方にいる人ほど進みやすくなっており、ゲームは必ずといっていいほど接戦になります。
さらに足りない部品はお金で買うことができます。最後までお金を温存しておけば、ラストスパートがきくでしょう。ゲームはmuraさんがずっとトップでしたが、最後にお金をどーんと使って神尾さんがラストスパートをかけ、1位。これまた何度か遊んでみたいゲームでした。