つくばから山形への引っ越しも終わり、ゲームの整理も済んだのでお彼岸の中日にゲーム会を開催。
棚からはみ出した分は処分すると家族に申し渡されて棚にびっしりと詰めてはみたものの、これではもう新しいゲームを買うことができない。そこで未プレイのゲームを遊び、ほかに棚に残っている既プレイのゲームと比較した上で放出するという作業を行うことになった。
棚に残す基準は面白いかどうかばかりではない。面白くても遊ぶ機会がなさそうで放出することもあるし、逆に面白くなくてもデザイナーやメーカーに思い入れがあるとか、自分がルールを翻訳したとかで残すこともある。放出はつらいが、死蔵させておくよりもよそで遊んでもらった方がいいと割り切ることにした。というわけで今回のゲーム会で少しだけできた隙間、また埋まるのも時間の問題だろう。
ツァール|イカス!波乗り野郎|ナイルの河岸にて|モールワールド|スピーディーサンデー|チーズにかけろ!
ツァール(Tzaar / K.ブルム / スマート, 2007)
取りきるか負けるか
2人用アブストラクトに新しい次元を持ち込んだギプフシリーズの最新作。ギプフシリーズ全6作が出た後の発表となったが、砂時計を使う『タムスク』と入れ替えで6タイトルの中に入った。後からわざわざ入れたというのに相応しい秀逸さをもつ。
勝ち負けは3種類あるコマのうち1種類を全部取れば勝ち、その前にどれも取れなくなれば負けというもの。取るのは簡単で、相手のコマが隣接するか、途中が空いていれば一直線上にあればよい。
手番には2回の移動ができるというところがこのゲームのポイントだ。1回目で相手のコマを取って、2回目はさらに相手のコマを取るか、自分自身のコマを重ねる(スタック)かが選べる。
重ねると高さの低いコマには取られなくなる。残り少ないコマを防御するのにはよいが、その分自分のコマを少なくするわけで、動かせるコマが少なくなって厳しいところだ。
とりあえず数が少ない◎を取り合うことになるだろう。お互い数が少なくなると、防御のためスタックを始める。取られないように逃げるか、さらに重ねて相手より強くなるかしているうちにコマが少なくなってくる。そのうち○や無印も数少なくなっていき、逃げ場も少なくなって……こんな展開になった。
相手を追いつめて有利に見えても、自分のコマが減るために逃げきられる可能性もあり、勝負は最後まで分からないのが面白い。ただゲームの進行は早く、読みの深さが勝敗を分けるので、一手一手が長考になりやすいかもしれない。
イカス!波乗り野郎(Surf’s Up, Dude! / A.R.ムーン、A.ワイスブルム / ジョリーロジャー, 2008)
波は満員です!
大波小波でベストポジションを取って、トロフィーと美女を争うゲーム。ムーンとワイスブルムといえば、ドイツ年間ゲーム大賞の常連コンビだったが、ムーン単独作の『チケットトゥライド』以降はあまり活躍を聞かない。
そんな中でアメリカのメーカーから出たこのゲーム、サーフィンをテーマにした陣取りである。波タイルを置いて、順番にカードを出して自分のサーファーを波に乗せ、ダイスで指示された波でポジション争いをして、また波タイルを置き……という繰り返し。サーファーは波と一緒に海岸に近づいていき、やがてたどり着いたときの位置で得点が与えられる。ラウンドが終わるたび、波から降りてきたサーファーを沖に移動するか、手札を補充する。サーファーがいなくても、手札がなくても波に乗れないから、バランスよく態勢を整えていかなければならない。
ビッグウェーブを待つよりも、来た波にどんどん乗っていった方が得点が高いから、どの波もすぐ満員になる。満員になった波は、予想外の遅さでゆっくり浜に近づいてくる。そのさまはまるで朝の満員電車。終点で降りて真っ先に仕事にいくみたい。時間が経つとオフピークしてまばらになってくるところまで似ている。陣取りはなかなか熱いが、波乗りをしているような気分にはあまりなれなかった。
1人だけで乗っていた小さい波が連続して鮫に襲われ(さしずめ人身事故といったところか)3位。通勤というテーマだったら面白いのかというと、それはそれでつらそう。
ナイルの河岸にて(Auf dem Ufern des Nils / H.クーン、W.クーン / アバクス, 1994)
肥沃な土地ほどリスクが高い
洪水と旱魃を繰り返すナイル川の河岸で農作物を栽培し、市場に売るボードゲーム。ボードもチップも地味なイラストだが、不安定な農業を描き、盛り上がりどころもおさえた実によいゲームだった。作者は昨年『ウルク』を発表しており、しっかり作りこむタイプのデザイナーのようだ。
はじめにスタートプレイヤーが洪水か旱魃の処理を行う。洪水の時期なら、洪水タイルを置いて畑をつぶし、旱魃の時期なら洪水タイルを取り除いて畑を増やす。洪水タイルを置ける場所がなくなったら旱魃、全部取り除かれたらまた洪水と季節が変わるが、タイルの効果で早まることも。
洪水タイルには、一重線と二重線があり、河岸から伸ばしていくにはパターンが同じでなければならない。各プレイヤーが使えるタイルのパターンは見て分かるから、各列が次の季節に安全か危険かが予想できる。これを先読みして栽培しないと、折角植えた種が水に流されてしまうだろう。
手番の行動はアクションポイント(AP)制で、3AP、それにジョーカータイルで追加APがある。アクションの種類は、種を植える、育てる、収穫して市場に送るという基本の3種類に、チップの回収、ジョーカータイルの獲得がある。1回の手番で同じ畑を促成栽培できない。また、同じ畑にもう1枚チップがあると、1AP余分にかかる。
畑は、河岸に近いほど肥沃度が高く、肥沃なところで作られた作物はどの市場にでも出せる。でも安全で肥沃な土地はほかの人も栽培しに来るので、追加APがすぐ必要になるだろう。一方、河岸から遠くでは洪水タイルが来にくい分、そこで作られた作物が出せる市場は限られてしまう。しかしほかの人が来なければ、少ないAPでどんどん出荷できるというメリットがある。
さて市場は、肥沃な土地からの作物しか受け付けない高級なものから、何でも受け入れるものまで4つある。それぞれ作物がいっぱいに並ぶと決算が起こり、一番多く置いていた人から得点が分配される。高級な市場は少ない作物でいっぱいになるが、それでも出荷が少ないといつまで経っても得点が入らないという仕組み。低級な市場はより多くの作物が必要になるが、ほかの人と共同で出荷すれば効率がよいことだってある。さらにそれぞれの市場では前にあった2種類と同じ作物は出せないという縛りがあり、栽培する場所と出荷先の選択を悩ましくしている。
序盤から安全な途中の農場で栽培し、ほかの人と一緒にどんどん出荷して得点を稼ぐ私。高級な市場を狙った野洲さんは、洪水期が長く続いたために後続が絶えてしまって心機一転、不毛な土地へ。そのうち旱魃期に入ったが、あっという間にまた洪水期に戻ってしまった。その合間にできたわずかな肥沃な土地に分け入って神尾さんが急進し1位。
スタートプレイヤーの権限が大きいので、手持ちの洪水タイルと作物チップを見て、何をしそうかよく考え、先手先手を打っていくところがとても面白い。もちろん、その裏をかいて行動することもあるし、めくられたタイルで計画が崩れることもある。そういう中での選択がとても悩ましく楽しいゲームだった。
モールワールド(Grosse Geschäfte / A.マイアー / ビーウィッチト・シュピーレ, 2004)
理想のショッピングモールは遠く
契約カードで示されたパターンに合うよう、ショッピングモールを組み立てていくタイル配置ゲーム。ドイツのメーカーの中では2Fシュピーレと並んで異色なメーカー、ビーウィッチトの少し前の作品である。
手番には許可カードを出して店舗チップを置くか、契約カードを出して得点パターンを決めるかのどちらかを行う。契約カードには2店舗の並び方の指定があり、例えば隣接しているレストランがあれば収入になる。同じパターンを作れば作るほど収入も増えるので、契約カードに沿って店舗を並べるか、後になれば店舗のパターンが多い契約カードを取るようにしたい。
許可カードの使い方が独特で面白い。3枚まで出すことができるが、自分が使えるのは1枚だけ。1枚ならお金を払って自分が使う。2枚なら握り競りをして勝った人が使い、残りは無料で自分が使う。3枚出すと、上位2人が2枚を使い、自分は1位の握った分をもらって残り1枚を無料で使う。ほかの人にはそれぞれ思惑があり、自分の望むようにはおいてくれないものだ。何とも悩ましい。
それから契約カードを出す度に取る賄賂チップもタイミングをコントロールしていて面白い。この賄賂チップ、プラスとマイナスがあり、最初のうちはプラスのチップでリベートをもらえるが、後になると払うのは逆にこちら側。先に契約カードを出すのは状況が見えない上に、ほかの人がそれを見て邪魔してくるので得点しにくい。後出しは状況を見てから判断できるが、賄賂を払わなければならない。この両天秤をどう判断するかが面白いところである。
契約カードはやがて店舗の並びから、店舗のターゲット層に変わる。今度は女性向けレストランや、子供向けホビーショップなどを作らなければならない。そこで許可カードは店舗チップを置くだけでなく、店舗チップの上にターゲットチップを置くのにも使えるようになる。これも指定されたパターンを作るほど収入が増えるが、店舗の並びより待ちが狭くて難しい。
そしてゲームの最初に1枚だけ配られた特別契約カードがある。これはターゲット層まで指定された店舗の並びで、1パターン作るのもたいへん。うまくほかの人の契約に相乗りしながら、収入チャンスを増やしたい。
第1ラウンドは私と神尾さんに店舗の並びで大収入。第2ラウンドはターゲット層で伸び悩んだり、早くも特別契約カードが出たりして混戦模様となる。最終ラウンド、最終ターンで鴉さんに相乗りした野洲さんが一気にごぼう抜き。何とか特別契約を果たした私と並んで同点1位となった。
手に入る契約カードの運もだいぶ大きいが、自分に有利になるようタイルやチップを配置するのはパズルの要素もあって考えることも多い。加えてほかの人の動向も読んだ駆け引きもあって楽しい。
スピーディーサンデー(Schneller Becher / M.トイブナー / ハバ, 2007)
ゲーム内容はこちら。同じフルーツを見分けるパターン認識能力に加えて、ボールを焦らずに投げ込む器用さも求められるので、得意不得意は出るのは仕方ないが、重いゲームを遊んだ後に気分転換するにはもってこい。
チーズにかけろ(Alles Käse! / S.マトゥッセク / ハバ, 2005)
ゲーム内容はこちら。こちらも隣の人がダイスを降っている間、塔を崩さないよう焦らずに叩いていく手先の器用さが求められるので得意不得意ははっきり分かれる。枠がある程度揃うと、ネズミがするするっと穴の奥に落ちていく感覚が生きているようで素敵。