山形ボードゲームコン 09/01/10

山形ボードゲームコン 09/01/10

年に2回、恒例となった温泉合宿。土曜の午後から集まって、自慢のお手製料理を楽しみ、温泉で温まって、深夜(早朝)までひたすらボードゲームを楽しむ。一戸建ての貸切なのに、費用は食費込みで2500円前後とリーズナブルなのが嬉しい。参加者は県内でも100キロ以上離れた庄内地方、県外では仙台、岩手、福島、東京と広範囲から集まってくださった。ネットで知り合いになって初対面という方から、10年来の知己までがボードゲームを遊び、笑い、おしゃべりに花を咲かせる。楽しからずや。
近年はドイツ・ヨーロッパゲームでも3時間を超えるゲームが増えてきた。長いゲームは通常のゲームサークルではなかなか出せず、遊ぶには自分から機会を作らないといけない。その点、合宿はのんびりと時間を気にせず遊べるのでよい。

イリウムユートピア国富論アフターザフラッドリンク

イリウム(Ilium / R.クニツィア / プレイルーム, 2008)

イリウム陣取りの妙を存分に

ゲーム内容はこちら。「最終的に埋まらないルートもある」と先に伝えていたことから、手下をばらけさせず、積極的に石を置いてコマを取りに行く展開になった。セットを作りつつ、1~2種類はトップ賞を狙うというのが定石で、トップ賞を巡っては局所的に熱い取り合いが起こる。そのあたりの駆け引きも熱い。
手下の置き方にはちょっとしたコツがある。例えば3マスのところに1コマだけ置くと、残り2マスを2コマ+石で埋められて何も取れないことがある(2位より2倍以上置くと独占できるルール)。また先に3コマ置いてしまうと、ほかの人が参入したがらないので自分で全部埋めないといけなくなってしまう。適度ににらみを利かせつつ、ほかの人も入れるようなスキを作るところがポイントだろう。
もちろん、ミスを避けるだけでなく一手に賭ける場面もある。1マスを残す場合、そこに2コマ置かれたら負けるという状況でもあえて残してみる。相手が1コマしか置けないカードだったら、しめたものだ。
90年代には全盛期だった多数決陣取りゲームは、今は流行ではないけれども、まだまだ新しい可能性があるようだ。デザイナーとしては新しいことに手を出したい気持ちもあるだろうが、このような安心して遊べる作品も作り続けてほしい。

ユートピア(Utopia / A.ウルボン、L.ヴィアラ / マタゴー, 2007)

ユートピア世界の建築物が一堂に

マタゴー社は、イスタリ社と並んで注目すべきフランスのボードゲームメーカーである。システムを楽しむイスタリ社の作品よりも独創性があり、またイラストやコンポーネントにも力が入っていて美しい。これまでに『クロノス』『ユートピア』『ネフェルティティ』『ジャイアント』と4タイトルをリリースしているが、いずれにも面白い仕掛けがなされている。
『ユートピア』は、古代文明を築いたインカ、ペルシャ、エジプト、中国、ギリシャ人を新しい国に招き、建物を建築させるゲームである。建築場所は限られており、また早く建築すれば得点がたくさんもらえるから、ほかのプレイヤーより先に人を集めよう。
まず袋からチップを引いて、ユートピアに各文明人が到着する。これを1枚ずつ取り、自分の客人としてボード上に配置する。次に、カードを出して客人を移動し、同じ区画や島に集める。同じ区画に同じ文明人を3人集めたらモニュメントができ、同じ島に全種類の文明人を集めたらワンダー(伝説の建物)が建つ。
モニュメントは毎ラウンド得点が入り、ワンダーはその島にモニュメントが建つたびに得点が入る。いずれも先に建てるほど得点チャンスが増える。ただし、モニュメントの価値はカードプレイによって変動するので安心できない。だから建てるだけでなく、自分のモニュメントの価値を上げ、ほかのプレイヤーの価値を下げるようカードを出すのも重要だ。
各種の建物を満遍なく建てたぽちょさんが圧倒的な勝利。私はワンダーを作った島に人が集まらず、ご利用していただけなかった。得点状況を見ながら、モニュメントの価値を変えたり、建てる島を選んだりするのが面白い。
立体のモニュメントやワンダーは細部まで作りこまれており、コンポーネントの美しさは特筆すべきものがある。

国富論(Wealth of Nations / N.キャロル / テーブルスターゲームズ, 2008)

国富論「見えざる手」(スミス)に導かれて

農作物、電力、人材、鉄鉱石、資本、現金の6種類からお互い足りないものを融通しあい、豊かな国を作るゲーム。回数制限もなく、物々交換も売買もセット販売もできる自由な交渉のため、2~3時間ほどかかるゲームだが、プレイヤーの選択に任されたバランスが多様な展開を生み、毎回ゲームメーキングが楽しい。マイナーなメーカーのゲームがどうやって日本に紹介されたのか知らないが、現在はホビージャパンやアークライトが取り扱っている。最近このゲームばかり遊んでいるという人もいるという。
初期配置はタイルとキューブとお金の組み合わせから2つ選ぶ。ここからすでに農業国や工業国の進路が分かれるが、農業だけ、工業だけでは到底やっていけない。新しくタイルを広げるには人材と資源が必要だし、そのタイルを稼動させるには電力や食料が必要だ。そこで交渉が始まる。
交渉は自由だが、品物には参考価格がある。国際相場があって、プレイヤーからではなく市場から売買すると価格が変動する。この価格を参考にして、お互い損をしないようにプレイヤー間の取引をするわけだ。物々交換の場合も、現在の相場で計算して、差額が出れば現金をつける。
はじめはどこから手をつけてよいか見当がつかないので大いに迷う。だが次第に方針が固まっていくにつれて、ほしいものがはっきりしてくるので、交渉もどんどんスムーズになっていくだろう。ただしスムーズになるとセット販売や割引などの複雑な取引もできるようになるので、テンポが早くなるわけではない。必要な品物をいくつ確保し、不足している品物をどこから調達するかよく考えよう。
交渉が終わったら、集めた資源を使ってボード上に六角形のタイルを並べ、自分の国を広げる。タイルが並んだときにできるドットの数だけキューブを生産できるので、同じタイルを並べたほうがよい。だがモノカルチャー経済は国際相場が下がったとき苦しくなる。国内需要(自分が何を建設したいか)と国際需要(ほかのプレイヤーが何をほしがっているか)にあわせたタイル選択を心がけたい。
建設が終わったら生産。ここでは電力が食料が必要になる。食料はタイルが増えれば増えるほど多く必要になるが、資源を払って自動化すれば、鉄鉱石1つで生産でき、食料が要らなくなる。自動化のコストは安くないので、タイミングも重要なポイントだ。
ゲームは交渉・建設・生産を繰り返し、タイルや旗がなくなったら終了。最後に残った品物を相場で換金し、タイルと現金が得点になる。
序盤に銀行を作ったstさんは金持ちプレイ。金に物を言わせて市場から資源を調達する。大農業国から始めたcarlさんも、食料の需要が落ち込むと見るやすぐに銀行を作って現金を調達した。私は電力を独占的に作っていたおかげで借金もせず楽に進められたが、それにあぐらをかいている間にほかの事業に乗り遅れ失速。優勝は、序盤から人材と資本をバランスよく増やし、交渉のチャンネルを多くした光の翼さん。品物が1つでも足りないと計画が台無しになるので神経を使うことと、最後の得点計算が電卓を使わないといけないくらい容易でないのが玉に瑕だが、交渉の楽しさを再確認させられるよいゲームだった。

アフターザフラッド(After the Flood / M.ワレス / ツリーフロッグ)

アフターザフラッドダイスの陰にも周到な準備

ゲーム内容はこちら。今回はどのラウンドも早々に軍隊が登場し、要所を巡って戦争が頻繁に起こる展開。軍隊+2の特殊能力に加え、装備に資源を惜しまなかったぽちょさんが敵軍をばったばったとなぎ倒し、4ラウンドで圧倒的なトップ。軍隊だけでなく、写本師を使って効率的に労働者を配置したのも差を広げるもとになった。後を追いかける私と光の翼は共闘したが全く歯が立たず。
戦争はダイスで解決するが、装備が強いほうから弱いほうに仕掛ければ2つのダイスで5以上、弱いほうから強いほうならば7以上という判定になっている。また、お互いの軍隊は最高2体ずつの勝負であり、数に物を言わせるわけにもいかない。番狂わせはあまりなく、着実な準備が勝敗を分けるというわけだ。私は戦争をダイスで解決するゲームをあまり好まないが、このゲームは気に入っている。3人限定なのと、時間が3時間はかかるので遊ぶ機会は少ないかもしれないが。

リンク(Linq / E.ニールセン / ビーウィッチト・シュピーレ, 2007)

独りよがりではダメ

ゲーム内容はこちら。つくづく「察する文化」に生きる日本人の性にあったゲームだと思う。パートナーのことをよく知っていればいるほどよいヒントが出せる。この人になら通じるというマニアックなヒントで通じ合えたらいいな……などと思っていると全く通じていなかったり、そのくせほかの人にはしっかりばれていたり、楽しいものだ。
「銭」に対してヒント「ガタ」はえるさんに全く通じず、「布」に対して「袋」というヒントを出してきたかゆかゆさんに「大黒」と返したら怪しまれ、最下位で終了。実に風流なゲームである。

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