秋葉原水曜日の会 08/09/24

秋葉原水曜日の会 08/09/24

ゲーム愛好者にとって毎年楽しみなのはエッセン国際ゲーム祭に合わせて各メーカーが発表する新作。ゲームを普段あまり遊ばない人向けが大部分を占めるニュルンベルク国際玩具見本市の新作と比べて、より刺激的なゲームが出てくる。
ほとんどはエッセン国際ゲーム祭が初のお目見えだが、中には先行発売しているゲームもある。今日の水曜日の会は、そんなゲームを真っ先に遊ぶことができた。

ジュピターのもとにビザンチンギャラクシートラッカーカルカソンヌ・メイフラワー号

ジュピターのもとに(Beim Jupiter / M.フェルトケッター / コスモス, 2008)

ジュピターのもとに絶妙な予想システム

またトリックテイクである。よくアイデアが尽きないものだと思っていたが、このゲームはそんな凡庸な感想を許さない絶妙な出来栄えだった。表題の「神々のトリックテイキング」が大げさでない。
カードを1枚一斉に出して、切り札の投票。切り札が決まったら、何枚トリックを取れそうか予想する。そして通常のトリックテイク。予想が当たれば得点。基本はこれだけで、世界大会も開かれている『ウィザード』を思い出させるが、遊んでいるうちに数々の絶妙さに気がつく。
獲得トリックの予想は、投票に使ったカードを用いる。5トリック取れそうなら「V」のわきへ、0トリックなら自分の前へ。面白いのは、ほかの人の予想でも、当てればカードがもらえること。たとえば自分の予想は5トリックだったが、ほかの人がもっと得点の高いカードを「III」のところに置いたら路線を変更して3トリックを狙ってもよい。
この横取りを防ぐために、カードを置くときに予約ができる。自分の予想通りにトリックを取れば優先的にカードを選べるが、予想が外れたら後回しになってしまうというリスキーなもの。後回しになるとカードをもらえないこともある。不退転の決意で予約するか、ほかの人の予想を狙っていくかの駆け引きは、トリックテイクが始まる前から熱い。
さて投票と予想に出したカードは、獲得すれば得点になり、誰も獲得しなければ場に残るが、トリックテイクにはもう二度と出てこない。切り札になるようなカードは場全体に枚数が少なく、切り札を使えるチャンスが限られてくるというわけだ。絶妙!
それから予想で1枚ずつ使っていくので、毎ラウンド手札が1枚ずつ減ることになる。予想では役札を出せないので、相対的に役札の比率が高まっていく。そのためラウンドが進むにつれて予想はしやすくなり、また予想がかぶりやすくなるので、足の引っ張り合い、もとい1トリックを巡る駆け引きがどんどんエキサイティングになっていくわけだ。もう1トリックも取れない人と、1トリック取らないといけない人の間を、取っても取らなくてももいい人がコントロールする。終盤も引き締まるし、ほんとうに絶妙だ。
最初はみんな手探りで誰も取れないような高い予想をするが、自分も取れず路線転換。すると同じような予想が並び、予約が生きてくる。予約が有効であることが分かると、わざと取らせたり取らせなかったりして予約をはずす攻撃が生まれ、それに対抗して0トリック予想が流行ったりする。そんな中、予想は常に保険をかけて着実に得点を重ねた私が1点差で勝利。
ゲーム中に絶妙といい過ぎてみんなに笑われた。トリックテイクを熟知した大好き人間が作ったゲームにちがいない。

ビザンチン(Byzanz / E.オルネッラ / アミーゴ, 2008)

ビザンチン伸るか反るかの競り

作者のオルネッラといえば、イタリアのマインド・ザ・ムーヴ社でこのところ注目策を発表し続けているデザイナーだ。『オルトレマーレ』『君主論』はすぐドイツ語版が発売され、『ヘルマゴール』は英語版が出た。
 このカードゲームはそれほど重くないが、ウィットに富んだ競りが楽しめる。競りでカードを集めて、同じ種類が揃ったら得点になるというもの。全員1ラウンドに1回ずつ競り落とせるが、5人ならはじめの人は5枚、次の人は4枚……と後になるほどカードが減っていく。しかも競りに使うカードは手に入るカードと同種であるため、突っ込みすぎるとカードが集まらない。
 最後の人はたった1枚しかもらえないが、がっかりしてはいけない。今度は支払いに使ったカードを、後で競り落とした順にもらえるのだ。もちろんこれを狙って、あえて競りを降り続けるという手もある。競られるカードはランダムに山札から出てくるが、支払いに使ったカードは種類別に並べられ、揃った形で手に入る。
 だが、全員がパスするとスタートプレイヤーが無料でカードを獲得してしまうというルールもあり、むやみに降りるのが得策とは限らない。ほしいカードかそうでないかの見極めがが大事だ。場の状況がある程度分かる3番手前後で競り落とすという手もある。
 ジョーカーだが、揃えば高得点という商人カードを集めにいったら、コストがかかりすぎて得点が伸びなかった。1位は商人カードを効果的にジョーカーとして使ったkarokuさん。オルネッラらしいかといえばシンプル過ぎるかなと思うが、時間も短く終わった後にもう1回と言いたくなるゲームだ。

ギャラクシートラッカー(Galaxy Trucker / V.フヴァティル / チェコゲームズ, 2007)

ゲーム内容はこちら。カードを見て今回は「オープンスペース」が多かったので、必死にエンジンジェットを集めた。ところがこれが罠で、エンジンジェットを先に並べてしまうと、つなぐのにえらく苦労する。その間にカードを見ないで組み立てたストーンRさんらが宇宙船を完成させてしまう。慌てて残った部分に適当なパーツを置いてつじつまを合わせた。このあたりの時間的な駆け引きも(時間をかけて完璧な宇宙船を目指すか、スピード勝負でほかの人の宇宙船をお粗末にするか)、慣れれば慣れるほど面白いだろう。
 ルールは長大だが、パーツの説明とつなぎ方だけ説明して、練習ラウンドをやってもらうのがよい。そして航海に出て、アクシデントの種類を身をもって体験すると、もうゲームに習熟する。プレイ時間はとても短いゲームなので、インストも短めがよいだろう。

カルカソンヌ・メイフラワー号(Carcassonne:Mayflower / K.-J.ヴレーデ / ハンス・イム・グリュック, 2008)

カルカソンヌ・メイフラワー迫り来るフロントライン

アメリカ大陸の入植をカルカソンヌのシステムで描いた作品。カルカソンヌ人気、衰えないなぁ。東海岸のボードにつなげる形でゲームが進む。
 ルールはほとんど同じだが、1点だけ違うのがフロントラインの存在。ボードの両端に探検家がおり、得点計算が発生するたびに1歩ずつ西へ進んでいく。この2人を結ぶ線がフロントラインで、その後方(東側)で得点計算が終わっていないコマは、平原を除いて強制的に除去されてしまうのだ。高得点を目指して欲張った街、合うタイルがなかなか来ない農場(修道院)、変な方向に曲がってしまった道、それらがあっという間に無価値になる。フロントラインが近づいてくると、まるで尻を後ろから叩かれているようで焦る。
 フロントラインは先にタイルがないと進めないが、この列で得点計算を起こすとボーナスがあるため、みんな積極的にタイルを置いていく。そうするとどんどん進む探険家。自分がフロントライン近くにいなければほかの人の高得点チャンスの芽を摘むことだってできる。
後ろから追われているため、道と農場などの協力も盛んに行われた。独力で頑張っていては間に合わない恐れがあるからである。その協力に乗っかり、2タイルの街(これも早い)を盛んに作ってコツコツ貯めた方と同点1位。
ちょっとしたルールでゲームががらりと変わるのをよいバリアントの条件だとするならば、このゲームはほんとうによいバリアントである。カルカソンヌがもともと好きでない人、あるいは飽きてしまった人に遊んでもらいたい。

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