ふうかさんとkarokuさん、そして米出さんをお迎えしての自宅ゲーム会。
我が家では棚は2つまでに制限されており、そこからはみ出したゲームは手放さなければならないというルールがある。棚は(マイ傑作で)とうに目いっぱいなのに、気になるゲームをどんどん買うものだから、たいへん困った事態になる。パズルのようにして何とか収めようとするが、どうしてもはみ出してしまう(特に大箱のボードゲームなど)。
中にははみ出している未プレイ品まである。折角買ったのに未プレイのまま放出するのは悲しい。というわけで今日はそんなゲームたちを遊んでもらった。その結果、棚の「レギュラーメンバー」と入れ替えられるものもあり、泣く泣く放出決定のものもあり。その判断にはいつも自信がもてない。
でも時々考えるのだが、ゲームにもし命があるとしたら、棚に死蔵されているよりも新しい持ち主のもとでまた遊んでもらえるほうがずっと幸せではないか。ゲームを手放す苦しさを、そんな考えで紛らわせている。
戦時|キャプテン・シャーキー|ギフトトラップ|将軍|ジャマイカ
戦時(Senji / B.カタラ、 / アスモデ出版, 2008)
どこか異国の戦国時代
日本みたいな感じのするとある国を舞台に、名誉を求めて戦を繰り広げるフランスのボードゲーム。異国情緒たっぷりのコンポーネントとは裏腹に、シビアな戦いが待っている。
1ラウンドは冬から始まる。はじめに配られるカードデッキは自分では使うことができない。まず交渉してほかの人のカードを入手するのだ。交渉は不戦協定、援軍協定、経済協力の3本柱で、どんな約束をしてもいいのだが基本的にはカードを交換する。
不戦協定なら人質を渡して「もし私が裏切ったらコイツは煮るなり焼くなり好きにして下さい」という。援軍協定は援軍カードを渡して「ピンチになったら駆けつけますよ」という。経済協力は船カードを渡して「あとから花札をあげますよ」という。交渉は砂時計で4分と時間が区切られており、スピーディな対応が求められる。中立プレイヤーのカードは、入札で競り落とす。
冬が終われば春。自分が占領しているエリアにアクションチップを裏返しにおいて、行動をプロットする。アクションは増軍か花札か移動のいずれか。敵軍と隣接しているところは増軍し、十分に増軍できれば移動で攻め込み、平和そうなところでは花札集めにいそしむべし。
プロットが終わると夏になって、順番にアクションチップをめくって実際に行動していく。移動で敵軍のエリアに入っていけば戦争。軍隊チップとダイス目と援軍の合計で競う。ダイスは数字ではなくそれぞれの家紋が入っていて、自分の家紋が出ればポイントになるから、1回ふっただけで結果が分かるというスグレモノ。隣接していなくても、海を渡って攻め込むこともできる。でもその際は溺死判定(笑)をするので返り討ちにあうかもしれない。敵に勝つと、両軍で戦死した軍隊の数だけ得点が入る。
そして秋。実りの秋には順番にカードを出して得点を入れる。花札カードは役を作ることができれば得点や新しいサムライのリクルートができる。この花札カードも特筆もので、猪とか太陽とかリボンとか、何となく日本の花札を想像させるのだが絵がリアル。うーむ。
こうしてまた冬に戻り、誰かが60点を超えるまで続けるという流れだ。
夏や秋の順番は誰が決めるかというと、冬の時点で勝利点がトップのプレーヤーがミカドとなって行う。ミカドは自分の都合のいいように順番を決められるのでかなり強力だ。というわけでこのゲーム、トッププレイヤーを徹底的にみんなで叩くという展開が期待されている。
さてボード上には軍隊チップのほかにサムライコマがいる。アルファベット順に名前があり、それぞれ別の特殊能力をもっている。今回登場したのはふうかさんのF=フルタ、米出さんのO=オダ、私のW=ワキザカ、ここまではまだいいがkarokuさんはE=エケス。ほかにD=ダイスケやU=ウメコなどもいる。いったいどこの国なんだろう。
序盤はみんな花札集めに走る展開で、ミカドで左団扇の私。そのうち戦力増強がマックスに達すると、あちこちで戦が勃発した。まずはひたすら花札を集めている米出さんが集中的に叩かれて故郷のカガに引きこもる。私は2人目のサムライを手に入れてラストスパート体制を整えたところで、karokuさんがエドからムツに海を越えて攻め込み、溺死判定も被害1人のみ。すっかり油断していた私はムツを落とされるとガラガラと政権崩壊し、なす術もないままkarokuさんに勝利を明け渡した。90分。
花札のイラストやサムライの名前、溺死判定なんかに笑ってしまうゲームだが、システムを冷静に見ると結構よく考えられている。トップを執拗に叩くだけでなく、花札をためこめば狙われ、戦争がイヤなら人質をもらうという交渉術もある。フランス人だったら、戦国時代でもこんな風に明るく楽しく生きていくんだろうなと思った。
キャプテンシャーキー(Capt’n Sharky / K.ハファーカンプ / コッペンラート, 2007)
折角のお宝が海にボチャン
海賊が宝島にやってきました。地図を見ながらすばやい判断で宝を探します。でもいっぱい宝を取ったからといって全部持ち帰れるとは限りません。船は浅瀬のため島に寄りつけず、沖に停泊しています。ここに何と、投石器を使って宝を投げ込むのです。失敗すれば海にボチャン。もったいな~い。
今年のドイツ年間キッズゲーム大賞にノミネートされた5タイトルのひとつ。作者は今やH.マイスターをしのぐキッズゲーム作家となりつつあるK.ハファーカンプ氏。絵本をヒントにして作り出されるゲームは、その世界に吸い込まれるようだ。
チップを表にすると、動物や小物が書かれてある。これと同じ絵柄をボード上から探し、最初に指をさせた人が6マス進める。ほかの人は1マス。進んだ先に宝箱のマークがあると、専用の宝箱をその上にかざすことができる。これがたいへんビックリなギミック。ボードには磁石が埋め込まれていて、宝箱の中のボールがこれに反応して宝2つ、宝1つ、ドクロ(ハズレ)のいずれかを指すのだが、どうして3つ表示できるのか分からない。N極とS極しかないはずなのに……不思議。
宝が出たら空箱チップを置いて後は取れなくなるが、ドクロが出ると何も置かない。どこがハズレだったか覚えておかないといけないというわけだ。
karokuさんが圧倒的な眼力でどんどん宝をためこむ。私もそれにつられて必死に探した。今日一番本気になった場面である。
さて宝を取り終わると、投石器が待っている。船を広げて岸辺に置き、島の中央に投石器を置いて宝石をセット。指ではじいて船に入ったものだけがゲットできる。練習は1回だけ。
まずはトップのkarokuさんから。宝石の置く位置や指先の調整によって全然飛ばなかったり、逆に飛びすぎたりとなかなか難しい。結局3つだけで私の番。前の人のを見ていると、調整の仕方がずいぶん分かるものだ。でも緊張のあまり手が滑ったりしてまた3つ。続いて米出さん。船のマストにうまく当てるという方法を見出して4個しか取れなかったのに3つも入れて並ぶ。そしてたった3つだけのふうかさんがラスト。最後の1個を惜しくも外して2個。
パターン認識能力、記憶力、指先の器用さというキッズゲームの3大要素に磁石とバネというギミックの王様を加え、しかもそれらがばらばらでなく連関している。見事というほかない。
ギフトトラップ(GiftTRAP / N.ケレット / ギフトトラップ, 2006)
贈られて迷惑だったり
本当に人に喜ばれるプレゼントというのは実に難しい。ありきたりではダメ、突拍子がなくてもダメ。その人の好みを汲みつつ、ちょっとしたサプライズを仕掛ける。でもそれが思いっきり空振りだった日には……。
そんなプレゼントの悩みをテーマにしたアメリカのパーティゲーム。場に並んだ9枚のカードから、どれをプレゼントしたいか、されたいか考えよう。
最初はプレゼントしたいものを1つ、番号カードでひそかに選んでおく。あげる人はプレイヤーの中の誰か。これならもらって喜んでくれる人がいるだろうというものを。
次にプレゼントされたいもの上位3つと、絶対いやなもの1つを選んでチップを置く。全員が置いたら、番号カードの公開。自分が選んだ番号のところに、誰かがチップを置いてくれたら公開する。喜んでもらったなら共にプラス、いやがられたら共にマイナス。たくさんの人が喜んでくれたら、高得点になる。
得点はプレゼントするほうとされるほうを別々に記録し、両方で規定点に達しなければならない。プレゼント上手にもらい上手。もらうほうだってただほしいものを考えるだけでなく、誰かがプレゼントしてくれそうなものを選んだほうがよい。でも「これなら喜んでもらえそう」「これならプレゼントしてくれそう」という思いは、絶えずすれ違うものである。深い。
私はプレゼントするほうは上手だが、もらうほうが下手。みんなが心をこめてプレゼントしてくれたものが絶対いやなものだったり、ほしいものは誰もプレゼントしてくれなかったりする。プレゼントするほうの得点が規定点になったとき、されるほうは0点。そんな中で細やかな(?)気配りで得点を稼いだkarokuさんが優勝。
「僕の思いをグランドピアノで!」「そんなもらっても置くとこないし」
将軍(Shogun / D.ヘン / クイーンゲームズ, 2006)
農民侮りがたし
日本の戦国時代を舞台に、2年以内に最強の国を作るボードゲーム。もとはドイツを舞台にした『ヴァレンシュタイン』というゲームで、舞台を日本に移してリメイクされた。その際、メビウスが手がけた日本語ルールがデフォルトで同梱されるという嬉しいこともあった。このごろはどこのショップもカラー図解入りのルールを添付するが、オリジナルのレイアウトでフルカラーというのはとても読みやすい。
ゲームは春から始まる。ランダムにカードを並べてラウンドのアクション順序を決め、手番順の特殊能力を決めてから、アクションをプロット。自分が所有しているそれぞれの国でどのアクションをするのか、国カードを伏せて置いていく。アクションは国を養うのに必要な年貢の取り立て、建築や徴兵に必要なお金の取り立て、徴兵、お城・神社・能舞台の建築、隣国への攻撃、手番順の競りがある。
プロットが終わったらこのラウンドの特殊ルール(攻撃・徴兵・年貢の制限など)が公開になり、アクション順・手番順にしたがって実際に行動する。攻撃がこのゲーム一番の見どころで、お互いの兵隊コマをタワーに入れると、下から結果が出てくる。入れるコマと出てくるコマが違うわけは写真の通り。中が複雑な網目になっていて、途中で引っかかっているのである。すんなり穴を通過するものもあれば、途中で引っかかるものもあれば、ぶつかった弾みで出てくるものもある。
兵隊のいないエリアや、年貢などの取立てをしたエリアでは農民コマが出現する。農民はいかなる場合も防御側にまわり、タワーの中に溜まっていたのが一度に出てくると、ちょっとの兵隊では手をこまねくことも少なくない。農民恐るべしである。
一通りアクションが終わったら夏、そして秋へ。夏も秋も、アクションと手番の順序を決め、プロットして実行というのを繰り返す。冬はアクションを行わずに得点計算。得点は、自分のエリアが1つ1点、エリアにある建物が1つ1点、あとは地方ごとに城・神社・能舞台が一番多い人にボーナスが入る。
ここで食料供給をしなければならない。1エリアにつき米1つと、残った特殊ルールカードに指示された米が足りないと一揆が起こる。一揆は自国のどこかのエリアでランダムに起こり、そこにいる兵隊と農民をタワーに投入。農民に負けるとエリアを失ってしまう。
そしてまた春から2年目を行い、冬で終了。アクションがあるのはたった6ラウンド、得点計算は2回しかない。しかし2時間はゆうに超える。それは考えることが非常に多いからだ。
まずアクションの順番。お金はいつも不足気味だから、収入が入ってから徴兵や建築ができるのと、徴兵や建築をしてから収入が入るのとでは大違い。攻撃が徴兵の前だったらすかさず兵隊の少ないところを攻めるし、後だったら攻撃されそうなところを補強する。なおアクションははじめの5つだけが順番が分かっていて、残りは開けてみてのお楽しみとなる。
そして手番も重要だ。攻撃では先手を打ったほうが確実に取れる場合もあれば、後手になって前の先頭で弱った相手を叩くという場合もある。これにラウンドの特殊カード、手番の特殊アクションが加わって、たくさんの要素を見ながら最善手を考えるのは時間がかかる。「このエリアからあっちに攻めるには、敵が先に来る可能性があるから、まずこちらで徴兵しておいて……、いや、別のところで攻めたほうがいいか、敵がここを攻めてくるなら、防御のための徴兵も必要だな……」(もちろん心の声)
私は上杉謙信で中国地方と房総方面から始まる。中国地方の独占は容易に思われたが、農民の思わぬ抵抗にてこずったり、ふうかさんが精鋭部隊を送り込んで奪取されたりして進まない。それならばと代わって激戦区の近畿に繰り出したが、取った分取り返されて進展なし。ふうかさんの江戸城を尻目に、房総から日立にかけて海辺のほうに広げたが、四国を手中に収めたkarokuさんが天下を取った。プロットで考えることの多さと、タワーの戦闘解決の早さが妙にコントラストを帯びていた。
ジャマイカ(Jamaica / B.カタラ、S.ポーションほか / プロルド, 2007)
宝箱に止まるより先に進むべし
島の周りを宝箱を集めながら一周するレースゲーム。フランス人の有名デザイナーが共同で製作し、今年のドイツ年間ゲーム大賞の推薦リストに入ったほか、ドイツゲーム賞では金の羽根・模範ルール賞を受賞している。ルールは本ではなくポスター状で、図解が多くて分かりやすい。コンポーネントも上質で、イラストも見とれてしまうほど美しい。
ゲームはダイスとカードによって、相当運の要素が強いものになっている。スタートプレイヤーがサイコロを2つ振り、「朝」と「晩」に振り分ける。そうしたら3枚の手札から1枚出して順に行動していく。カードには「朝」の行動と「晩」の行動があり、ダイスに対応してアイテムをもらったり、進んだり戻ったりする。
止まったマスでは食料を払わなければならなかったり、最後に得点になるお金を払わなければならなかったり、払えないと戻らされたりするので、安全なマスを狙って進みたい。途中の宝箱があるマスでは、宝箱カードを引けるが、中にはマイナス点になる呪いの宝もあって得とは限らない。
醍醐味はほかの人の船がいるマスに入ったときの戦闘。大砲チップとダイス目の合計で戦い、買ったほうは負けたほうからアイテムを奪ったり、呪いの宝を押し付けたりできる。
ゲームの最後は、1位でゴールした人が勝つとは限らない。進んでいるほど得点が高いが、より多くのお金や宝を持っていれば逆転もあるだろう。今回は、ふうかさんが途中から抜け出してアイテムもためずにゴールに飛び込み、その早さで優勝した。
3枚のカードのからどれを選ぶかという選択以外、考えるところはあまりない。気楽に遊ぶゲームである。