年に2回、山形の温泉にある別館で行われているゲーム合宿。今年で5年、回数は10回となる。今回の参加者はmuraさん、光の翼さん、nagaさん、鴉さん、stさん、ぽちょむきんすたーさん、Mさん夫妻(日帰り)、東北芸工大のゲームサークルから4名と私の13名。東北芸工大のメンバーは10年も前から活動をしていたということで、今までお互い知らなかったのが不思議に思われるほどだったが、新しい出会いでこれから山形でのゲームライフもより一層充実しそうである。
シシミジ|ダンシングドラゴン|モナリザミステリー|パウワウ|オリゴ|大漁市場|ドラゴンパレード|バグダッドの盗賊|イモムシイモムシ|ルールの達人
シシミジ(Sisimizi / A.ランドルフ / egシュピーレ, 1996)
ありさんと、ありさんがごっつんこ
7つのアリ塚を、自分のアリですべて結びつけるゲーム。ランドルフ翁が、2人用アブストラクトゲーム『ツイクスト(Twixt)』にアリというテーマをつけ4人まで遊べるようにリメイクしたもので、96年の年間大賞にノミネートされている。
自分の番におけるのはアリ塚とアリのコマを3つまで。ただしアリ塚は1手番につき1つしか置けない。置いたら、すでに置かれているアリ塚やアリをこれまた3つまで好きな位置に移動できる。アリ塚はボード上の地形1種類に付き1つづつ置いて、それが全部アリのコマでつながったら勝ち。かなりシンプルだ。
しかしゲームを始めてみるとうーむ、深い。ほかのひとのアリのコマと交差できるのは2回だけ。要所は先に抑えておきたいけど、どこが要所なの? 誰も置いてないエリアに先手を打って確保しておいても、そこに至る道が封鎖されては仕方がないし、かといって近場を先に固めすぎてもその先がない。布石からヨセへと、まるで囲碁のようなプレイ感覚。最初はおぼろげだったアリさんのルートが次第にはっきりしてくる終盤は、熾烈な競争になる。
ほかの人との衝突を避け、終始順調に進めていたはずの私だったが、終盤になって手が鈍る。そこをnagaさんが1手差で決めた。完全情報公開型のゲームだが、3人以上となると『ブロックス』がそうであるように先読みがしにくい分だけ気楽に遊べる。あっちを取られた、こっちを取られたと一喜一憂して楽しんだ。
ダンシングドラゴン(Dancing Dragons / T.ワム / マーガレットワイスプロ, 2005)
サインの前に以心伝心
手札のドラゴンを揃えて、相手にサインを送るユニークなカードゲーム。2人1組となり、相手のサインを察知してコールできれば得点。
頭、羽根、胴、尻尾の4枚からなるドラゴンは、ワイルドカードを1枚入れた「ドラゴン」、全色同じの「ロイヤルドラゴン」、ワイルドカードだけからなる「ワイルドドラゴン」の3つがある。それぞれについて、あらかじめパートナーとサインを決めておく。
ゲーム中に手番はなく、場札と自由に交換できる。そのうち揃ったらひそかにサイン。相手が正しいコールをすれば得点が入る。揃った方が自分ではコールできないのが面白いところだ。
自分が揃っていなくても、ほかのチームにサインらしきものを認めたら、「リバースドラゴン」を宣言できる。実際ほかのチームに揃っているドラゴンがあったら、得点横取り。したがってほかのチームにもばればれのサインは危険だ。
鴉さんと決めたサインは、「咳をする」=ドラゴン、「メガネを上げる」=ロイヤルドラゴン、「ポケットに手を入れる」=ワイルドドラゴン。ただし手をグーにしていなければフェイクということにした。ここまではよかったのだが、場札やほかの人の動きに注意が行くあまり、肝心のパートナーがおろそかに。Mさん夫妻が以心伝心を見せてダントツ1位。
ほかの人の表情をちらちら見ながらのゲームは、思わず顔がにやけてしまう。アナログゲームの魅力を十二分に味わえるゲームだ。
モナリザミステリー(Mona Lisa Mysteries / 作者不詳 / ウィニングムーヴズ, 2006)
信頼できない鑑定人
鑑定士を競りで雇って、自分の絵画を高く評価してもらうゲーム。鑑定士は信頼できる人とそうでない人がいるが、誰も気まぐれだ。
鑑定士を場に並べ、手札からお金を一斉公開して多い順に取る。取ったカードは裏を見ずに自分のモナリザボードへスロットイン。裏から見ると、その鑑定士が絵画をいくつで評価してくれたかが宝石数で表示されるようになっている。同じ鑑定士でも、プレイヤーのボードや入れる場所によって別の鑑定結果を出すようになっているところが面白い。気まぐれなのだ。
次に手持ちの宝石を一斉公開して、バッティングしていなかった宝石をボードに置く。これによって、宝石(このゲームでは絵画を評価するギルドを表す)の価値が下がっていくようになっている。自分の絵画を高く評価してくれるギルドは、価値が下がらないように気をつけよう。
こうして誰かの競りカードがなくなったらゲーム終了。その時点での宝石の価値で、自分の絵画を計算して最も多い人の勝ち。
私は序盤、サファイアがたくさんあったので価値が下がらないように宝石を調整していたが、思惑が外れて暴落してしまう。代わって手に入れたルビーがノーマークで、その差で僅差の1位。一斉公開型の競りゲームなので相手の思惑を読みきれないところがあるが、その分テンポよく遊べると思う。デカデカとモナリザが描かれたマイボードや、ガラス製の宝石コマというコンポーネントの豪華さもゲームの雰囲気を盛り上げてくれる。
パウワウ(Pow Wow / A.アルベルタレッリ / ラベンスバーガー, 2006)
優勝まで決めるのがアツイ
ゲーム内容はこちら。誰かが脱落したところでゲームを終える場合が多いが、最後の1人を決めるところまで遊ぶのも面白い。先に脱落した人は答えが分かっているので、残っている人のリアクションを観察しているだけでも笑えてくるのだ。3人くらいからが真骨頂。やけに大きい数字を引いてしまったところを、残りの2人が共同でブラフをかけてはめたりできる。
私は無茶なカマをはったらすべてスルーされていち抜け。決勝はなんとMさん夫妻で、多数のギャラリーが見守る中熱い戦いを繰り広げていた。何ゲームか繰り返すうちに、各人の性格やクセが分かってきて、それを分かった上で決勝を行うのが最高に熱い。
オリゴ(Origo / W.クラマー / パーカー, 2007)
戦争で形勢大逆転
ゲーム内容はこちら。前回は戦争があまり起こらなかったが、今回は早々と陸が埋まり、終盤の戦争の行方が勝敗を左右することになった。あちこちの国に少しずつチップを散らし、2位、3位の得点を重ねて終始リードを守ってきた光の翼さんが、2位と3位がつぶしあったところで逃げ切り。
戦略性が問われるゲームではあるが、行動は10枚の手札によって制限されているので重くはない。いくら置きたいエリアがあっても、そのカードが手札になければできないのである。その代わり、民族の移動や海からの上陸を使って、立国ボーナスを先取りするところに駆け引きがある。立国ボーナスは大きいが、中途半端な陣営で決算を起こせばエリアボーナスで後れを取る。かといってやすやすと立国ボーナスをほかの人にくれてやるわけにもいかず。この辺のさじ加減が悩ましく、また面白いと思った。盤面がヨーロッパというのも没頭しやすくてよい。
大漁市場(If Wishes were Fishes / M.アダムス、P.サーレット / リオグランデ, 2007)
ミミズ!
7種類の魚を釣り、価格が高いときに市場で売ってお金を儲けるゲーム。『グローリア・ムンディ』などと同じくリオグランデのオリジナル作品で、いつもはドイツゲームのアメリカ版を作っている同社が新しいタイプのアメリカゲームを作ろうとしているのが興味深い。
場に並んだ4枚の魚から1枚を釣る。一番左にある魚は浅瀬で、釣りは無料。右にあるほど深くなり、釣るには手持ちのミミズを出さなければならない。このゲームではミミズもお金になるので無駄遣いはしたくないが、それ以上に儲けられる見込みがあるなら奥の魚を狙うのもよいだろう。
釣った魚は自分のボートに入れて後で売ってもいいし、そこに書かれた特殊効果を使ってもよい。特殊効果はボートの魚を売る、仲買人を移動して魚の価値を変える、ミミズでボーナス、追加のボートなどさまざま。このあたりが、アメリカゲーム的だ。
さて魚を売って収入が入るたび、市場には魚コマが置かれる。これが一定数になると決算が起こり、その魚を多く売っていた人にボーナスが入る。魚を釣るときも売るときも、このボーナスが手に入るかどうかも考えて種類を選びたい。ちなみに一定数になった種類の魚を売るとゴミになり、ゴミが定数になるとペナルティーもある。4種類の魚が定数になった時点で終了。このあたりはドイツゲーム的。
収入のパターンが多彩で、特殊効果があちこちで使われるので先は読みにくい。またほかの人に対して干渉しづらいので各自それぞれのベストな選択を積み重ねるゲームのようだ。ミミズのコマがブヨブヨの素材でできていて、しかも何種類もあるという作りこみようが印象的。
ドラゴンパレード(Dragon Parade / R.クニツィア / Zマンゲームズ, 2007)
フェイントも正攻法もありあり
ドラゴンの行き先を予想しながら、カードでドラゴンを動かしあうボードゲーム。ライトで時間の短いゲームだが、往年のクニツィアの切れ味を味わえることができる。
はじめに6枚のカードが配られる。黄色いカードはドラゴンを黄色い門の方向に進め、赤いカードはドラゴンを赤い門の方向に進める。手番には、1枚カードを出してドラゴンを進め、その後自分の露天商コマを好きなところに置く。この露天商コマは、最終的にドラゴンはこの辺に来るだろうという予想だ。
これを3周して、露天商コマを全部置いてから、残った手札の2枚を捨てる。そして最後の1枚でドラゴンを移動。その結果、ドラゴンのいるマスに近い露天商から得点が入る。
一見ただのくじ引きゲームに見えるかもしれないが、ゲーム中にほかの人が置く露天商コマは、その人の手札を推理する手がかりとなっている。黄色のカードが多ければ、黄色側の奥に露天商を置くだろうし、均衡していれば真ん中近くに置くだろう。当然、その裏をかくのもアリである。黄色をたくさんもっているように見せかけて、露天商を1個黄色側の奥に置き、残りの手札で一挙に赤の側に詰め寄るという手も。それに便乗しようとした人に一杯食わせられたら楽しい。さて最後の一枚、みんなの思惑はどこにあったか。
手札の運の要素もあるので、プレイヤー人数だけやって合計を競うことになっている。光の翼さんがぎりぎりで逃げ切って1位。実はこれ、クニツィアの名作『メンバーズオンリー』のエッセンスではないかという話になったが、言い得て妙である。あちらがもう入手難の今、手軽に遊べるクニツィアジレンマをこのゲームで。
バグダッドの盗賊(Der Dieb von Bagdad / T.ギムラー / クイーンゲームズ, 2006)
衛兵が盗賊の親玉
衛兵を使って宮殿に盗賊を送り込み、宝箱を盗み出すゲーム。今年の年間ゲーム大賞ノミネート作品。メーカーのクイーンゲームズはこれと『テーベの東』がノミネートされて今年は最高だっただろう。
手番にはカードを出し、その色の宮殿に盗賊を送り込んだり衛兵を移動したりする。盗賊を送り込むには宮殿に自分の色の衛兵と、ほかの色の衛兵がいなければならない。厳重な宮殿の警戒をくぐって入り込むには密通者となる衛兵が必要だが、ほかの色の衛兵がいないとアリバイが成り立たないということか。
ところがほかの色の衛兵が多すぎると、今度は盗賊が入りにくくなる。盗賊1人を送り込むのに、ほかの色の衛兵1人につき1枚のカードが必要。衛兵がほかに3人もいたら3枚。セコムが入ってるんじゃないか?
そこで衛兵(黒)をうまく移動するのがポイントになる。多すぎては入れないし、いなくても入れない。自分の衛兵はカード1枚、中立の衛兵(黒)はカード2枚で移動できる。このとき、一緒に盗賊を連れていってもよい。
盗賊の配置・移動は1手番につき3回までという制限があるが、衛兵の移動は自由。手番をパスすればジョーカーカードをもらえるので、カードを溜め込んで一気に片をつける手もある。
ただし気をつけなければいけないのは、宝を盗み出すのに必要な盗賊の数は、1つ取られるたびに増えていくこと。最初は盗賊を4人送り込めば宝箱を取れるが、次は5人、6人、7人と増えていく。先を越されるごとに厳しくなっていくから、いつも先手を打てるよう心がけたい。最初に宝箱を4つ集めた人の勝ち。
ゲームは全員が3つ集めてリーチとなる接戦で、終盤は息を呑むような展開だった。最初にリーチをしかけた私だったが、盗賊を1人連れてくるのを忘れたのが響いて宝箱を取れない。そのうち手札も悪くなってしまう。結局ぽちょむきんすたーさんが難攻不落だった赤の宮殿から最後の宝を取って1位。ルールはノミネート5タイトル中最も少ないだろう。なのにここまで火花を散らすことができるとは、ノミネートも納得の内容。
イモムシイモムシ(Würmeln / A.ランドルフ / ブラッツ, 1994)
コンポーネントの勝利
ゲーム内容はこちら。アナログ感いっぱいのゲームである。
夜も遅かったせいか、みんなが7をビッドして踏ん張る展開。その中で3とか4でちびちび進んでいた私がどんどん進む。すっかり出遅れたぽちょむきんすたーさんがゴールを逃がして対抗しようにも、今度はXの目がかぶりまくった。そんな中、余計な誘惑にも負けずちょっとずつ進み続け1位。ゴールのピボットターンで勝敗が決まってしまう笑える結末は今回なかったが、それでも初プレイの人には十分楽しんでもらえたようだ。
ルールの達人(Master of Rules / 川崎晋 / カワサキファクトリー, 2007)
ゲーム内容はこちら。ゲーム紹介は、プレイヤーがてんでばらばらに遊んでいるような印象を受けるが、その実1枚たりともほかの人を見ずに出せない頭を使うゲームだ。今年のエッセンで発表が予定されているが、ドイツ人にかなり喜ばれるのではないか。
となりのぽちょむきんすたーさんからサポートをたくさん受けてルールを達成し放題。1位獲得。