花粉の悲惨も少なくなって外出しやすくなり、ゲームマーケット直前でボードゲーム熱が高まりつつある4月、秋葉原に向かう。よく会う方とはだんだん打ち解けて遠慮なく楽しめるようになってきた一方、内輪に走ってしまわないようにも工夫している。今回感心したのは、ゲーム売り場に来ている人を誘ってみるという方法。もちろん初対面なので丁重にお誘いし、まずライトなゲームから遊んでみる。秋葉原のイエローサブマリンに足を運んだ時点でそれなりの素質はあると思うが、今回そうやってお誘いした方々も十分楽しんで下さったようだ。
その中の1人、しげしげとボードゲームをチェックしているイケメンをお誘いしてみるとイギリス人で、早速『パウワウ』を英語で遊ぶ。「フィフティー!」「フィフティーン?」「ノー、フィフティー!」ルール説明さえクリアすれば、もう国境など関係なく楽しいのがボードゲームのよさだ。都内では、定期的に『プエルトリコ』なんかを遊んでいる外国人グループがいるそうで、こういう人の輪が広がっていくのもまた楽しい。だからボードゲームはやめられない。
クリベッジ|ヴァルハラ|栄光の騎士|レースギャロッポ|パウワウ
クリベッジ(Cribbage / 伝統ゲーム)
読みとクジ運と
カードを交互に出して役を作るトランプゲーム。2~3人用だが今回は2人でプレイ。ボードは得点記録用だけのものだが、クリベッジには欠かせないアイテムと言えよう。
6枚配られたカードから4枚を手札にしてスタート。交互にカードを出して、合計が15と31になったときや、同じ数字や連続する数字が出せたときなどに得点が入る。少ない手札の中で、相手にうまく合わせて出せると嬉しい。
カードを全部出し終えると、今度は出した手札と山札のカードを組み合わせて、また合計15やペアなどができないか調べる。うまくできればまた得点。ここで役ができるように手札を調整しておきたい。
さらにもう1つ、最初に捨てたカードを組み合わせて役ができればその得点を親がもらう。相手が捨てたカードと一緒にするので、何ができるかは開けてみてのお楽しみ。
同じカードでも組み合わせを変えれば複数の役ができるので慣れるのに少し手間取るが、「おお、これでも役ができる、これも、それも」とウハウハできるのが楽しい。「何はなくともとりあえずクリベッジ」というファンがいるのも頷ける気がした。Shun.さんのレクチャーを受けながらのプレイだったが、手札の選択が場札にドンピシャリで大量得点でき、勝たせていただいた。爽快。
ヴァルハラ(Walhalla / A.ズッキーニ / アミーゴ, 2006)
ヴァイキングがゆく
フィヨルドになった島にバイキング船で乗り込んでいく陣取りゲーム。昨年のエッセンでは数多くの話題作に埋もれてしまった感があるが、使い古されたはずの陣取りシステムに新風を吹き込む素晴らしいゲームだ。
やけに長~い半島が3つ。タイルを組み合わせるのでゲームごとに異なる地形になる。手番には船タイルを引いて、ここにバイキングを乗せ、島と島の間に奥まで入り込む。船が着いたらバイキング上陸! なかなかいい雰囲気だ。
船には自分の色のバイキングを乗せるが、一箇所だけ色がついている席はその色の指定席。ここに乗るバイキングによって、船の向き、船を置く場所をよくよく考えなければならない。相乗りした人も船がどこに行くかワクワクしていられるので、待ち時間が苦にならない。
こうして半島に上陸していくバイキングによって得点が入り、その合計点を競うわけだが、得点の入り方は実にさまざまだ。上陸するだけですぐ得点できる森から、ラウンド終了時まで待たなければならない村、さらにさまざまな用途に使えるカードが引ける地形など多彩で、どれが得かは一概に言えない。ラウンドの終了時には3つの半島ごとに最も多くバイキングがいる人にボーナスが入るので、敵のバイキングの動向も見る必要がある。
さらにゲームを立体的にしているのが、ゲームタイトルにもなっているヴァルハラ宮殿(ボード奥)。ここは勇敢なバイキングが死後に赴くとされている天国だ。すでにバイキングがいるところに上陸すると戦いが起こり、負けた方は宮殿に召される。ナンマンダブ。でも、天国にいるバイキングは守り神、ここのバイキングの数によって、ラウンドの最後に補充できるバイキングの数が増えたり、ゲーム終了時には得点が入ったりもする。だから戦いは負けるが勝ちなんてことも。
大局観はさほど要求されないが、その都度その都度、的確な判断を求められるなかなか悩ましいゲームである。今回は手っ取り早く森に上陸して序盤にリードするも、カードを溜め込んでバイキングをうまく補充したしむしゅさんが追い抜いて1位。半島から追い出されてもヴァルハラ宮殿に入るメリットがあるので、すさまず僅差になっていくシステムに感心した。やや細かいルールがあるが、それはこのシステムを生かすための装置だと思う。
栄光の騎士(Ruhmreiche Ritter / R.フラガ / ハバ, 2002)
覚えたつもりでも……アレ?
ルートを覚えて目隠しで進む子ども向けの記憶ゲーム。私がデザイナー買いしているフランス人デザイナー、フラガの作品で、キレのあるアイデアが光っている。
手番にはタイルを交換したり回したりして通路を整え、サイコロを振って目隠し。左どなりの人に指示を出して自分のコマを進めてもらう。「前、右、前、左……」サイコロの目の分だけ進めるが、途中で壁にぶつかってしまったら終了。
こうして反対側のコーナーにいち早くつけば勝ち。
バリアントとして、途中に幽霊が立ちはだかり、これを操作してほかの騎士を飛ばしてしまうというルールと、壁にあるタペストリーの場所を指示できれば開けゴマを言って通り抜けられるルールも入れた。でもやってみるとさすが大人。3~4歩くらいではまず間違わない。幽霊でも止めきれずあっという間に終わってしまった。全部のコーナーを通らなければいけないとか、もうちょっと難易度を高めたほうがよさそうだ。目隠しをすると覚えているつもりでも意外にあやふやになるもので、子どもなら十分楽しめるだろう。
パウワウ(Pow Wow / S.アルベルタレッリ / ラベンスバーガー, 2006)
パーティゲームの新定番
皆が頭につけた羽根の合計を当てるパーティーゲーム。イタリアのキダルトゲーム社から発売された『コヨーテ』を、ドイツのラベンスバーガー社がリメイクした。
8人まで遊べるようになり、羽根がインディアンらしくなり、バンドのマジックもきちんと縫製されている上に、ゲーム時間を延長して楽しめるバリアントルールまで付いているスグレモノ。『コヨーテ』を持っている人でも買い直す価値があると思う。
ルールはいたって簡単。各自1枚ずつ羽根を取り、自分の分は見ないで鉢巻に指す。ほかのみんなの羽根を見て合計数を予想。順番に予想した数を言うが、前の人より上げていかなければならない。「そんなにないよ~」と思ったらダウト。間違っていたほうがチップをもらい、3枚もらったら脱落する。こうして1人が残るまで勝負を続ける。
ほかの人の予想から自分の頭の上に乗っている数を推理するわけだが、羽根の中には「20」とか「×2」なんていうとんでもないものもあるので、前の人が自分の予想を大きく外れたときが焦る。でももしかしたらカマをかけられているのかもしれない! さあ、どうする?
今回は人数が多いので、1人脱落したところで終わることにした。1回目はよたろーさんがはめられて敗北。イギリス人のポールさんが飛び入り参加して英語でのプレイとなった2回目は、ノリで数字を上げて自滅したノムラさんの負け。全員の顔をしげしげと眺めるのが何ともおかしく、誰にでも出せる非常に優れたパーティーゲームだと思う。このユーロ高で値段がお手ごろなのも素敵。
パウワウ
プレイ人数:3~8人
プレイ時間:15~30分
国内発売:メビウスゲームズ(3500円)