ぽっかり空いた土曜日の昼下がり、山形の自宅でゲーム会。たくさんのゲーム愛好者がいる関東圏と異なり、山形では4人も揃えば万々歳である。50~100キロの道のりをかけて駆けつけてくださったnagaさん、上野さん、ちくたさんに感謝。午後1時から始めて、だらだらおしゃべりしている間に12時に。
頭脳絶好調ミニ|アダムとイブ|ラミィキューブ|盗賊騎士|ジェットコースターに乗ったカバ|レーベンヘルツ|ケイオス・マローダーズ|ポルターダイス|カランバ
頭脳絶好調ミニ(Einfach Genial: Reiseedition / R.クニツィア / コスモス, 2006)
カッチリはまります
テーマのないゲームとしては珍しくヒットした絵合わせゲームが、ポータブル版となって登場した。コスモスがポータブル版を出すのはカタン(トラベルボックス)以来だから、このゲームがどれだけ人気があるか分かる。
ゲームの概要はこちら。ポータブル版は2人専用で、タイル数が少なく得点盤も2人分しかない。コスモスの小箱サイズにこだわったためであろうか。そのため人によってはプレイ機会が限られるかもしれないけれども、カップルが旅行先でぽっかり時間が空いたとき遊ぶ姿が想像される。
ポータブル版ということでタイルや得点盤がはめ込み式となり、振動に強くなった。タイルのサイズはかなり小さくなったけれども、扱いにくいほどでもない。ただ、得点盤に挿し込むピンは小さすぎて、落としてしまいやすそう。乗り物の中で遊ぶときは落としてなくさないように注意したい。
頭脳絶好調は、遊ぶ人数によってプレイ感覚がだいぶ変わる。人数が少ないほど先のことを考えて手を打ったり、相手の点数が伸びないようにコントロールしたりもできる。特に終盤は、どの色を潰せば勝てるのかお互い分かっているので頭の使いどころ。中盤に伸びなかった紫色を心配していたが、2人で攻めているうちにお互い得点が伸び、次に低い色が問題に。地道に満遍なく育てていたnagaさんの勝利。私は天才2回も実らず。ほどほどに運の要素もあるので気楽に遊べたのがよかった。
アダムとイブ(Adam & Eva / A.ワイスブルム / ラベンスバーガー, 2004)
男と女は和気藹々と
カードをお互いに譲り合ってリンゴを集める2人専用カードゲーム。ムーンとコンビを組むことの多かったワイスブルムが単独で発表した作品はこれとクラウド9くらいしかない。クラマーと組んでいるキースリングと同じで、この人も単独にさせると変わったゲームを作る。
アダムとイブが4色のリンゴの木に向かい合って座る。リンゴの木にはリンゴの実が2つずつ。4色のカードをそれぞれの木の前に並べ、合計数の多い方が大きいリンゴ、少ないほうが小さいリンゴをもらう。しかし手番に出したカードは、自分の前におけるとは限らない。相手に差し出して、どちらの側におくか決めてもらうのだ。サンマルコにも見られたケーキの切り分け問題を使った手法である。相手の心理を推理しつつ、自分の陣地を先に埋めて残りのカードを相手に引き取らせたり、相手の陣地を先に埋めて残りを引き取ったりといった攻防が面白い。
こうして1手番1手番に行われる共同作業の雰囲気が何とも言えずいい感じ。「はい、これを貴方に差し上げます」「いえいえそんなよいカードは受け取れませんわ。どうぞ」「え、いいんですか。ありがとうございます」……そこに生まれる(少なくとも表面上は)和気藹々とした空気がゲームをする2人を親密にするだろう。2人ゲームというと、負けた方が妙に悔しいものだが、このゲームでは負けてもさわやかな感じが残る。
両サイド同じ枚数で勝負するのでどちらかが先にもらうと残りは全部相手側になったり、ヘビカードで相手のカードを除去したり、その色のカードを1枚も出せなければリンゴを2つとも持っていかれたり、小さいリンゴでも全色集めるとボーナスがあったりと、駆け引きをさらに面白くする装置もなかなか。
ボーナスにこだわりすぎて2つのリンゴを持っていかれることが2回あり、大差で負け。点数の高いカードをどんどん差し出していく太っ腹な人、低いカードから出していくケチな人など性格が出て、それによってゲーム展開がだいぶ変わってくるのも面白い。同じパートナーと何度も遊びたくなる作品だ。
ラミィキューブ(Rummikub / ヘルツァノ / マスダヤ, 2004)
もっといい手があるような……
数字をあわせて手持ちのタイルを出していくゲーム。4000万セットという、ドイツ年間ゲーム大賞受賞作としては最も売れたゲームで日本でも何度か発売され、現在はマスダヤが取り扱っている。
赤・青・黄・黒の4色で、1~13の数字が書かれたタイルを使う。麻雀のようにタイルを自分の前に並べてゲームを始めるが、タイルを揃える場所は自分の手元ではなく、中央である。中央に並んださまざまなタイルの組み合わせに、自分の手持ちからどんどん付けていって早くなくせば勝ち。
最初は中央に何もないから、手持ちから30点以上になる組み合わせを出し合う。組み合わせとは3枚以上で、同じ色の続き番号か違う色の同じ番号。ほかに役などは一切ない。場に2-3-4と出ていたら同じ色の1や5を付けることができる。
これだけならば単なる引きゲームだが、ここからがラミィキューブの真骨頂、アレンジである。場に並んでいるいくつもの組み合わせを自由に組み替えて、新しく作った組み合わせに自分のタイルを付けることができるのだ。組み換えは時間内に行い、最後につじつまが合うならば自由。複雑な組み換えをして自分のタイルを大量に出せれば喝采が上がるだろう。
この創造力を試されるアレンジという作業がゲームの魅力になっているのだが、ある程度上達するまでは、本当はうまくやれば置けるのに置けなくて新しいタイルを引くというまどろっこしい展開が多くなるかもしれない。今回はまさにそういう展開で、終盤になってから長引いてしまった。もっと上手になりたいと思った。
盗賊騎士(Raubritter / R.ドーン / クイーンゲームズ, 2005)
真一文字に上書き合戦
タイルを配置しながら街や村を騎士で占領しあうダイナミックな陣取りゲーム。このところ評判がいいR.ドーンの新作。
手番には2枚の手札から選んでタイルを置き、それが砦タイルだったら騎士コマを投入する。騎士コマは隣接するタイルに出動して、移動先にコマを置いて占領しながら先に進んでいく。ジェノバの商人、ゴア、ルイ14世に見られたドーンお得意の手法だが、今回は一直線。騎士だけに潔し。
まず街や村のタイルを置き、その隣りに砦のタイルを置いて騎士を投入するのが基本。前に置かれた街や村の近くであれば、占領できるタイルが増えて効率がよい。
すでに騎士が置かれているマスでも、別方向から攻め込んだりして「上書き」できる。占有できるのは常に一番上にあるコマ。こうして縦一文字、横一文字に上書き合戦が繰り広げられるのだ。どこから騎士を投入すれば効率的に占領できるか、また後続の騎士に上書きされにくいか考えながら砦タイルを配置しよう。騎士が出動した砦も占有対象になる。騎士が出動して手薄になったところを狙って占領だ。
1度に投入できる騎士は5人だけなので、砦も含めて最大で5タイルしか占領できない。途中に森や山があると占領に必要な騎士の数は増え、その分占領できるマスが減る。さらにタイルの広がりは縦横9タイル(3人プレイ時※)と制限されているので、自ずと入りにくい場所ができあがる。そういう場所を巡る攻防も熱い。
プレイ時間は40分ほど。直感的にさくさくと手軽に遊ぶのもいいし、じっくり考えて遊ぶのもいい。上書きできることによって直接攻撃が可能になっている点は好き嫌いが分かれるかもしれない。隅のほうをうまく取れたが、計算してみると占領した街が1つ少なくて敗北。1つの街の攻防が勝敗を分けた。
※タイルの広さは2人なら7×7、3人なら9×9(メビウス訳では8×8になっている)、4人なら10×10。今回は8×8で遊んだので不完全燃焼気味だったが、9×9ならば終盤の攻防がもっと熱くなるだけでなく、一度に投入する騎士の数もだいぶ抑えなければいけなくなって悩ましいだろう。
ジェットコースターに乗ったカバ(Nilpferd in der Achterbahn / B.カエス / ラベンスバーガー, 1988)
爆笑の罰ゲーム大会
特に何の賞も受賞していないがシンプルなルールと感性に訴えるゲーム内容でミリオンセラーとなったパーティゲーム。
ジェットコースターになっているマスの上をカバのコマが進み、先に1周したら勝ちというコノゲーム、ダイスで進めるが途中途中にクイズと課題が待ち構えている。
クイズのマスは「動物名」「国名」などのお題カードに従って1つ答えを作り、皆に当ててもらう。レベル1は口で説明、レベル2は粘土で表現、レベル3はパントマイム、レベル4は物音で表現となっており、難易度が次第に上がっていく。1分以内に当ててもらったら先に進むことができ、当てた人はチップをもらう。このチップは不利なことを回避したり早く進むのに使う。
課題は「今日は週末ならば」「誰かのポケットの中に鍵があるならば」などの条件カードと「時計を見ないで30秒数えよ(誤差±3秒で合格)」「隣の人の服装をファッションショーのようにして説明せよ」「頭の上にコマを乗せて机の周りを1周」「1分間笑わない」「1分間水の美味しさを説明し続ける」「詩を作る」などの命令カードを組み合わせる。何だか罰ゲーム大会のようだが、爆笑必至。
時間は60分以上かかったが、随所にお腹を抱えるほど笑えるところがあって飽きなかった。なるほどミリオンセラーにも納得。
レーベンヘルツ(Löwenherz / K.トイバー / コスモス, 2003)
前門の虎、後門の狼
柵を境界線にしてより広い領土を作る中世の陣取りゲーム。1995年にカタンでドイツ年間ゲーム大賞とドイツゲーム賞のダブルクラウンに輝いたトイバーが、翌々年に発表したもので、年間ゲーム大賞こそ逃したがノミネートに入り、ドイツゲーム賞で1位に輝いた。この数年間、ドイツゲームはヘビー級のゲームが続く。面白いけれど時間がかかって遊ぶ機会がないという声に応え、2003年に短時間で遊べるよう作り直された。今回はその新版をプレイ。
新版では手札3枚から1枚を選び、そこに書かれた金額を払って行動するか、またはお金を受け取って市場に売る。そして1枚、山札か市場から無料で補充するという、シンプルで分かりやすい手番になっている。旧版では1枚カードをめくってそこに描かれた3つの行動のいずれかに希望を出し、バッティングしていれば交渉や競りを行うため、ゲームはもっと濃くなるがどうしても時間がかかってしまっていた。
カードを出してできる行動は柵の配置、領土の拡張、騎士の配置、脱走兵、同盟の5つのいずれか。まずは柵を置いて領土を作ろう。外枠も含めて自分の街が入ったエリアを囲みきれば領土となる。領土の中にある森と街は得点になり、また領土の中に鉱山があれば毎手番収入も入ってくる。
領土ができたら今度は拡張だ。2マス分だけ領土を広げることができる。これによって近くにある街や鉱山を呑み込めば、得点や収入が上がる。となりの領土に拡張するときは、領土にいる騎士の数が勝っていなければならない。そこで騎士の配置。相手から攻められず、逆に攻め返せるようにするには騎士の数も重要になる。
騎士の数で劣っていても逆転する方法が脱走兵。となりの陣地の騎士を1人減らして自分の陣地を1人増やす。あるいは同盟。騎士の数に関わらず2つの領地に不可侵条約が結ばれる。いい土地を取るだけとって、不可侵条約を結ぶ。道義より勝敗、これこそレーベンヘルツ(獅子心)なのだ。
柵や騎士をたくさん置いたり、脱走兵や同盟をするには結構お金がかかる。そのため1回は休んでお金をためないといけないので一気に畳み掛けることはできない。その分、敵の内情をよく把握して優先順位を考えなければならないだろう。中央にある王の都の攻防に参加すれば騎士や同盟などで多大なコストを使うので、もしかしたら周辺部でひっそり広げた方が得かもしれない。他の人の動向をしっかり見極めることが大切だ。
早めに鉱山が2つある領土を獲得し、ふんだんな収入で優位にたった私が王の都争いで負けたもののギリギリで逃げ切り。nagaさんは私の領土とちくたさんの領土に挟まれて苦戦。両方から攻められるときつい。上野さんの領土はちくたさんにずいぶん奪われてしまっていたが、ほかの3人が争っているうちにノーマークの領土をものにして全員僅差となった。90分くらいかと思って時計を見ると60分。ルールが簡略化されたとはいえこのゲームの充実感は全く失われていない。ドイツゲーム最高峰の1つと言ってよいだろう。
ケイオス・マローダーズ(Chaos Malaudors / S.ハンド / ゲームズワークショップ, 1987)
激変の展開に唖然
3列の軍隊を編成して戦うカードゲーム。先日遊んだオガララの初版から10年後の作品で、システムを借りつつも、派手なアクションカードの数々でゲームを盛り上げている。
手番には山札からカードを引いて、自分のボードに並べる。このときさまざまな特殊カードが出てきて相手のカードを奪ったり、自分の得点を増やしたりできる。
スタンダードからミュージシャンまで軍隊を作れば、それよりも弱い軍隊を攻撃して略奪できる。略奪された軍隊の兵士は全部捨て札。折角作った軍隊が一瞬にして消える激変ぶりは唖然とするばかり。
しかし略奪は必ず成功するとは限らない。ダイスを振って失敗すると、今作ったばかりの軍隊が相手に取られてしまうのだ。ままならねぇ。誰かが3つの軍隊を完成させるか、山札がなくなったら終了で、1枚10点に軍隊編成ボーナス、特殊効果のボーナスなどを足して一番高い人の勝ち。
ちくたさんとnagaさんの軍隊が次々と消えていく中、ダイスの目も調子よく軍隊を組んでいったが、ボーナスに結びつくカードが少なくて負け。特殊効果満載のカードのバラエティは一度では覚えきれないほどで、一寸先は闇という中、次に何が起こるのだろうかとわくわくした。
ポルターダイス(Polterdice / S.アルベルタレッリ / キダルトゲームズ, 2002)
そこはかとない不気味な雰囲気
ミラノのメーカー、キダルトゲームズのメジャーデビューを飾った大箱ダイスゲーム。
16の部屋には3~11のマジックナンバーが振られている。8つのダイスを振って、2つずつ4組に分け、それぞれの合計数だけ対応する部屋の階段を上る。最初に秘密の部屋に着いた人がコインをゲット。3つのエリアの探索が終わったときお金を一番持っていた人が勝ち。
マジックナンバーに2と12はないが、1ゾロはどの数にもなり、6ゾロは他の人のコマを下げる。また一番作りやすい7がないのが組み合わせを難しくしていて面白い。また他の人より先に着くことが必要なので、どういう組み合わせを作るのが先決か考えるのは運だけではない。
このゲームはキャントストップを作ったS.サクソンに献呈され、基本的なアイデアもキャントストップに拠っている。どの数字でも同じ段数なので6や8は先に終わり3や11はなかなか進まない点と、組み合わせができなかったことによるバーストがないことから全体的平坦でドキドキ感がやや薄い気がした。60分以上かかる割に盛り上がりどころが少ない。キャントストップと比べなければ、十分面白いゲームだと思うのだが、相手が悪かったようだ。
カランバ(Caramba / M.シャハト / ティルシット, 2006)
ゲーム概要はこちら。前回はデッキを使い切るともうカードを出せないことにしたためハンドマネージメントの要素があったが、リシャッフルして再利用できることが分かり、ふんだんにカードを出しても困らなくなった。ただ手札の補充は毎回2枚だけなので、全力投球すると次のラウンドが弱いのは変わらない。1回リシャッフルしたくらいで終わるくらいゲームは短いので、この違いはさほど大きくない。
特殊カードの「6点まで一気に確保」は強すぎるので、3人で遊ぶときはこのカードを抜く、4人で遊ぶときは特殊カードを入れないという措置が必要だと思う。