秋葉原水曜日の会 06/08/02

秋葉原水曜日の会 06/08/02

先週に引き続き秋葉原。交通の便がよい都心の一等地、冷房がききすぎるほど涼しい部屋で何時間も遊んで無料というのは、イエローサブマリンRPGショップの好意とはいえ感謝を通り越して申し訳ないほどである。
今回は名古屋バネスト経由で発売されたティルシット社の新作と、相変わらず国内の紹介をあまり聞かない古めのゲームを遊ぶ。新旧織り交ぜると、時代によってゲーマーが求めていたものが変わっているのを感じる。古い(といっても15年前ぐらいだが)時代のゲームがもつインパクト、現代のゲームがもつバランス、どちらがいいということではなく、両方味わえるのが喜びである。

アーサー王の円卓ハンス・ダンプフバロンヘックマックカランバ深海の秘密|おサルのダンス|タイマンポーカー

アーサー王の円卓(König Artus Tafelrunde / T.パウリ / アミーゴ, 1993)

アーサー王の円卓一致団結、そして出し抜く

アーサー王をテーマにしたトリックテイキングゲーム。プレイヤーは円卓の騎士となって、カードの強さをうまく変えながら円卓を1周することをめざす。
 マストフォローのトリックテイキングで、1トリックごとに取った人が自分のコマを進められる。1つのマスには1人しか入れず、前が塞がっているときは飛び越えてその先にいく。バラバラに進むより団子状になって進んでいくのが効率がよい。
 剣が描かれたマスに止まると、切り札の色を変えることができる。手札を見て自分に有利な色を選ぼう。最初に1周した人が勝ち。
 最初はいきなりトリックをとって1マス進むよりも、2番目にトリックを取れば2マス先へ、3番目なら3マス先へと他の人が連続していれば一気に飛び越せるので、敢えて負けておく戦略も重要だ。また中盤は団子状になるため、座り順によっては敵に塩を送ったりして順位を調整するのがポイント。ボードを使ったトリックテイキングはいろいろあるが、その中でも手軽に機微を楽しめる一品だ。

FRTSさんと私が二人三脚でどんどん進んでいき、ほかの3人を大きく引き離した。最後のデッドヒートは、リードされる色によって勝敗が分かれる微妙なラインだったが、FRTSさんが勝利を収めた。

ハンス・ダンプフ(Hans Dampf / R.ヴィッティヒ / ブラッツ, 1993)

ハンス・ダンプフ線路に立ちはだかる動物王国

動物をよけながら競う機関車のレースゲーム。4~8人用で、多いほど面白い。
 5人以上で遊ぶ場合、半数ずつボードの反対側からスタートする。中央ですれ違って、反対側にいち早く到達した機関車が優勝だ。進むのはサイコロ。でも機関車だから走っている途中で曲がることはできない。方向転換は走る前か後で。曲がるところはたくさんあるので(写真の赤い壁は通れない)、融通の利かなさがじれったくもおかしい。
 これに輪をかけるのが道端に佇む動物たち。ウサギ一匹といえども跳ね飛ばして進むような非道を、誇り高きポッポヤはしないのだ。迂回するか?
 機関車は好きなところで止まることができ、残った目の分をお金にできる。これを使って動物をどかそう。サイコロを振る前に4金払えば、目の前の動物を別のところに追い出すことができる。当然トップを行くプレイヤーの目の前に……。こうしてトッププレイヤーの周りには動物王国が形成される。ムツゴロー!
 お金の使い道はまだある。ほかの機関車を同じ路線で追い越すときに1金、すれ違うときに2金。そして重要なのが、最後のラストスパートで1マス1金で進めるのだ。ラストスパートは2回曲がってもよいことになっており、お金をガッポリ貯めて手前のカーブから一気にゴールを陥れることもできる。お金はついたての裏に。貯めこんでいるのがばれると動物王国にされてしまうから、適度に使って貯めていないふりをしたい。多人数で盛り上がれるゲーム。

 中央のデッドヒートは見ものだった。ど真ん中に羊がいて、その後を列車が連続で立ち往生。誰かがどかしてくれるのを待ちつつ、お金を貯めていたのだ。お金を払って羊をやりすごした私がゴール手前までいくと、こぞって動物が置かれ、全く進めなくなった。その間にガッポリ溜め込んでいたしむしゅさんが一気にゴール。

バロン(Baron / F.ゴードワ / ティルシット, 2006)

バロン男爵領、陥落ス

タイルを置いて街を広げ塔で陣取りをするゲーム。美しいイラストと斬新なアイデアで知名度を高めつつあるティルシット出版(フランス)の製作。ドイツでも近年、フランスのデザイナー・メーカーが脚光を浴びてきており、今後が楽しみな領域となっている。
 手番には3枚のタイルから1枚を引いて手札にいれ、その中から1枚を置く。草原以外は同じ地形が連続してはいけない(写真手前の-1は間違った例)。
 その後で好きな草原に塔を建てることができる。塔の強さは隣接するタイルに書かれた数の合計。塔を建てたら、周囲にポイントの高いタイルを置いて塔の力を強めよう。塔の周囲6マスが全て埋まると、塔はバロン(男爵領)になり、強さの分だけ得点が入る。
 しかし男爵領にしたからといって安心してはいけない。近くに共通のタイルを使ってほかの人の塔が建てられると自体は緊迫する。これも男爵領になったとき、戦争が起こるのだ。2つの男爵領は強さを比べあい、負けた方は塔を破壊され、相手に取られた領地分だけ得点を返上しなくてはならない。
 そこで後から作られる敵の塔には「-1」や「-2」のタイルを置いて強さを弱めることが必要になる。しかし反対側からさらにまた別の塔が作られつつあったら……。取って取られて取り返されての攻防が巻き起こる。

 一進一体の攻防は、最後にドーンと男爵領を作ったFRTSさんが制した。得点のチャンスはそう多くなく、1点の違いを読むシビアな戦いになる。ところが手番に補充できる3枚のタイルは、山札からめくられたばかりのものから順に値段(点数を減らして払う)が違うが、1点でも惜しいので無駄な買い物はできない。そもそもタイルの種類が少ないので選択の余地がないことも多い。その結果たいていの場面は一番最後のタイルを取り、それがプラス点なら自分の塔に、マイナス点なら敵の塔にくっつけて、草原なら新しい塔の置き場を作るか、または男爵領を早く作るのに埋めるかに使うことになり、考えるのはむしろ塔の置き場所にあるようだ。3人ぐらいだともっと考えどころが増えるだろう。
 

ヘックマック(Häc Mäc / T.シェープス / F.X.シュミット, 1991)

ヘックマックなんだそのヘルシーなバーガーは?

みんなで力をあわせて美味しいハンバーガーを作るカードゲーム。シェープスが「農夫の悪だくみ」と同じ年に発表したものである。中央にハンバーガーの下のバンズを置いてゲームスタート。1枚ずつハンバーガーの具を乗せていく。レタス、トマト、ピクルス、オニオン、やけにヘルシーだ、じゃあそろそろ肉? ベーコン、パイナップル……同じ具は2つまで。間違って3つ目を乗せてしまった人は、指摘されるとマイナス点になる。
 そろそろいいなと思った人は上のバンズを出してハンバーガーを完成させる。カードに書かれた点数の合計が得点だ。しかし各自作れるハンバーガーは3つまで(そのうち1つは得点が2倍になるお得バーガー)。先にどんどんゲットしたほうがいいのか、後を待つか、そして2倍のバーガーはいつ作るのか?
 そのタイミング計算を狂わせるのがハエ。これが出されるとハンバーガーは途中で捨てられてしまう。いよいよ残りは少ない。薄いハンバーガーで妥協するか?

1回目は通常ルール「手番にハンバーガーを完成できる」を採用。2回目で「手番でなくても手を出して先に取った人がハンバーガーを完成できる」にしたら、ゲームが俄然盛り上がった。1枚出すたびに誰かが取るかもしれないという不安の中で、もう少し欲張って待つか早めに得点にするかが悩ましい。特にハエがどんどん出てくる終盤は大騒ぎ。マク○ナルドも、たいへんですなあ。

カランバ(Caramba! / M.シャハト / ティルシット, 2005)

カランバ裏世界の闇取引に「カランバ(何だってェ)?!」

メキシコを舞台に、禁制品を競りで集めるカードゲーム。フランスの出版社がドイツ人のデザイナー作品を出すのはよくあることだが、ドイツで出版されていない完全オリジナルというとかなり珍しい。作者シャハトのファンにはたまらない一品。
 競りにかけられる品はダイナマイト(赤)、金塊(黄)、銃弾(緑)の3種類。3色のチップが揃うまで袋から1枚ずつ引く。だから赤がたくさん出ているのに黄色は1つだけなんてこともある。何色に力を入れればよいのか判断のしどころだ。
 競りはカードを1枚ずつ出して、色別に数値の合計で決める。カードは各自自分のデッキから引くから公平になっている。全員がパスするまで何周でも続くが、パスした人はもう入れない。得点高い色は当然カードが惜しげもなくつぎ込まれて競りがヒートアップするだろう。
 出したカードは、競り落とした人だけ捨てて残りの人は手札に戻す。だからたとえ勝てないにしても、ぎりぎりまで勝負を引っ張れば相手の手札を削ることができ、次の競りで有利になるかもしれない。ただし、カードを曝してしまうことはほかの人に足元を見られるもとにもなるので要注意。
 競り落とした品物はいくつ取ったとしても1つだけ確保できる。残りはどうなるかというと、何と次の競りで使う。すなわち、そのチップは持ち主が自分の数値に足すボーナスとなり(ただし1枚だけ)、かつ負けたらもっていかれる競りの対象でもあるのだ。うわー、カランバ(何だってェ)?! たくさん取っても、その色のカードを使い果たしてしまって守りきれなければ奪われてしまう。
 さらに、ゲーム開始時に1枚だけスペシャルカードが配られる。「競りの即終了」「捨て札から1枚戻す」「1品奪われない」「6点まで一気に確保」のいずれかで、ゲーム中1回だけ使える。これもうまくタイミングが合えばほかの人にカランバ(何だってェ)を言わせられるだろう。チップが1色切れたときに、確保しているチップが多い人が勝ち。
 デッキのカードは、思いのほか少ない。1回の競りに熱くなりすぎてカードを使い果たすと、後が続かないだろう。しかし競りは相手次第。相手の手札を最大限削りつつ、カードを節約して最小限で取れるようにしたい。それには、そのカードをもう持っていないのに持っているかのように思わせるブラフも必要だ。

 FRTSさんが最後に「6点まで一気に確保」のスペシャルカードを使いダントツ1位。でも仮に使わなくても1位になれるくらいの得点を、上手なカード回しで実現していた。

深海の秘密(Geheimnis am Riff / W.リーデッサー / ラベンスバーガー, 1991)

深海の秘密イルカによる水難事故多発

プレイヤーはダイバーとなり、海底に潜って宝箱を集めてくる。酸素ボンベが切れる前に船に戻らなくてはならない。夏らしい一品。作者は先週の「黄金のドラゴン」に引き続いてリーデッサーだ。同氏による「アベ・カエサル」の新版も発売されたばかり。
 ダイバーはルーレットと酸素ボンベチップで進める。海底には深いところほど点数の高い宝が眠っているので、どんどん潜っていこう。宝を取ったら浮上して船に戻る。無事に帰れたら宝を確保して得点。
 曲者は船が前に進んでいることとイルカが泳いでいること、そしてハプニングカード。誰かが宝を持ち帰るたび、船は1マス進む。だから後れを取ると浮上する頃に船がもう行ってしまって、急いで追いかけなくてはならなくなったりする。おーい、待ってくれ~!
 イルカは、イルカチップを出すと動かすことができ、ダイバーを押しのける。せっかく浮上してきたところを、イルカが上から襲い掛かって再び海の底へ。うぅ、もうボンベがない!ブクブク……溺れてしまったダイバーは、宝をその場に落とし(海底まで垂直に沈む)、スタートからやり直しだ。
 そしてハプニングカード、船が戻ってきたり、全員1マス動いたりとちょっとしたサプライズがある。思うほうに転がればいいが、その反対だとまた溺れる人が出てしまうだろう。

 イルカがとにかく凶悪(正確には、それを操っている人だが)。2匹もいて、好き放題やってくれる。邪魔されている間に船はまた遠くに進んでしまい、犠牲者が出るたび残酷な笑いが巻き起こる。1位はそのイルカを意のままに操ったMIZさん。ほんとうに潜水しているような臨場感があった。ブクブク。

タイマンポーカー(Head-To-Head Poker / R.クニツィア / パーカーブラザーズ, 2005)

タイマンポーカークニツィア先生も敵だ

クニツィアによる2人用のポーカー。ポーカーの役を使い、カードを出しながらビッドしていくところはそのまんまポーカーだが、カードの出し方にクニツィアらしいジレンマがあって、どちらかというと「バトルライン」や「ブルームーン」を髣髴とさせる。
 第1ラウンドは3列。各列の中央にカードを1枚ずつ置き、ご褒美のチップを置いて、プレイ方法をダイスで決めたらゲーム開始。1枚ずつカードを置いていき、全部置かれたときに各列の中央を含む左右5枚(中央は共通)でポーカーの役勝負をし、勝ったほうがチップを獲得できる。第2ラウンドは4列、第3ラウンドは5列(写真)となって、勝負どころが増えていく。
 カードを置く前に、いずれかの列にビッドをしてレートを上げることもできる。ビッドされたほうはコール(同額ビッド)かレイズ(ビッド増額)か降りるかのいずれかを選択。降りれば相手がその列のチップを取るが、50ドルチップだけ場に残り最終的に勝ったほうが手中にできる。
 一度に複数の列で争うとはいえ、ここまではポーカーの域を出ないだろう。ここからがクニツィアの本領である。上記の「プレイ方法をダイスで決める」というところに注目してほしい。

  1. ダイスで1が出たら、手札なし、山札から1枚引いて1枚出す。
  2. ダイスで2が出たら、手札なし、山札から2枚引いて1枚を自陣に置き、もう1枚を相手にあげる。
  3. ダイスで3が出たら、手札3枚。1枚使って1枚補充。
  4. ダイスで4が出たら、手札4枚。使いきりでまた4枚補充。
  5. ダイスで5が出たら、手札なし、場に5枚めくって交互に1枚ずつ取る。
  6. ダイスで6が出たら、もう1度振って1~5を選ぶ。今度は、相手の陣地に置いてもよい。

6はちょっと潰し合いになるけれども、どれを取ってもそれぞれに違う種類の面白さがある。1のように運任せでタイマン勝負もいいし、2や5のように相手に与えてはいけないものを考えながらプレイする戦術もいい。3、4では計画性が試されるだろう。どの勝負にも、まるでクニツィアと戦っているような悩ましさが待っている。1粒で、6度美味しいのである。
 あまりに面白くて2回、1~6を全部試したほど熱中した。ポーカーの役を使っていることで余分なことを覚える必要がなく、すんなり入り込めるのもよい。実はトランプとチップとダイスがあればできるなぁというのは内緒。

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