3月以来2ヶ月ぶりとなる自宅ゲーム会。当初は2卓ほどを予定していたが、参加者が増えてかゆかゆさん、moonさん、つくりみちさん、健部さん、えびるさん、MQさん、さくらちゃん、さとーさん、カワサキさん、しょうさん、Sさんの11名。始めに全員で大人数ゲームを遊んでから、3卓に分かれてノミネート作品、定番ゲーム、ちょっと変わったゲームなどを遊んだ。
特に今回はドイツ年間ゲーム大賞ノミネートが発表になった直後ということで、moonさんにメビウス便をお持ち頂き、海賊を除く4作品を全て遊んでいる。私の予想はこちらに書いた通り消去法でローマ水道だったが、実際に遊んでみて面白い作品であることが分かった。予想トトの中間集計やノミネート株ゲームを見ると、郵便馬車の一番人気は堅いが、二番手はブルームーンシティかローマ水道かで意見が分かれている。ジャスト4ファンと海賊は穴馬。これから1ヶ月半、大賞の行方が気になるところだ。
オリエンテ|ジャスト4ファン|ブルームーンシティ|ローマ水道|ダイアモンド|クレオパトラと建築士
オリエンテ(Oriente / L.コッポラ / ダヴィンチ出版, 2004)
戦乱の世を駆け抜ける
イタリア、ダヴィンチ出版のパーティゲームシリーズ「ジオコンダ」。人狼、ワードジャム、オストラコン、そしてこのオリエンテが発売されている。12人まで遊べるというのがセールスポイントだ。
舞台は東洋のある国。将軍、僧侶、魔法使い(え?)、大名、侍、商人、農夫という階級社会の中でそれぞれの特技を生かしながらうまく立ち回り、富を築く。
各プレイヤーには1枚だけカードが配られる。スタートプレイヤーから競りをして、階級が上のプレイヤーから戦を仕掛けたり、特技を使って富を集めたりする。
戦は誰かを指名して対決するが、ここで両陣営は自由に交渉して援軍を頼むことができる。「勝利した暁には、然るべき報酬を与える」「勝てなければ何ももらえないんなら、援軍しないよ」「しからば負けても1は払おう」「前払いでお願いしますぜ」……約束は守らなくてもよいが、守らないような人は信用を損なうから、終盤でもならない限り、そこそこ守られるだろう。あとは交渉次第。援軍に付かれて、敗色が濃くなった陣営はさらに援軍を頼むが、戦を大きくしても、報酬が間に合わない。それだったらここは潔く自決するか? プレイ時間の公称20~30分なんてありえないことになるが、ここがゲームの最大の醍醐味だと思う。
それぞれの職業がもつ特技を生かせば、階級が低くても戦う術はある。例えば農夫は数の力で一揆を巻き起こせば、富めるものから一気に略奪して逆転が可能だ。しかし最弱のため行動する順番はどうしても後になるから一揆はすぐに起こせない。職業のアヤが、毎回異なる展開を生むだろう。
今回10人プレイ。先に僧侶や将軍で派手な行動を仕掛けた私だが、すぐに暗殺されたり、戦に負けたりして農夫生活。一揆を仕掛けるには、遅すぎた。かゆかゆさんが忍者の特別勝利でリーチにしたが、それも間に合わず芸者が出て終了。しょうさんの勝利。
人数が多い方が援軍が大きくなったり農夫の大同団結が起こったりして断然面白い。各職業の特殊能力を飲み込むまでに時間がかかるが、慣れてしまえばかなり楽しめると思う。
ブルームーンシティ(Blue Moon City / R.クニツィア / コスモス, 2006)
クニツィア?
ブルームーンという惑星で民族の力を使って建物を建築するボードゲーム。本年のドイツ年間ゲーム大賞ノミネート作で、今まで数々ノミネートされながら大賞には至らなかった作者クニツィアの無冠の帝王返上となるかという期待がかかっている。
中央のマスから自分のコマを移動し、その先で指定された色のカードを出すと建築ができる。建物が完成すると建築に携わった人にクリスタルなどが与えられて、それをまた中央のマスに戻って捧げ、規定回数捧げた人が勝利するという仕組み。
建物によって1回の建築で完成するものもあれば、4回もかかるものもある。1番貢献した人にはボーナスがあるから、協力しつつ出し抜いてボーナスを狙う。誰かが着手したばかりのところに、乗り込んでいって手柄を奪うのが手っ取り早いが、皆と離れたところで単独で建築し、独り占めする手もある。
ドラゴンは建築する場所に呼んでくると、ウロコを落としていく。これを集めればクリスタルがもらえる。協力的なドラゴンというわけだ。また、完成した建物が隣接していると、もらえるクリスタルが増えたりする。どこに行って建築すれば一番いいかは、このドラゴンの場所と、完成した建物が近くにあるかで決まるだろう。
民族カードには、ドラゴンを呼び寄せたり、自分のコマを移動できたり、カードを別の民族に変えたりするものもある。引き運はあるけれども、上手に使いこなすのもポイント。何しろ建築は一手を争う。
細かいルール(民族の特殊能力やドラゴンのウロコの分配ルール)が多い割に、プレイ時間は45分程度と短かった。かゆかゆさんが効率よく建築して回って1位。私は相乗りができず辺境で頑張ってみたが狙った色のカードが引けず、ズルズル最下位。
1~2手番に1回ほどの頻度で建物が頻繁に完成し、その度にコマをよけてタイルを裏返し、ボーナスを数えて渡すという部分に作業感を感じる。大仰なドラゴンのコマがそれほど大きな役目を果たさなかったり、クニツィアの特技であるトレードオフのジレンマがなかったりして、やや大味な印象を抱く。テーマ的にも2人用カードゲームを遊んでいないと世界観が分からなかったり、イラストもグロテスクだったりして頂けない。早い者勝ちの建築競争自体は楽しいが、大賞ノミネート作品としては厳しい目で見ざるを得ない。
ローマ水道(Aqua Romana / M.シュレーゲル / クイーンゲームズ, 2005)
融通が利かない工事
建築家を使って工夫を誘導し、ローマ市内に長い水道を引くゲーム。これまた今年のドイツ年間ゲーム大賞ノミネート作品。作者シュレーゲルは、98年ごろから子どもゲーム、Mやヘクラなどアブストラクトゲームを作っている。このゲームもテーマこそあれ、運の要素がない完全情報公開ゲーム。2人でやればガチガチだろうが、4人ならば可能性がさまざまあって読みきることはできず、ブロックスのような適度な緊張感と適度なハプニングが楽しめる。
建築家はボードの縁を周回し、工夫はそれぞれの池から出発する。工夫から見て縦方向か横方向に建築家が見えれば、その建築家が持っているタイルをその前に敷いて水道を伸ばすことになる。「おーい、こっちこっち!カーブだぞー」「次は真っ直ぐな!」
建築家は指示を出すたび時計回りに動いていくので、思い通りに指示できるとは限らない。真っ直ぐ行くつもりが、真っ直ぐの指示を出す建築家が通り過ぎてしまい、代わってやってきたカーブの指示を出す建築家のせいで計画は滅茶苦茶、なんてことも。
これ以上伸ばせなくなったところでそれまでの長さを得点。全員がタイルを置けなくなり、工夫の得点計算を終わった時点で長い水路を作った人にボーナスが入って勝敗を決める。1本だけ長くしてボーナスをとってもほかの水路が短すぎては勝てず、バランスよくどれもほどほどに伸ばす必要がある。
いずれの水道も上手に伸ばしたmoonさんが1位。私は自分の水道同士が途中でかちあい、十字路で回避しようと思っていたら今度は反対側からかゆかゆさんの水路が伸びてきて、どうしようもなく最下位。先の先までは読めないにしても、予め水道用地は確保しておく必要があると思った。
ラインの接続も陣取りというドイツゲームの基本を押さえつつ、外側からの建築家の指示という、システム的にもテーマ的にも面白い要素を加えたこの作品は、ノミネート作品の中で郵便馬車に勝るとも劣らぬ出来映えだと思う。私は郵便馬車よりも一押し。