ドイツ年間ゲーム大賞ノミネート発表後の水曜日の会に米出さんと一緒に参加。人によって持ち込むゲームの傾向がいろいろあり、最新作から定番、国産、子どもゲームまで取り混ぜて遊ぶことができた。私はたまたま短めのゲームをたくさん遊んだが、ほかの卓では暗黒の大広間、ギガンテン、ルイ14世なども立っていてさらにバラエティに富んでいる。
プレイヤーも顔なじみの人から初対面の人もいて、それぞれ打ち筋が違っていて面白い。今回が第48回。毎週だから回を重ねるのが早い。
ミケリノス|海賊(→コルセア)|レスパブリカ|ハリガリ|ハニーロード|ターボタクシー(→パッチワーク)|リラックマ ビバ!だらだらゲーム|銀行強盗|ジャスト4ファン
ミケリノス(Mykerinos / N.オーリ / イスタリ, 2006)
二兎を追わねば勝てず
「イス」「ケイラス」で世界のゲーマーを虜にしたフランス・イスタリ社の第3弾。やや小箱の、しかし前作に勝るとも劣らぬ会心の出来映えである。
プレイヤーは考古学者となり、5人のパトロンの庇護を受けながら、エジプトの遺跡を発掘し、博物館に展示して名声を高めるのが目的。パトロンは特殊能力を生かしながら、遺跡と博物館でシビアな陣取りを繰り広げる。
まずは順番に手下を遺跡に配置。配置したところからさらに伸ばして発掘の権利を主張する。遺跡は4つ(最終ラウンドは6つ)のエリアに分かれているが、全部のエリアはつながっており、エリアを跨いで伸ばすこともできる。コマの数が限られている中、ピラミッドを妨害物にして、容易に入り込めないように牽制しあうのは相当頭を捻る。
もう配置したくない、配置できないという人はパス。全員が終わると、エリアごとに多数の手下を置いた人からタイルを獲得できるが、ここで手下が同数だと先にパスをした人が勝つという仕組みになっている。しかし先にパスをすれば、残りの人にいいようにされる可能性もあるわけで、読みと駆け引きが必要だ。
陣取りに勝つと、パトロンのタイルを獲得するか、博物館に手下を配置できる。パトロンのタイルは特殊能力となり、次のラウンドから一度にたくさん手下を配置できたり、ピラミッドにも入り込めるようになったりと、何かと便利。博物館に手下を配置すると、パトロンのタイルの点数が上がる。しかしここも各部屋先着1名で、陣取りになっている。
これを4ラウンド繰り返して、最後にパトロンの点数を入れて名声点の一番高い人が勝ちだ。
第1ラウンド、賽さんが効率的な配置で有利にたち、残りの3人が追いかける展開に。中盤から博物館にも力を入れた米出さんが逆転して1位。私は明らかにまずい配置が目立ち、博物館にもあまり力を入れられないで4位となった。
遺跡と博物館の両方に目を光らせつつ、特殊能力を駆使してよりよい置き方を考えるという、複眼的な視点が勝つために求められる。一手一手が震えるほどの緊張感。それでいてプレイ時間が1時間ちょっとしかかからないというのは、ケイラスと比べて大きなメリットと言えるだろう。
レス・パブリカ(Res Publica / R.クニツィア / クイーンゲームズ, 1998)
耳を使った情報収集で
1991年に始まったアラカルト・カードゲーム賞の記念すべき第1回優勝作品。90年代、クニツィアは多数のゲームをノミネート・受賞させて快進撃を果たしたが、その始まりはこのゲームだったと言えるだろう。ルールも易しく、時間も短いのに、システマティックで他のゲームにはない魅力を備えている。
同じ種類のカードを5枚、交換で集めて公開し、それで点数を獲得していくというゲームだが、はじめはアングロサクソンなどの民族カードを揃え、それが揃ったら今度は錬金術などの文明カードを揃えるという二段構成になっている。早くレベルアップして、高得点の文明カードを狙おう。
交換の決まりは、「AとB(AかB)を下さい」「AとB(AかB)をあげます」という提示までしか許されない。しかも提示は1回だけ。ややこしい交換条件をつけたり、誰も応じなかったからといってねばったりしてはいけないのだ。これがゲームをスッキリさわやかな感じにしている。
早く揃えるためには、他の人がどんな提示をしているかを頭に入れておくことが重要。何が余っているのか、何が足りないのかを把握しながら、次の手番ではより実現性の高い提示をするのがコツだ。「あげます」で他の人の持ち札を把握しつつ皆が要らないカードをかき集め、「下さい」で仕上げるというのが基本になるだろう。
5人プレイで、皆同じくらいのスピードで成長していく。交換は相互に利のある場合に成り立つので、揃うのがほぼ同時で僅差になるのは必然なのだ。となると交換の実効性で小さな差がついてくる。最後は2枚だけ残った手札も点数になるので、勝敗は最後まで読めない。文明カードを1番最初に揃えた賽さんが1位。私は1点及ばず。
昔遊んだときは、手札の引きに勝敗の全部がかかっているように思われたが、他の人の交換を注意深く聞いて、次の交換内容を決めるということを意識すると、ゲームに立体感が出てきて面白くなった。
ハリガリ(Halli Galli / H.シェーファー / アミーゴ, 2002)
これぐらいシンプルでないと
目立った受賞はないものの、アミーゴ社の子どもゲームでロングセラーとなっているゲーム。ジュニアとかクリスマスとか、エクストリームとかシリーズにもなっている。
1枚ずつ自分の山札をめくっていって、何かの果物の数の合計がちょうど5つになったところで先にベルを叩いた人がカードをもらう。誰かのカードがなくなったときにカードの一番多い人が勝ち。それだけのシンプルなゲームだ。
大人がやると、一瞬で決着がつく。ベルはほぼ同時で、すごい勢いで出された手が重なるのでチーンという音もしない(ベチというようなつぶれた音)。大量にたまったカードを獲得して1位になったが、短時間で相当なエネルギーを使った。
パターン認識、早解きゲームにはエレメンタルズやスノルタなどがあるが、どうしても得意不得意がある。これぐらい問題が簡単だと、実力差がでなくていいなと思った。
ハニーロード(Schleck und weg !! / M.ルートヴィヒ / ツォッホ, 2002)
一蓮托生
蜂蜜を集めるクマさんの子どもゲーム。原題は「なめて、逃げろ!」という意味。ヴィラ・パレッティの翌年に発表された。ゲーム内容は見ての通り、鎖でつながれたクマさんを動かして、ハチミツとほかのクマさんを穴の中に落とすというゲームだ。広げただけでもう楽しい雰囲気が伝わってくる。
ダイスを振って、そのマークのエリアまでクマさんを引っ張る。鎖を引っ張る方向はある程度自由にできるが、引っ張られるクマさんの動きは必ずしも読みどおりに行かない。穴の寸前で踏みとどまったり、全く動かなかったりと、意外な動きが面白い。
ただ、ハチミツがほとんど1個ずつしか落ちないこと、ダイスで近くの目を出すとクマの移動ができず、6分の2の確率でパスになってしまうのが地味に感じられた。それでも仕掛け自体がユニークなので、十分盛り上がれる。
リラックマ ビバ!だらだらゲーム(Relakkuma Viva! Daradara Game / カネダコウタ/ イマ・エンターテイメント/ココロ, 2006)
カワイイじゃないですかー!
実は、水曜日の会でこのゲームの体験会が常時開設されている。また無料体験ゲームとして常設されてもいるので、秋葉原イエサブに行った方は遊んでみてはいかがだろう。
リラックマは、おかたづけがだいきらい。ボードの上にカードをどんどんちらかしてしまう。でも、がまんできなくなっておかたづけをしてしまったらマイナスポイント。おかたづけはじぶんでせず、おともだちにやってもらいましょうね。
……というテーマ。1からカードを並べて域、4のカードを出したときに、両どなりでお片付けポイントが少ないほうにカードを押し付ける。キイロイトリの段では手札の数字が一番大きい人に押し付け。そのほかイベントカードが少々。ゲームの最後には予め隠しておいた番号のカードを除外して、一番お片付けポイントの少ない人が勝ちとなる。
カードのイラストがかわいすぎて、勝敗よりもすっかりイラストに気を取られてしまったが、ゲームとしてもルールを抑え目にしてツボを押さえてあり、単なるキャラクター商品にとどまっていない。百田氏が手がけたミッキー・フレンズ5リンクスなどと同様、キャラクターものであっても内容のあるゲームが今後も期待される。→公式ページ
銀行強盗(Banküberfall / R.クニツィア / ピアトニク, 2006)
あけてビックリ!
ピアトニクが昨年のフリント船長の財宝に続いてリリースしたクニツィアのゲーム。現在のクニツィアは、幅広いジャンルで数多く発表しているだけに従来のファンから「クニツィア10人説」なども囁かれているが、今度も短時間ながら駆け引きとジレンマが楽しめるクニツィア魂が感じられる。
5件の銀行の前にカードを伏せて置いていく。カードの中身はお金と4種類のキャラクター。銀行強盗が起こったらカードを裏返して分配する。一番多くのお金を集めた人の勝ち。基本はそれだけ。
4種類のキャラクターは強盗の成否を分ける。まずセクシーガールがいると、ほかのキャラクターは悩殺されて全滅。でもセクシーガールが2人いると効果が消える。次に警官は強盗を未然に防いでしまう。そのとき強盗に参加しなかった人は報奨金。そしてあとは探偵と泥棒がいるが、その数を比べて多い方が活動する。探偵ならば分配方法が変わり、泥棒ならば全部持ち逃げされてしまう。強盗から泥棒するとはふてぇ奴だ。
さて強盗の分配方法だが、これがクニツィアらしい一種の競りになっている。奪いたい額だけコインを握って一斉公開。少ない額を握った人から銀行のお金を獲得していく。多く握りすぎるともらえなくなるかもしれないし、泥棒がいれば持ち逃げされてしまう。しかし少ない額でコソ泥を繰り返していてはトップになれず、いくらで強盗に参加するかは悩ましい。
カードは基本的に強盗が入るまで非公開だが、1枚だけこっそり盗み見たり、めくってしまったりもできる。その結果、銀行の内容がプレイヤーに断片的に知られていることになり、どの銀行を襲うかの選択に大きくかかわってきて、また面白い駆け引きがある。もちろん自分でカードを出した銀行は、それだけ中身を知っていることになり、強盗のときに握る金額を適正化しやすい。カードがたくさん並んだ銀行をキャラクターカードでめちゃめちゃにするか、自分だけの銀行を育てて手堅く稼ぐか。でも、基本は、開けてみてのお楽しみである。
ヤマをはった銀行が大当たりだったりして順調に儲けたが、最後の銀行で大量の預金額が発覚し、一か八か大金を握りこんだFRTSさんの逆転勝利。タナカマさんは警官の報奨金や泥棒を期待して0ビッドを何度かしたが、意外に警官がいなかった。
箱が大きい割にコンポーネントがあまり入っていないのでお得感は薄いが、さまざまな展開が予想され何度も遊んでみたくなる優れたゲームである。
ジャスト4ファン(Just 4 Fun / J.P-K.グルナウ / コスモス 2006)
その数字をひらめく
今年のドイツ年間ゲーム大賞にノミネートされた作品。作者のグルナウはもう長いことクラマーと組んだり、カードゲームを発表したりしているが、ノミネートは初である。子どもゲームも発表しており、今年は「ギロ・ギャロッポ」が年間子供ゲーム大賞にノミネートされている。
タイトルが示すとおり、4目並べである。4枚のカードを自由に組み合わせて1~36の数字を作り、そこに自分の色のコマを1コ置く。単独トップのマスが4マス、縦横斜めのいずれかに並べば勝利だ。
カードは1枚だけ出してもいいし、4枚全部出してもいい。補充はいつも4枚になるまで。マスは36まであるが、カードは19までしかないから、高い数字は必ず組み合わせて出さなければならない。
同じ数字を2回出せば、同じマスにコマを2コ置ける。こうして他の人と最多争いが始まるが、他の人より+2コ多く置いてしまえばそのマスはもう奪われず安泰となる。誰も置かないうちに2コ置いてしまえばそれでもう確保だ。
時間制限はルール上ないが、カードを見ながら全部の組み合わせを考えて長考するのはちょっと興醒め。カードとボードを眺めて、ひらめいた数字のところにポンポン置いていきたい。このひらめきが、このゲームの面白さなのだと思う。
しかし3つ並んであと1つでリーチということになれば、当然皆が邪魔しにやってくる。この段階では狙った数字が手札の中で作れるかが勝負で、カードの引き運にも左右されるだろう。
1回目は適当にコマを散らしていたらいきなりRaelさんが上がってあっさり終わってしまった。2回目はもう少し考えて、ダブルリーチになるような列を心がけていたが、タナカマさんのリーチを止めている間にケイさんが上がって終了。プレイ時間は20分とされているが、考える時間を長めにとっても15分もかからなかった。ノミネートされただけの面白さはあるが、コスモスの大箱にしては時間的にも、戦略的にもちょっと軽いという印象を持った。そのあたり、もう審査員はファミリーゲームを意識しているのだろう。これなら、子供からお年寄りまで家族で何度でも遊べそうだ。