山形ボードゲームクラブ 05/10/29
私にとっては唯一といってもよい所属サークル、山形ボードゲームクラブの例会に久しぶりに参加した。会場の天童までは長井から車で60km、1時間半ほどの道のりである。紅葉しはじめた山を越えてのドライブも楽しい。
今日の参加者は9名。私と同じく会場から60km圏の仙台組、80km圏の庄内組。同乗して来ている方もいるが、全員合わせると600kmも移動している計算になる。これが地方でボードゲームを遊ぶときの普通なのだ。15:00~21:00までたっぷり遊ぶ。
パイレーツ|アンコールワット|ヒマラヤ|むかつく友達、いきたくないパーティ|ホッサ
パイレーツ(Pirates! / R.クニツィア / ラベンスバーガー, 2005)
海賊は人様から奪うのが本性ですから
ゲーム内容はこちら。ダイスゲームはダイスだけを見ればもちろん運任せのゲームに違いないが、注意してみるとこのゲームにはクニツィアらしいタクティクス(短期戦略)がある。
ゲーム終盤、城砦はあと1つを残すのみとなった。この時点で1位は神尾さんだったが、全員僅差でひしめく。このゲームは決められた数の宝を城砦から奪って港に持ち帰った人が勝ちだが、例外として全部の城砦が落ちるとサドンデスとなり、港に持ち帰らなくても宝の一番多い人が勝ちとなる。つまり神尾さんが城砦を落とせばその瞬間に勝利というわけである。
しかし私は船にたくさんの宝を積んでいた。神尾さんが城砦を落とす前にこの宝を持ち帰れば私の勝利となる。残ったQTAさんとnagaさんは考えた。どちらを襲うべきか? よほど出目に恵まれない限り、1回の交戦で相手を倒すことはできない。そこで2人で寄ってたかって私の船を襲ってきた。近くにいた神尾さんも城砦をあきらめて私にかかってくる。
同じマスに4つの船が集まってボコスカやっているうちに、宝はnagaさんが落手して4人が横並びになった。ものすごいエキサイティングな展開だ。こうなれば残った1つの城砦を落とせば誰にでもチャンスがある。邪魔し邪魔されながら、城砦のあるマスに4つの船が集合した。最初に1を出した人が勝ちだ。「1出ろ、1!」結局、神尾さんに勝利の女神が微笑んだ。
この攻防で、誰に襲いかかるかを誤るとゲームは一瞬にして終わっていた。各船の戦力と移動力、位置、持っている宝の数を見極め、誰を叩かなければならないかよく見分けなかったらここまでエキサイティングな展開(グダグダともいう)にならなかっただろう。ただのダイスゲームと侮ってはいけない。
アンコールワット(Angkor / K.ハッペル / シュミット, 2005)
じわじわ広がる森の恐怖
成長著しい密林の中で、文化的な建物をつくっていくタイル配置ゲーム。今年のエッセンで発売されたばかりの新作が、日をおかずにメビウス頒布会で入手できるようになっている。
各人マイボードがあり、手持ちから2枚タイルを選んでボードの上に並べる。ここがあなたの街だ。寺院や王城は自分のボードにおいて街を広げ、一方邪魔な森林はほかの人のボードに置いて街の発展を妨げる。森林はボードの周囲から中央に向かって侵食していき、すでに建てた建物を飲み込んでしまう。森林の猛威たるや、あれよあれよという間に建物を潰してしまい、熱帯の東南アジアらしい。森林の侵食は、川タイルを置いて阻止しよう。
中盤からは泉や虎などのコマを置いて、ボーナス得点のチャンスを得ることができる。選択肢はあまりないが、どのタイル・どのコマをどこに置くか、森林はどこから侵食してくるのかまで予想しながら置くのはなかなか難しい。
しかしそれ以上に重要なのは、森林を誰のどの場所に置くかという選択だ。そのためには誰がトップ目なのかを綿密に調べておかなくてはならない。「○○さんが16点、△△さんは14点だけどあまり森がないからこれから発展しそうだな……よし△△さんのところに置こう。」森の攻勢に対しては、隣接する森が得点になる虎を置き、相手の攻撃を利用するという手もある。
タイルを引くときにお姫様タイルが出るときがあり、これが5枚出たら終了。だから終盤はサドンデスを恐れるプレイヤーの慌しい建築・邪魔合戦となる。
自分の街はあまり広げずに積極的にほかの人を邪魔に行く方法、先に川を敷き詰めて森が入れないようにしてから狭い敷地にゆっくり建設する方法、潰されるのを覚悟でどんどん広げていく方法など、手持ちのタイルに応じてさまざまな戦い方になる。だが、大逆転しにくいので、地道に1位を潰していくという流れにならざるを得ない。プレイ時間30分とあるが、そこまで考え込めば1時間級の重いゲームになるだろう。派手さはないが、よく練りこまれたゲームだと思う(写真撮影:muraさん)。
ヒマラヤ(Himalaya / R.ボネッセ / ティルシット, 2004)
信仰に厚く、仲間を持ち、お金もある人に
ヒマラヤの麓、チベット人たちの村を巡って使命を達成するゲーム。2002年に「帝国の商人(Merchantsof Empire)」としてフランス・ヘクサゲームズのホームページから無料配布され、フランスのトリックトラック賞で銅賞を獲得している。それから2年、舞台を大雪山に変えてティルシット出版からリメイク・製品化。今年のドイツ年間ゲーム大賞でドイツのフリークゲームを押しのけて5タイトルノミネートに入ったことで一気に注目度が上がった。
このゲームは「ロボラリー」や「ドラゴンデルタ」に見られる同時プロットというシステムを使っている。「氷の道→原材料を獲得→石の道→土の道→氷の道→使命の達成」というように移動と交易の順序を予め決めて一斉に公開、ひとつずつ処理していく。ボード上にいるのは自分だけではないから、思い通りにいくとは限らない。先回りされると何もできないまま終わってしまうことだってあるのだ。
だからほかの人はどこにいて、どの原材料をもっていて、どこに行こうとしているのかを予想しながら行動を決めなければならない。しかしそれは相手も同じこと。こっちに来るのか、あっちに行くのか?この読み合いがたまらない。
指定された原材料を集めて使命を達成すると、その村にストゥーパを建てたり、使節を置いて影響力を立てたり、お金を獲得したりできる。ストゥーパというのは日本の卒塔婆の語源になったもので、お釈迦様の遺骨のかけらを収めた仏塔。宗教力を表す。そして使節は政治力、お金は経済力を表し、最後の勝利条件に関わってくる。この勝利条件が特筆ものだ。
ゲームが終わると、まず宗教力(ストゥーパの数)を数えて、一番弱い人は脱落する。チベットの名士となるにはまず信仰に厚くなければならないのだ。次に、残った人で政治力(使節で制覇したエリアの数)を数えて、また一番弱い人が脱落する。最後に残った人で、初めてお金の勝負をする。つまり大金持ちでも、信仰がなかったり人的パワーがなかったりしては何にもならないということだ。日本人だって本当はそうでなくてはねぇ。
このスバラシイ勝利判定のため、プレイヤーの読み合いは終盤に向かってますます熱いものとなる。宗教力・政治力でビリにならないためにはストゥーパや使節があといくつ必要なのか、あるいは誰を蹴落とせばいいのか。宗教力・政治力はビリにならないようにだけ気をつけてできるだけケチり、その分お金を貯めたいのが本心。これがチベットの山奥で起こっているとは思えない、リアルなゲームだ。
ゲーム序盤、みんなが原材料がたくさんあるエリアに集まる中、離れた村からスタートしたのが幸いしてか行動が競合する場面が少なく、うまく立ち回ることができて1位。宗教力で脱落したmuraさん、政治力で脱落したQTAさんは悔しそう。ゲームは90分を超え、後半になるにつれて息の詰まるプロットが続いたが、所詮は相手の出方次第という面もあるのでガチガチな思考は要求されない。だから 終わったときに疲れがあまり残らず、そういう意味では重くないゲームだと思われた。
上級ルールでは道を封鎖してほかの人を足止めする「雪男」「吹雪」や、好きな原材料を取れる「市場」を入れたり、原材料をたくさんもっていると好きなところにストゥーパや使節を配置できるルールが加わり、選択の幅が増える。また、作者が公開しているヴァリアントでは20面ダイスの代わりに20枚のカード(表・裏…18枚しかないような気がするが)を使い、原材料や使命が全部の村に行き渡るようにしたり、3枚を表にして次に補充される村がわかるようにする(「クレタ」方式)ルールを入れれば、長期的な戦略も生まれるだろう。
むかつく友達、いきたくないパーティ(Fiese Freunde Fette Feten / F.フリーゼ、C-A.カサソラ/ 2Fシュピーレ, 2005)
こういう人生も悪くない……かも
日本で人生ゲームM&Aが発売された今年、ドイツではこれまでの人生ゲームの理念~お金持ちこそが幸せ~のアンチテーゼとなる人生ゲームが発売された。価値観が混迷する現代、人間の幸せとは何かを改めて考えさせる問題作である。
プレイヤーにははじめ5枚の「人生の目的カード」が配られる。それぞれの目的を達成するために必要な条件はタバコ、酒、ドラッグ、お金、病気、肥満、悲しみ、宗教、知恵、友人、セックス、結婚、子どものいずれか。例えば「ゲームデザイナー(写真左)」になりたかったら、知識3と友人3人が必要で、これを達成するとセックスすることができる(そう、デザイナーはモテモテだから)。「ゲームおたく(写真右)」になるには病気、悲しみ、宗教、肥満が各1と、友達4人が必要で、これを達成すると恋愛や結婚が破局する(!)。基本的にどの目的カードも、ダメな人生も究極まで行けば幸せになれるという点で共通する。
ゲームは思春期から始まる。思春期カードではいくつかのパラメーターを獲得できるが、どれを選び取るかでその後の人生を大きく左右するだろう。その後の人生では、人生カードに指定された条件を満たしては新しいパラメーターを獲得するという繰り返しで次第に人生の目的カードに近づいていく。
例えば「セックスマニア」(中央下)に至る方法をみてみよう。思春期で「ハードペッティング」(左上)を経験し、その後「コンドーム破れる」(右下)、「一夜の止まり木」(中央上)、「体を売る」(中央)、「精子泥棒」(右上)、「屋外シアター」(左下)などを獲得すればよい。しかし体を売るには肥満ではダメだし、一夜の止まり木をするには酒を飲んでいなくてはならない。「コンドーム破れる」や「屋外シアター」ではステディなパートナーが必要だ。条件を満たすためにはまた別の思春期カード、人生カードが必要となる。
人生カードは競りで集め、場札にほしいものがなくなった人から抜けてお金をもらうというのを繰り返す至ってシンプルなものだ。プレイヤー同士でパートナーになれば、「性病」などの人生カードが両者に適用されることもある。インタラクションを損なわずに最低限のシステムでゲームを機能させているのは、テーマに浸って会話を楽しんでもらうための配慮だろう。「○○さんはもう結婚してるんでしたっけ?」「……まだしてないです!」「△△さん、セックスしましょうか?」「ええーっ!?」
人生の目的カードの難易度はばらばらで、またカードのめぐり合わせで結果が大きく左右されるため、運の要素は大きい。ゲーマーが黙々と遊んでいたのではこのゲームの面白さは全く引き出されないだろう。初対面同士で遊ぶのも気恥ずかしい。ジョークや下ネタがそこそこOKで、気心も知れた仲間内で遊ぶのがよいと思う。
光の翼さんがnagaさんと結婚していながら次々といろんな女の子とセックスしている。「キーッ、私という妻をもちながら!」両親の離婚から始まった私は悲しみをどんどん募らせる人生。最後はニヒル路線を歩んだStさんが「セックス、ドラッグ、ロックンロール」で5つの目的を揃え、勝利。別のゲームを遊んでいた隣の卓は、ゲーム中の会話が気になって気になってしかたないようだった。セックスセックス言ってたからなぁ……
ホッサ(Hossa! / A.マイヤー / ビーウィッチド・シュピーレ, 2000)
♪歌うたーえー♪
カードに指定されたキーワードが入った歌を歌うパーティーゲーム。「愛」「嘘」「春」「赤い」「危険」などがあり、タイトルだけ言えれば1点、それを歌えれば2点、歌詞に含まれている歌を歌えれば4点となり、さらに一緒に歌えた人も1点もらえる。世代・趣味がある程度共通していないと厳しいものがあるかもしれないが、思わぬ珍曲が出てきたりして、笑いには事欠かなかった。歌うのが不得意・恥ずかしいという人には向かないので、飲みながら遊ぶのがよいかもしれない。