大学時代のサークルの友人を招いて歓談。のつもりが、2時間くらいすぎてひととおり近況を報告し終わると「じゃあ、ゲームかな」。もっと話し込めばいろいろ面白い話も出てきたのだろうが、ゲームからお互いの考えが明らかになることもある。ゲームはあまり遊ばないメンバーなのでカードゲームを中心に軽いものを次々と投入。だがみなさん頭の回転が速く、引き締まったゲーム会となった。軽いゲームでも、気合を入れてやればしっかり遊べるというよい教訓。
ぼろ儲けカンパニー|バーゲンセール|ヒット|クライネフィッシュ|タイムイズマネー|カヤナック|アップルズトゥアップルズ
ぼろ儲けカンパニー(Reibach & Co./M.Ado&A.R.Moon/F.X.Schmid,1996)
他社より多く事業を展開してお金を儲けるカードゲーム。ムーンがエルフェンランドで大賞を受賞する前に出していたゲームで、1996年の大賞ノミネート、ゲーム賞5位、カード賞2位という輝かしい実績を残しました。国内では「ライバッハ・コー」「レイバッハ・コー」というタイトルもあります。
事業は10種類あり、手札からカードを出して自分の前に並べていきます。決算のとき、ほかのプレイヤーが誰もやっていない事業(独占)ならば4ミリオン、ほかにやっていれば最多カードで3ミリオン、2位で1ミリオン入ります。ひとつの事業を大きく伸ばして他社の追随を許さないようにするか、それとも広く浅く展開して薄利多売でいくかが考えどころです。
手番にはオープンの場札から取る、山札から取る、手札から出すのいずれかを、自由な組み合わせて3回できます。ただし山札から取るのは2回分です。いわゆる「アクションポイント制」というシステムで、その後にこれを採用したゲームはたくさんあります。誰が何を手札にもっているかある程度予想して自分の事業を決めるのがポイントになるので、非公開の山札から取るのはいくらか有利でしょう。
事業の最初にはビジネスマンを置かなければなりません。カードを1枚、全員に見せたあと裏にして置きます。このビジネスマンがカードのカウンティングを難しくしており、よくできています。そのほか、どの事業にも置けるジョーカー「マルチタレント」と、それ以上カードを増やせなくなるけれども収入があれば2倍になる「リスクカード」も、ゲームに豊かな展開をもたらします。
場札を取れば山札から新しい場札が補充され、山札はだんだんなくなっていきます。山札の中に「ぼろ儲けカード」が10枚隠れており、4枚目で1回目の決算、7枚目で2回目の決算、10枚目で3回目の決算があってゲーム終了となります。つまり、どこで決算が起こるか予測できません。事業を継続するか、決算に備えて収めておくかか、決断を迫られます。特に最後は、残った手札が罰金になるのでハラハラものです。
1回目の決算でかぶっていた内田君と西山君は最後まで尾を引きました。リスクカード2枚を終盤に置いて1位の収益を2倍にできた私の勝利。1枚ぐらいで手広く事業を展開した野口君はほかと食い合って及ばず。内田君はリスクカードに恵まれませんでした。カードゲームなので引き運が勝負を左右するのは当然ですが、それでもその場その場の選択が勝敗を大きく分けたようです。
バーゲンセール(Wuehltisch/T.Gimmler/Ravensburger,2002)
買い物カードに書かれた通りのシャツを山から探し出すカードゲーム。熱いバーゲンセールの争いをそのままに再現したほかに類を見ないゲームです。
各人に3枚ずつ渡される買い物カードにはサイズ、色、柄、半袖か長袖かから3つの条件が指定されています。1枚目のカードをめくったら同時スタート。裏向きのままバラバラに積まれた山からお目当てのシャツを探します。
片手だけで、1枚ずつめくっては戻し、戻してはめくって条件に合うシャツを3枚集めます。しかも3枚合計で80ユーロ以下にしなければなりません(3枚全部80ユーロというブランド・トリオもOK)。ここでこのゲームを面白くしているポイントは、
「3枚のうち、条件が2つまでは外れていてもよい」
というものです。すなわち右の写真でいうと、一番左のシャツは色が違いますが条件が違うのはこれ1つだけなのでOKなのです。全部の条件を満たすシャツを探さなければいけないゲームなら却って簡単でしょう。このファジーさがゲームを手ごわく、また面白くしています。
3枚集めたら次の買い物カードをめくって、次の3枚を集めます。それが終わったらまた3枚。合計9枚のお買い物を終えたら、終了を宣言します。そこで全員やめて、点数計算に入ります。早く上がるには、めくったカードをすばやく判断し、次々と処理することが必要です。
早く上がるとボーナスがありますが、値段が高い・条件が3つ以上外れているものがあるとチョンボで全部パーです。全部の条件が合っていたり、ブランドトリオを作ったりしてもボーナスがあります。4回行って得点の高い人の勝ちです。
山札には得点になる落し物が入っていたりして、全くガチガチにはなりません。それでも、小学生の頃やった知能テストのようなスリルがあります。唯一理系の野口君が怒涛のスピードで勝利。回数を重ねるにつけ、頭の中にスキーマ(判断の枠組み)が形成されていく感覚がとても刺激的でした。テーマはバカそうですが、内容は決してバカではありません。
ヒット(Hit/M.Yanai/Cronus Crown, 2003)
ヒットマンを潜伏させて通りかかったマフィアの幹部を暗殺するゲーム。今年のゲームマーケットからクロノスクラウンで発売されている国産カードゲームです。
はじめ各プレイヤーは0~99の地点にヒットマンを隠します。そして次にランダムに決められた地点から幹部を動かしていきます。移動は±2、±3、±10、R(1の位と10の位を逆)の4種類で、幹部はヒットマンが隠れている0~99の地点をあっちに行ったり、こっちに行ったりします。
ヒットマンが隠れている地点に幹部が入ったとき暗殺が行われ、ヒットマンのプレイヤーには構成員(プラスポイント)が入ります。各プレイヤーヒットマンを増員し、今度はそこから次の幹部が移動を始めます。誰かが5人暗殺したところでゲーム終了となり、構成員の最も多いプレイヤーが勝ちです。
移動用の手札は全員に見えるので、できるだけ自分のヒットマンが隠れているポイント近くに幹部が来るよう、誘導します。1歩移動するごとに殺されるのではないかとドキドキものです。
オリジナリティに富んだ優れたカードゲームですが、説明を切り詰めたルールブックを正しく理解するのに時間がかかりました。暗殺用の手札・移動用の手札という2種類の手札の使い分けと、移動の制限がよくのみこめず、正しいルールでプレイできたのは終盤になってから。再挑戦希望です。
クライネフィッシュ(Kleine Fische/P.Neugebauer/Goldsieber,1997)
どでかい魚をたくさん捕まえるカードゲーム。
カードは好きなだけめくることができます。ただし同じ種類の魚が出てしまったらバーストし、その分はもらえません。あとはタコが出たらほかのプレイヤーからカードを奪うチャンスです。プレイヤーを指名し、数を言ってダイスを振り、言った数以下ならばその枚数を奪えます。最後にそれぞれの種類ごとに一番大きい魚の点数を合計し、一番多い人が勝ちです。
どでかい魚が出てきたときのよろこび、タコのダイスで「-1」が出てしまい逆にカードを奪われるときのくやしさ、そして何よりも度胸を出してもう1枚カードをめくるかどうかの選択…余計なものを削ぎ落としてカードゲームの面白さを凝縮しています。
かつては頻繁に遊んでいたゲームですが、今見ると驚くほど単純です。♪い~ま~に比べ~りゃ…という歌を思い出しました。初心者と遊ぶときに初心にかえれるという意味で、昔よく遊んでいたゲームを掘り返してみるのは大事なことだと思います。
タイムイズマネー(Time is Money/Unknown/Ravensburger, 2003)
体内時間が試されるゲーム。2回目(1回目はこちら)。しびれます。
♪=60(1分間に60拍)で10拍…音楽経験者が集まったというのもあってか、ほとんど±1秒に収めるという驚異的な展開。マジックのようです。後半はみんな「(すごい速さで)5,4,3,2,1,0!」とか撹乱作戦に出たのですが惑わされたのは妻くらいでした。
そうなると時間の要素は陰に隠れ、「+」と「60」をいくら出していたかと、いかにテキパキと仕事をしたかという勝負になりました。買ったのは事務処理能力の高さを表したお役所勤めの内田君。
二番煎じが多い昨今、シンプルでありながらオリジナリティーを開花させたこのようなゲームは大歓迎です。
カヤナック(Kayanak/P-P.Joopen/Haba,1998)
イヌイットをテーマにしたボードに実際に穴をあけて磁石で魚を釣るゲーム。1998年の年間大賞子供ゲーム特別賞を受賞しました。
ボードは2枚組みになっており、間に薄い紙をはさみます。箱に魚(銀の玉)を入れ、ボードをセットしたら準備完了です。
ダイスを振って、イヌイットを移動し、周囲に穴をあけ、釣り糸を垂らします。誰かが15匹釣ったらゲーム終了で、大きい魚2点、小さい魚1点として釣った魚の得点が多い人の勝ちです。
単純ながら紙に穴を空けるという非日常感、釣り糸を垂らして「カチッ」という音とともに魚が釣れてきたときの快感は大人の心をも捉えます。さらには魚の分布に偏りがあるので悪い漁場に見切りをつけるタイミングをはかることや、ほかのプレイヤーの穴を塞いだり横取りしたりするために釣りが終わった穴かどうか記憶しておくことが必要で、戦略的な要素もしっかりあります。
ゲームは大魚をがんがん釣り上げた西山君が1位。漁場に恵まれなかった内田君は、同じ穴に3回も釣り糸を垂らしてみたり、そうしたら3回目になぜか1匹釣れてきたりといったドラマがありました。終始笑いに包まれ、全員が口をそろえて今日一番面白かったゲームと言っていました。