埼玉の妻の実家にてゲーム会。友あり遠方より来る。後輩のY君は広島県の福山から、そして鷹村ナクトさんは神奈川県の藤沢から、かゆかゆさんは東京から。Y君は大学生時代に毎週のように徹夜で遊んでいたゲーム仲間のひとりで、福山勤務になってから初めての登場。Y君いわく、「久しぶりに頭を使った。」 実際のところ、同じゲームを1日に何度も遊んでいた数年前と比べると回転が速い。鷹村さんとかゆかゆさんのルール説明は的確・迅速で、その分だけ無駄な時間が省かれ、密度が濃くなる。ゲームはすればするほどある種のスキルが上がっていくような気がした。そのスキルが実生活に役立つかはわからないが。
プエブロ|ラッキー5|ダークサイド|ジャンク|ドミンゴ|ポートロイヤル|カナンの開拓者
プエブロ(Pueblo/W.Kramer&M.Kiesling/Ravensburger 2002)
不思議なかたちの建材で建物を作るゲーム。今年のニュルンベルクでラベンスバーガーが前触れもなくいきなり発表した作品です。年間ゲーム大賞には惜しくもノミネートされませんでしたが、ドイツゲーム賞で8位に入賞しました。オーストリアでは2年目のオーストリア・ゲーム大賞「ゲーム・オブゲームズ」に選ばれています(1年目は「ニューエントデッカー」)。
作者のクラマー&キースリングはティカル以来、ラベンスバーガーから大賞級のゲームを発表してきました。「ティカル」「トーレス」「ジャワ」「メキシカ」。今回の「プエブロ」は、「トーレス」の立体化を継承しながら、アクションポイント分配制というシステムをとらずにシンプルにした新境地と言えるでしょう。
手番には積み木を取ってボードに置き、酋長コマを進めるだけ。たった2つのアクションです。驚くほどシンプルで、説明にも時間がかかりません。しかしゲームが始まると、どこに積み木を置くか、酋長コマを何マス進めるかで大いに考えることになります。
酋長は自分が止まったマスから建物を見ます。酋長から見えるところに自分の色の積み木があると、その分だけマイナスポイントを喰らってしまいます。したがってできるだけ他プレイヤーの陰に隠れるようにするか、中立の色の積み木(肌色)で自分の積み木を隠すかしなければなりません。
なお、四隅のマスに酋長が止まると、酋長はいきなりジャンプアップして建物の4分の1を、なんと上から見ます。横からも上からも見えないようにするのは、もはや不可能なこと。酋長が回ってくる前に少しでも自分の色を隠して、マイナスポイントをどれだけ最小限に食い止めるかということになります。
マイナスポイントが甚大なのは、横から見られたときよりも上から見られたときです。そこで上を隠そうとすると建物がどんどん積み上がって高層化していき、今度は横からのマイナスポイントが大きくなってきます。あちら立てればこちらが立たず。焦りながら最良の一手を見つけるのは、なかなか容易なことではありません。
プラスポイントがないのでストレスがたまりますが、実に味わい深いゲームです。先手後手の有利不利を解消するヴァリアントルール、積み木を置ける場所を制限したり、いったん建てた積み木を取り除きながら続行する上級者ルールなども用意されており、飽きの来ない設計がなされていると思います。ゲームは持ち主の鷹村さんが一日の長を生かして勝利。詰め将棋のように頭を使って最適解を出すという要素もありますが、実際やってみると相手によって戦略が変わるので経験・未経験の差はあまりでにくいように思われました。もうひとつの「プ」―プエルトリコと並んで、今年の一押しゲームです。
ラッキー5(Lucky 5/H.Meister/FX Schmid 1998)
ダイスの目を予想して点数を稼ぐゲーム。子供ゲームの王様ハインツ・マイスターが発表した数少ない大人向きのゲームです。
手番にカードをめくると、何色のダイスを振るかが指定されています。振った後の目が、振る前の目より大きくなるか小さくなるかを予想してチップをかけ、ダイスを振ります。
たとえば黄色のダイスのみが指定されていて、黄色のダイスがそのとき1だったとします。「大きくなる」と予想すれば、1以外を出せば正解です。確率は6分の5。これは楽勝と言えます。
しかし3個のダイスが指定されていて、合計が10だったとしましょう。これだと「大きくなる」も「小さくなる」も確率はほぼ同じです。こうなったら一か八か、気合をダイスを振ることになります。
正解すれば、さらにカードをめくってチャレンジすることができます。カードをめくるほどレートはどんどん上がりますが、途中で失敗してしまうとそれまでのポイントはおじゃんになってしまいます。限りあるチップの中でどこでやめるか、なかなかエキサイティングです。
さらにラッキー5カードというのがあって、チップ×5倍という高いレートで勝負することができます。当然予想は確率を考えて行うことになりますが、あえて確率を無視して成功したときなどの喜びは大きいでしょう(確率を無視するのは無謀かもしれませんが)。
ラッキー5カードが全く出てこない展開の中、「チキン野郎ですから。」と言いながらいいタイミングで撤退し続けたかゆかゆさんが点数を重ねて勝利。
ダークサイド(Dark Side/R.Knizia/Clementoni 2001)
家族・友人・近所・仕事・余暇の5つのカテゴリーにわたって自分の恥部を知られないようにしながら相手の恥部を暴露しあうゲーム。日本ではまだほとんど知られていないメーカー、クレメントーニがクニツィアというビッグデザイナーを擁して作ったゲームです。
恥部といっても、リアルな意味での恥部ではありません。誰だって人に言えないことのひとつやふたつ、あるものです。それを暴露しあうような残酷ゲームではありません。
それでは何かというと、最初に配られる15枚のシークレットカードに書かれた恥部のことです。「私はプールでおしっこをします」といった可愛らしい(?)ものから、「私は伯父さんの遺産を相続するために遺言書を偽造しました」というような明らかな犯罪まで、さまざまです。
最初に配られたカードのうち、合計点数の最も高い(=恥部の最も多い)カテゴリーがそのプレイヤーの「ダークサイド」となります。ゲームは他プレイヤーの「ダークサイド」は何か当てることが大きな目標となります。
手番には他プレイヤーに何枚かシークレットカードを公開させたり、自分で公開したりします。カードの公開によって点数が入りますが、その分ダークサイドがばれる危険性が高まります。中には、ブラフを使って正直に申告せずに点数を稼ぐというパターンもあります。
だんだんと他プレイヤーの手札が読めてきたら、自分の手番に「○○さん、あなたのダークサイドは××でしょう?」と告発します。告発は成功すれば大きな点数が入りますが、間違っていればマイナス点になります。したがってよく見極めないとなかなか告発に踏み切ることができません。さらに、告発されたプレイヤーが法廷で争うと言い出した場合、リスクがもっと大きくなります。告発を撤回するチャンスがあって、撤回せずに法廷に出た場合には、成功すればもっと点数が入りますが、間違っていればマイナスが大きくなります。
ダークサイドがばれたプレイヤーはいったん勝敗から脱落します。ゲーム終了時にダークサイドのばれていないプレイヤーがいれば、点数に関わらずそのプレイヤーの勝ちになります(複数いる場合には点数勝負ですが)。全員のダークサイドがばれたときだけ、再び点数勝負になるのです。ですから、ダークサイドがばれてしまったら、ひたすら他のプレイヤーのダークサイドを暴くことに努めなければなりません。
最初にかゆかゆさんが集中砲火を浴びて、得点がトップのままダークサイド発覚。手札が偏っていたのでばればれでした。続いてY君、私とどんどんダークサイド発覚。最後に1人生き残った鷹村さんを告発する最後のチャンスで私が2択をミスってしまい、鷹村さんのひとり勝ちで勝利。記憶力がちょっと甘かったのが響きました。
自分の手札の状況や、しだいに明かされていく他プレイヤーの手札をてがかりに推理していくのがとても楽しいゲームです。ボードがついていますが本質的にカードゲームです。ボードは単なる得点ボードで、「これだったらもっと箱を小さくしてカードゲームとして売ってほしいな」と思いました。
ジャンク(Dschunke/M.Schacht/Queen Games 2002)
中国の商船を行き来しながらお金を儲けるゲーム。「王と枢機卿」のミヒャエル・シャハトの新作で、今年のドイツ年間ゲーム大賞ノミネート、ドイツゲーム賞3位という好成績を収めています。
このゲームの特長は、「ジェンガ式に組む荷物」と「一斉に公開する競り」の2点にあります。目標はお金を儲けることですが、儲ける手段がいくつかあって、初回プレイではなかなか把握できません。大まかな流れとしては「ジェンガ式に組む荷物」をたくさん積み、それによって得られる利益で「一斉に公開する競り」を有利に進めるということになります。
「ジェンガ式に積む荷物」というのは、3コ一組の板を船に載せていくもので、横に3枚並べたら、2段目は縦に3枚並べていきます。上の段が増えると、下の段はだんだん隠れていきます。他のプレイヤーがどんどん荷物を積んでいくと、自分の荷物はだんだん減っていくというわけです。この「だんだん減っていく」というのがポイントで、どのタイミングで新しい荷物を積んで勢力を回復するかが勘所になります。荷物が多ければお金や商品カード(魚、なす、香辛料、米)がたくさん得られるようになります。
「一斉に公開する競り」は、商品カードを手で握り、一斉に表向きにして、各商品につき一番多くカードを出した人がお金やスペシャルカードをもらえるというものです。各ラウンド商品によって相場が変わり、どの商品が狙い目かは読み合いとなります。手札と場札の状況を見ながら、また他プレイヤーの手持ちを予想しながら、ときには裏をかいてカードをビッドします。一番多くなかったプレイヤーは、何ももらえずにそのカードを捨て札にするのでシビアな競りです。
スペシャルカードは商品カードの補充を有利にしたり、追加アクションを行ったり、ゲームの最後に条件を満たせばボーナスになったりとさまざまです。商品カードの補充を有利にするカードは、獲得してからずっと有効なのでできるだけ序盤に求めたいものです。
ゲームの進行は、手番プレイヤーから順番に「荷物を積む」「商品をもらう」「お金をもらう」から1つずつアクションを選びます。前のプレイヤーが選んだアクションは選べません。ですから、トッププレイヤーが儲からないようにアクションを先取りするなど、他のプレイヤーの出方を読みながら選んでいくことになります。さらに、次のラウンド、その次のラウンドで選べるアクションも予め分かっているので、先の先を読んでアクションを選択していくということも大事です。
ゲームの途中で全プレイヤー持ち金の公開があり、トッププレイヤーやそこからの差がわかるようになっています。このあたりも、とても戦略的にゲームを進めることが求められているようです。
ゲームは鷹村さんが荷物7の船から連続してお金をもらって引き離しました。後を追う私も必死に小金を貯めましたが及ばず。商品カードを集めてから金儲けにという順序で戦略を立てたかゆかゆさんは、競りの大商いに敗れて4位でした。目を「」にしてお金に貪欲にならないと勝てないゲームです。いたるところに漢字が書かれたコンポーネントはとてもいい感じです。
ドミンゴ(Domingo/Unknown/Lay up 2002)
気分転換に発売されたばかりの国産の新作カードゲームをプレイ。4枚の手札の中で、同じ数字のカード3枚(スリーカード)を揃えて公開していくお手軽カードゲーム。
手番には山札か場札から1枚カードを引き、代わりにいらないカードを捨てます。スリーカードができたら公開して、次のスリーカードをめざします。誰かがスリーカードを3組さらせばゲーム終了。これに「誰かからカードを取る」「場札を流す」「捨て札を流す」という3つのアクションカードが3枚あります。
雰囲気としては早上がり麻雀に近いと思います。鷹村さんは捨て札と同じ数字を次に引いてしまう「カブリ」状態でふるわず。Y君が「一発ツモ」で2組揃え、「シャンポン待ち」から鷹村さんの捨て札をゲットして1位。
ゲーム時間も10分ほど。今日の他のラインナップと比べると軽すぎて印象が薄かったですが、ルールが多いのを嫌う方や、ちょっとした時間にも遊べるという点で重宝しそうです。
ポートロイヤル(Port Royal/W.Panning/Queen Games 1999)
戦利品をできるだけたくさん海賊船に積み込むゲーム。2000年の年間ゲーム大賞ノミネート作品。
ゲームの柱はトリックテイキングです。4色の海賊カードで戦利品を奪い合います。海賊カードが配られ、戦利品が並べられるとまず、リードプレイヤーを競りで決めます。
リードプレイヤーは「手札を交換する」「切り札の色を決める」「スタートプレイヤーを決める」という役割があり、そのラウンドを有利に進めることができます。しかし競りのためには借金しなければならず、戦利品から差し引かれますので、手札や場の戦利品カードを見ながら、リードプレイヤーを狙うかどうか決めます。
スタートプレイヤーが最初の戦利品を選んだらトリックテイキングが始まります。戦利品を取ったプレイヤーは自分の船に積み込み、次の戦利品を選びます。こうして8つの戦利品が取られたら1ラウンド終了です。海賊カードを配りなおし、次の戦利品を並べて次のラウンドを始めます。なお、前のラウンドで残った戦利品にはおまけの「捕虜」(プラス点)が付きます。
さて、ここからがこのゲームの要です。船には最大積載量があり、それを超えると沈んでしまうのです。ですから、力まかせに好きなだけ取ればいいというものではありません。時には小さい戦利品を取って調整したり、またもういっぱいいっぱいのプレイヤーにわざと取らせて沈ませたりと、慎重な戦い方が要求されます。戦利品の中には、最大積載量を増やしたり、荷物を減らすカードがあって、それで調整することもできます。
6ラウンド終了時に沈んでいない船の戦利品を合計し、そこから借金を引いて一番たくさん戦利品を持っているプレイヤーが勝ちです。
今回は序盤からできるだけ取らないという方針を立てていたかゆかゆさんが、リードプレイヤーのための借金もせず、ときどきちょっとずつ集めるという巧妙な戦い方で1位。鷹村さんの船はずぶずぶ沈みました。最大積載量をつねに気にしながらトリックテイキングを行うのはとても頭を使いますが、トリックテイキングを知り抜いたドイツのゲーム界だからこそ出たゲームなのだなと思います。
カナンの開拓者(Settlers of Canaan/Unknown/Cactus 2002)
エルサレムを舞台にした開拓のゲーム。アメリカ製。トイバーやコスモスには断って出しているようです。
基本は歴史シナリオ1の「クフ王」を踏襲しています。ピラミッドではなくエルサレムの石を建築して手柄を立てます。「最大エルサレムの石建築」で2勝利ポイント。
発展カードの中にはいろいろなカードが入っています。なかにはどう考えても「小麦・羊・鉄」を出した甲斐のないハズレカードがあり、このあたりはアメリカンゲームだなと思いました。その分勝利ポイントカードがの比率が低いので、発展カードにうまみがありません。
しかしながら、マップは広くて資源も豊富。6,8の地形多めで、砂金川もあります。したがって、エルサレムの石や発展カードなしでも、豊富な資源を背景に広いマップに開拓地と都市をどんどん建てていけば目標の12点に届きます。特に終盤は、1回で資源カードが7枚も8枚も一気に手に入る場面が多くなり、ひたすらカードの整理に追われます。いちおう、エルサレムの石の置き場所28個が埋まれば途中で終了というルールがあり、その28個は7が出るたびに1つずつ減っていくのですが、これが埋まることはとてもとてもなさそうでした。みんなエルサレムから離れたところで好き放題、開拓します。
かゆかゆさんが都市と開拓地だけで12ポイント揃えて勝利。最長交易路、最大騎士力、エルサレムの石の影が薄いように感じました。