エッセン・ザ・ゲーム(ESSEN The Game: SPIEL’13)
我を忘れてお買い物
世界最大級のボードゲームメッセ「シュピール」。毎年10月に、ドイツ・エッセンで行われ、15万人の愛好者が訪れる。ここで世界中の出版社から発表される新作は852タイトル(2013年)にものぼり、しかもゲーマー向けのものが多いので、愛好者にとっては楽園のようなメッセだ。日本人も毎年たくさん参加しており、ヤポンブランドのように毎年出展しているところもある。
このメッセを描いたボードゲームが『エッセン・ザ・ゲーム』。今年ベルギーでリリースされ、6月からキックスターターで注文を受け付けることになっている(本レポートは、レビュー用の試作品に基づく)。デザインは『ブリュッセル1893』のE.エスプレマンなど3名。アクションポイントを使って、広い会場を回りお買い物をしてくるという内容で、登場するゲームは2013年のシュピールで実際にリリースされたものばかり。欲しいゲームがありすぎて買いきれないというゲーマーの嬉しい悲鳴を、見事にゲーム化している。
ゲームは7ラウンドにわたって行われ、毎ラウンド、ボードゲームが会場に到着する。そしてこのラウンドのトレンド(タイプによって得点補正)と、混んでいるエリアが発表される。各プレイヤーはウィッシュリストと軍資金をもって駐車場からゲームスタート。がっつり買うぞ!
手番はアクションポイント制で、ほしいボードゲームが置いてあるブースまで移動し、お金を払って購入すると得点になる。購入したボードゲームはマイボードのカートに置き、買えば買うほどアクションポイントが少なくなっていく仕組み。最初は8アクションポイントあるが、6つ購入すると残りは2アクションポイント。毎ラウンド、2マスずつしか移動できなくなってしまう。お、重い!
そうなる前に、適当なところで駐車場まで戻ろう。車に積むとアクションポイントは回復する。また駐車場にはATMがあり、得点を換金できる。2勝利点で50ユーロ。何ユーロ引き出してもよいが、ゲームが終わる前に買えるくらいにしておこう。
3ラウンドが終わると、午前中の人気ゲームランキングの決算が行われる。ランキングを発表するのはフェアプレイ、ボードゲームギーク、トリックトラックで、指定されたタイプのゲームを揃えていれば得点になる。このランキングは最初から分かっているので、ウィッシュリストと見比べつつ、計画的に購入していきたい。
最後は、入口付近が混雑して移動しにくくなる(1マス移動するのに2アクションポイント)ので、その前に退散しておくと、ボーナス得点がもらえる。7ラウンドの後、午後のランキングとウィッシュリストの達成による得点が入り、最終得点の多寡を競う。
4人ゲームで約1時間。ウィッシュリストで狙っていたゲームをいきなり買われる。「えっ、それ欲しいんですか?」「近くに売ってたもんですから」「・・・!」奥の方のブースにアクションポイントをかけて行くよりも、手前の方から買ったほうが早い。そのため、目につくものから手当たり次第に買ってしまうという浮かれゲーマーに。そしてカートはいっぱい、しかも混雑して駐車場に戻れない。これがシュピールの魔力というものか。駐車場から会場へ行って戻ってくるまで2~3ラウンドかかるため、7ラウンドというのは短かい。
手当たり次第に買って勝てるわけがなかった。少し奥まで足を伸ばしてでもウィッシュリストやランキングのゲームを丹念に揃えたBumiさんが勝利。でも本物の箱絵を使っているだけに「うわっ、カヴェルナだ!」「ローズ&ボーツ、ほしい!」などと浮かれてしまって正気でいられなかったのは、本当にシュピールの体験をシミュレートしていると思う。愛好者が最高に幸せになれるボードゲーム。ゲームマーケット版もあったらいいなと思う。
ESSEN The Game: SPIEL’13
F.ベギン、F.デルポルテ、E.エスプレマン/自費出版(2014)
2~4人用/10歳以上/30~60分
ドイツ年間ゲーム大賞2014ノミネート
メインである年間大賞(赤)にノミネートされたのは、ダイスレースの『キャメルアップ』、セットコレクションゲーム『宝石の煌き』、コミュニケーションゲーム『コンセプト』。小箱が2タイトルだった昨年から転じて、大箱の作品が選ばれている。また推薦リストには、予想一番人気だった『ラブレター』など5タイトルが入った。
選考委員のT.フェルバー氏は、今年はテーマもシステムも多様でトレンドがなかったとしつつも、幅広い好み、要望、グループ、年齢に対応する作品を選んだという。特にノミネートされた『キャメルアップ』と『コンセプト』、推薦リストの『ブラッドバウンド』の3タイトルは多人数に対応させている。昨年の大賞『花火』のような小箱は、推薦リストに3タイトル入れることで幅広さをもたせた。
4年目となるエキスパートゲーム大賞(灰色)のノミネートは、古代ローマの開拓ゲーム『コンコルディア』、中世の商売ゲーム『イスタンブール』、中世フランスの衣装作りゲーム『ロココの仕立屋』が選ばれた。フェルバー氏は、新しいテーマの作品を作ることがまだまだ可能であることを示したとしている。推薦リストには、昨年の2タイトル、一昨年の3タイトルを超える過去最多の4タイトルが入った。
今回の年間大賞、エキスパートゲーム大賞は、ラベンスバーガー、コスモス、ハンス・イム・グリュック、アミーゴ、ツォッホなどのドイツの老舗出版社が全くノミネートされず、新興出版社や、海外出版社のドイツ語版が選ばれている。年間大賞のノミネート2タイトルはフランスの作品となった。「新鮮な衝撃を求めて、審査員はしばしば古典的なドイツの出版社以外を探します。でもドイツの編集者たちも、できるだけ国際化を考慮して、ドイツ語圏以外にも理解されるタイトルをよく選んでいます」とフェルバー氏は述べ、ドイツゲーム以外を評価する姿勢を見せている。
年間ゲーム大賞から半ば独立しているキッズゲーム大賞(青)は、ネコに追いかけられるレースゲーム『フリッツ&ミーツ』、お化け屋敷の宝探しゲーム『幽霊、幽霊、宝探し』、騎士のタイル配置ゲーム『リヒャルト・リッターシュラーク』がノミネートされ、推薦リストには7タイトルが挙げられた。
【年間ゲーム大賞(Spiel des Jahres)ノミネート】
キャメルアップ(Camel Up / S.ボーゲン / エッガートシュピーレ)
宝石の煌き(Splendor / M.アンドレ / スペースカウボーイズ)
コンセプト(Concept / G.ブージャノ、A.リボル / ルポ・プロドゥクシオン)
推薦リスト:ひつじいっぱい(Voll Schaf)、SOSタイタニック、ラブレター、ポテトマン、サンスーシ
・Kategorie: Spiel des Jahres 2014
【年間エキスパートゲーム大賞(Kennerspiel des Jahres)ノミネート】
コンコルディア(Concordia / M.ゲルツ / PD出版)
イスタンブール(Istanbul / R.ドーン / ペガサスシュピーレ)
ロココの仕立屋(Rokoko / M.クラマー、M.マルツ、S.マルツ / エッガートシュピーレ)
推薦リスト:ギルドマスター、アメリゴ(Amerigo)、ロシアンレールロード、ブラッドバウンド
・Kategorie: Kennerspiel des Jahres 2014
【年間キッズゲーム大賞(Kinderspiel des Jahres)ノミネート】
リヒャルト・リッターシュラーク(Richard Ritterschlag / J.ツィルム / ハバ)
フリッツ&ミーツ(Flizz & Miez / K.フランツ、H.ギルケ、D.ユー / カレラ・テーブルトップゲームズ)
幽霊、幽霊、宝探し(Geister, Geister, Schatzsuchmeister! / B.ユー / マテルゲームズ)
推薦リスト:私はどの動物でしょう?(Welches Tier bin ich?)、ゲームオーバー(Game over)、おばけの時間のこわい仲間(Gruselrunde zur Geisterstunde)、スピードカップス、綱を引っ張れフリン!(Zieh Leine, Flynn!)、おどろいたベーコンが吹っ飛んだ!(Oh Schreck, der Speck fliegt weg!)、ファイヤードラゴン(Feuerdrachen)
・Kategorie: Kinderspiel des Jahres 2014
【国内販売状況】
ホビージャパン取り扱い:キャメルアップ、宝石の煌き、コンセプト(日本語版予定)、SOSタイタニック(日本語版)、イスタンブール、ロココの仕立屋
メビウスゲームズ取り扱い:ポテトマン、サンスーシ、ロシアンレールロード、スピードカップス
アークライト取り扱い:ラブレター(日本語版)、ギルドマスター(日本語版)、ブラッドバウンド(日本語版)、ロココの仕立屋(日本語版予定)
ニューゲームズオーダー取り扱い:コンコルディア(日本語版予定)
原題を付したものは国内未発売