広義のボードゲームと狭義のボードゲーム
以前、NHKの番組で取材を受けた時、ボードゲームとは何かという話になった。というのも、『ニムト』や『ナンジャモンジャ』などのボードのないゲームはボードゲームに含まれるのかという問題があったためで、ディレクターと話し合った結果、結局「テーブルを囲んで遊ぶアナログゲーム。カードで遊ぶ形式や、ボードを使わないゲームなど種類はさまざま」という表現に落ち着いた。
「卓上ゲームの一種で、特別にデザインされた模様のボード(ゲーム盤)上に、小さなオブジェクト(ゲーム駒)を特定の方法で配置したり移動させたりするもので、サイコロなどの他のコンポーネントが含まれることもある」(Wikipedia)、「ボードの上で駒を動かす人間対人間のゲーム」(高橋弘徳)というように、一般的な理解では、ボードを使うゲームがボードゲームである。例えば「Azb.Studioによるボードゲーム『美術大戦』がミニサイズになってカプセルトイに登場!」といった表現に違和感を感じるのは確かだ。しかし、近年ではボードを使わないゲームも、ボードゲームの総称として含まれるという理解が国際的に広まってきている。
また、先日の朝日小学生新聞で「電源を使わないゲーム」と説明されたように、デジタルとの対比からアナログゲームや非電源ゲームと定義されることもあるが、電池やスマホを使うボードゲームや、ボードゲームアリーナなどオンラインで対戦するボードゲーム、『スーパーマリオパーティ』や『桃太郎電鉄』などボードゲーム形式のデジタルゲームもあり、すべてのボードゲームに適用できるとは言い切れない。同様に(オンライン対戦を含む)人間対人間でプレイする「対人ゲーム(独Gesellschaftsspiel/仏Jeux de société)」も、近年(特にコロナ禍以後)ソロプレイできるボードゲームが増えてカバーできなくなってきた。
以上の「ボードを使うゲーム」「非電源ゲーム」「対人ゲーム」の関係を整理したものが下記である。いずれかひとつを満たしたものが広義の(総称としての)ボードゲームと呼ばれ(「ボードゲームが今ブーム」)、すべてを満たしたものが狭義の(単称としての)ボードゲームと呼ばれている(「『アグリコラ』は素晴らしいボードゲームだ」)と考えられる。すべて満たしていなくても、2項目が重なっていれば、1項目だけよりもボードゲームらしいといえる。また、3項目は対等ではなく、人とTPOによって重点が変わるかもしれない。
この他にも「テーブルを囲んで遊ぶゲーム(tabletop games)」や「作家がクレジットされているゲーム(独Autorenspiel)」も定義項の候補として挙げられるが、ボードゲームはテーブルがなくても床どころか屋外でもプレイできるし(対人ゲーム・非電源ゲームのメタファーとしては採用しうる)、作家が不詳の伝統ゲームも歴としたボードゲームなので採用しなかった(ドイツゲーム・ユーロゲームの定義としては採用しうる)。
ただし、TCG、TRPG、SLG、人狼、マーダーミステリーは、これらの定義に当てはまり、実際時代・地域(および好み)によってボードゲームとして扱われることもあるが、少なくとも現在の日本では独立した一大ジャンルとして、ボードゲームとは別扱いされているようだ。このことから考えると、ひとつのジャンルに収斂しない雑多性・多様性もボードゲームという括りの大きな特徴といえるかもしれない。
広義のボードゲーム:ボードあり・対人・非電源の1つ以上を満たすさまざまなゲーム
狭義のボードゲーム:ボードあり・対人・非電源の全てを満たすさまざまなゲーム
ゴールデンボックス賞2024ノミネート発表
ゴールデンボックス賞は、ボードゲーム制作者にフォーカスして優れた活動を讃える賞。ボードゲームデザイナー・イラストレーター・プロデューサー・ディレクター・翻訳者などの会員が専門家の目で推薦・選出する。昨年は作品賞に『ナナトリドリ』、ゲームデザイン賞に『沈黙ノ艦長』、アート賞に『ギブトレ』、グラフィックデザイン賞に『ラフレシアン』、プロダクション賞に『テープルゲームズ』、ルールブック賞に『ハーベスト』が選ばれている。
部門は、総合評価の作品賞、優れたゲームデザイン・デベロップメントのゲームデザイン賞、魅力的なイラストのアート賞、ロゴや演出などビジュアル全般のグラフィックデザイン賞、企画・ローカリゼーション・プロモーションなど製品化に関するプロダクション賞、翻訳やDTPなどのルールブック賞が用意されている。
今回の対象は昨年1年間に発売された作品で、年明けに会員が他薦し、会員の投票で各部門3タイトルずつに絞ってノミネートした。本日現在、会員による最終投票が行われており、今月末に各部門賞が発表される予定となっている。
作品賞
・『クイズすごろくかぶーる』(ボードゲームショップあそびば)
・『モンスターヘクス』(ゲームNOWA)
・『馬高/UMATAKA』(銅鐸舎)
ゲームデザイン賞
・『Revolve!』(ワンモアゲーム!)
・『バザールの商人たち』(Megalomaniac Game)
・『バリバリわんわん!』(ラビットガーデン)
アート賞
・『Divee! ダイビィ!』(ハーベストバレー)
・『Not for me(ノットフォーミー)』(レイクインザゲームス)
・『キャットと塔』(アークライト)
グラフィックデザイン賞
・『SHINJUKU』(リゴレ)
・『バロニズモ』(くじらだま)
・『レンソービンゴ』(アークライト)
プロダクション賞
・『Slay the Spire: The Board Game 日本語版』(ケンビル)
・『ミスターダイヤモンド』(ハナヤマ)
・『レンソービンゴ』(アークライト)
ルールブック賞
・『NIWARS(二ワーズ)』(橘 あずさ)
・『ビストロ・コスモポリート』(すごろくや)
・『ゆびダイス』(mor!)