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邦題は流通しているものに

先週発売されたばかりの『ボードゲーム・ジャンクション』を入手。安田氏による140タイトルというゲーム紹介が全体の3分の1、そして秋口氏によるネットではまず読めないリプレイが3分の1、江川氏と笠井氏によるレビュー、座談会が残り3分の1といった構成である。まだ読み始めたばかりだが、ここ10年のボードゲームのトレンドを分析しているところと、非ドイツゲームの紹介にも力を入れているところが面白い。
表紙のイラストはさておき、まず気になったのは邦題である。安田氏のこれまでの著書もそうだったが、日本で流通しているタイトルとは異なる独自の邦題がつけられている。そのため、紹介を読んでほしくなった人が、そのタイトルで検索して探しても見つからない恐れがある。今回は、だいぶ流通している邦題を取り入れているものの、齟齬が見られるものもあった。そこで検索用に表記しておく。
アミュレット→アムレット(メビウス)
イスパハン→イスファハン(バネスト)
うさぎとかめ→ウサギとハリネズミ(メビウス)
エヴォ→エボ(メビウス)
お金はクサくない→お金は臭わない(メビウス)
キーラーゴ→キーラルゴ(バネスト)
銀河帝国レース→レース・フォー・ザ・ギャラクシー(バネスト)/銀河大戦争(アークライト)
キングズブルク→キングスブルグ(バネスト)
クラン→クランス(メビウス)
ケルティス→ケルト(メビウス)
サンクトペテルブルク→サンクトペテルブルグ(メビウス)
沈んだ世界→ブクブク(メビウス)
時代を超えて→スルー・ザ・エイジ(バネスト)
人狼→ミラーズホロウの人狼、タブラの狼(バネスト)
ズーレイカ→ズライカ(メビウス)
ツァップ・ツェラップ→ザップゼラップ(メビウス)
バザーリ→バザリ(メビウス)
パリ、パリ→パリス(メビウス)
ハンブルク→ハンブルグム(バネスト、ホビージャパン)
ビトレイアル→丘の上の裏切者の館(バネスト)
それはオレの魚だ!→おい、それは俺のサカナだぜ(バネスト)
名誉と酩酊(名声)→ラムと名誉(メビウス)
確かに、誤訳だったり、読み方が違っていたり、翻訳センスが悪かったりして、もっといい邦題をつけたくなることはある(ボードゲームの邦題)。しかし、それで流通しているということは非常に大きなことなのだ。たとえ絶版で入手難でも、そのタイトルでオークションに出てくれば見つけられる。だから、流通している邦題を軽んじてはならない。流通している邦題は、わざわざお店に問い合わせなくとも、ちょっとネットで調べれば分かる。
まもなく日本ボードゲーム大賞が発表されるが、邦題には細心の注意を払う。複数のお店が別の邦題をつけているときは、「すすめコブタくん/こぶたのレインボーレース/ラッセルバンデ/こぶたのかけっこ」などのように併記するし、当方で把握している限りは別の邦題がなくとも、「別の邦題で輸入しているところがありましたらお知らせ下さい」と書くこともある。
輸入経路の数だけ邦題があるという問題は、かつてボードゲームシンポジウムで取り上げられたことがある(ボードゲームシンポジウム)。そのときは、できるだけ最初に発売したところのタイトルに合わせようという合意が形成された。問題として取り上げたのは、先行発売しているお店に遠慮して、わざわざ別の邦題にするケースもあったからである。ボードゲームのルールは、日本語版を作るのでもない限り、独占的な翻訳権を取ることがないし、また登録商標にするほどでもないので、同じでもかまわない。それどころか、ユーザーの混乱を避けるために同じであったほうがよい。
というわけで、邦題は統一されていること、また一般に流通しているものに合わせることが望ましい。流通している邦題の無視は、故意にではないが私もときどきやってしまうので、自戒を込めて。

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ゴンザーガ(Gozaga)

ヨーロッパ中央の激戦
ヨーロッパ全土を舞台に、さまざまなパターンの六角形タイルを並べて領土を奪い合うゲーム。ゴンザーガとは、イタリア北部を13世紀から400年近く支配した一族の名前。昨年のエッセンでイタリアのdVゲームズ(旧ダヴィンチ出版)から発売された。六角形タイルの造形がひときわ目を引くが、見かけだけではない。
六角形タイルは、六角形を3〜4個つなげた形をしており、端にお城がある(お城は海にはみ出して置けない)。パターンは『ブロックス』のようにさまざまあって、構成はみんな同じだ。ラウンドのはじめにまず領土カードを引いて、今回使う六角形タイルが決まる。そのかたちを見て、どこに置いたらよいか考え、アクションを選択する。アクションは国(イギリス、フランス、スペイン、ドイツ、イタリア、東欧の6種類)と、地形(港のみ、都市のみ、都市+港)の組み合わせ。みんなが選んだら一斉にオープンして、アクションに沿ってタイルを置く。
1枚2枚置いてみて初めて気づくことだが、タイルは思いのほか広く、どの国も置き場はすぐになくなってしまう。だから先に置けることが重要で、手番順の決定方法がゲームの大きなポイントになっている。
基本は選んだ地形によって順番が決まる。最初に「港のみ」のアクションを選んだ人、次に「都市のみ」、最後に「都市+港」。だから「都市+港」の手番が来る頃には、どちらも取られてしまっている可能性が高い(その場合は1マスだけ占有できる)。そこで「王の命令」というアクションがあり、有限の指輪を消費して、優先的に手番を行うことができる。同じアクションを選んだ人がいる場合は、タイル番号で決まる(全てのタイルに番号が付いていて、置きにくいタイルほど番号が若い)。
全員がタイルを置いたら、次のタイルを決め、アクションを選択する。前のラウンドで選んだアクションは連続してできないため、国も地形もどれかに特化できず、満遍なくタイルを置かなければならない。2ラウンド、3ラウンド後まで考えたアクションを選択しないと、得点が稼げないだろう。
得点は、自分のタイルを置いた都市や港のほか、同じマークの港、つながっているタイルの枚数、そしてゲームの最初に配られるマークのついた都市で入る。つながっているタイルの枚数は得点が高いが1位だけなので、競争は熾烈。特にヨーロッパの中央にあたるドイツ南部〜イタリア北部の陣取りが熱い。あえてその争いに加わらず、港や都市のマークを狙うほうが得なことも。
都市と港のマークが3つ以下になったら、最終ラウンドでゲーム終了。考えることはあるが、だいたい1時間強で終わる。
序盤にタイルをつなげるのは得点の低い周辺国からスタートした私は、競争の激しいヨーロッパ中央への足がかりを失い、タイル枚数の競争から早々と脱落してしまう。でも諦めきれずに得点の高くないエリアにタイルを置いて最下位。都市や港のマークに移行するのが遅すぎた。トップは、タイル枚数から早めにマーク揃えを進めたかゆかゆさん。都市はコンプリートで、港もたくさん集めた。
タイルに合わせたアクションの選択は常に悩ましく、さらに先手を取れるかどうかの瀬戸際が輪をかける。ボードが地図になっているゲームで、国を取ったり取られたりするのは私の好みではないが、このゲームは一度置いたタイルは安全で、常にその先のことを考えていけるのが気に入った。置きたいところに先に置かれて「グハ!」「ギョエ〜」などと悲鳴が上がるのも盛り上がってよい。1時間、熱中して楽しめた。
Gonzaga
G.ドゥッコーリ/dVゲームズ(2009年)
2〜4人用/8歳以上/45分