ポルトガルを舞台に、ブドウを生産しヴィニョス(ポルトガル語でワイン)にして高く売る経営ゲーム。昨年『バスコ・ダ・ガマ』で注目を浴びたイタリアのメーカーが、ポルトガル人のデザイナーを擁して今年のエッセン国際ゲーム祭に持ち込んだ新作で、人気アンケートでも10本の指に入る評価を得ている。印刷が間に合わず、エッセンにはサンプルがたった3箱しかなかったにも関わらずである。
これでもかというくらい要素を詰め込んだゲームである。ブドウの収穫を左右する天候、特性の異なる7つの地域、ワインの価値を高めるワイン工場・貯蔵庫・醸造師、定期的に行われるワイン品評会で得られるフェアポイント、そのフェアポイントを上げるのに使う理事、ワインをプレゼントすると追加アクションをさせてくれるマネージャー、ワインの売上や給料を出し入れする銀行口座、利子がつく投資、勝利点が入る輸出など、ルール説明だけでも休憩が必要なくらいだ。
ゲームは6年(ラウンド)にわたって行われるが、1年にできるアクションはたったの2つ。つまり12手番でゲームが終わる。それなのに3時間かかるのは、1手番に考えなければいけないことがたくさんあるからである。
ゲームの基本はロンデルシステムである。9つのアクションスペースがあり、自分のコマを移動してアクションを選ぶ。必ず移動しなければならない(前と同じアクションはできない)ほか、隣接していないところ、ほかの人が前に選んだところ、徴税マーカーがあるところは追加料金がかかる。お金は中盤までカツカツで、お金がないために貴重な1手番をパスせざるを得ないことも。
お金がカツカツというのは、序盤はブドウ畑などの初期投資でほぼ無一文となる一方、ワインを売った収入は銀行口座に入り、銀行のアクションを選ばないと現金を引き落とせないからである。おまけに始めは安いワインしか作れないので本当にきつい。
生産は1年の最後に行う。ブドウ畑の設備や天候によってワインの価値が変わり、さらに倉庫で熟成させたり、各地域の知名度を上げたりして高く売ることもできる。高いワインは作るのに手間がかかるが、売れば儲かるし輸出すれば勝利点が高い。安いワインはマネージャーへのプレゼントに欠かせない。なのでどちらも作っておくことが望ましい。
そしてゲーム中に3回、ワイン品評会が開かれる。各自が自慢のワインを出展し、その優劣で勝利点が入るという仕組みだ。味、香り、色、アルコール度の4つの観点でワインを審査してくれる理事を有効に使いたい。
要素の多いゲームだが、手番数と同様、得点パターンも少ない。輸出とマネージャーと品評会と最後の銀行口座だけである。必然的にどのパターンでも競争になるが、いずれも周到な用意が必要で、じっくり計画していかないと、終盤に何もできなくなってしまう。シビアなゲームである。
私は序盤から品評会に一点集中して理事を集めていたが、輸出が疎かになってしまった。ふうかさんが輸出し始めると、karokuさんもとっておきの一品を輸出して高得点をマーク。一方、品評会は私の独壇場だったが得点差が開かない。しかも品評会で勝つと次からは後手番になるので不利だった。後を追って輸出しようにももう枠がなく、マネージャーも先に取られて結局最下位。
ゲームが進むにつれてワインの収量も品質も上がっていくのが楽しいが、少ないアクションと得点パターンで最大限の成果をあげるのは難しく、じっくり考えさせる経営ゲームである。
Vinhos
V.ラチェルダ/ホワッツユアゲーム(2010)
2〜4人用/12歳以上/90〜180分