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洛陽の門にて(Vor den Toren von Loyang)

たくさん植えれば楽よう
時は紀元前後、漢の都だった洛陽を舞台に、農家となって野菜を栽培して売るゲーム。スカウトアクション6位、ボードゲームアンケート14位、プフェファークーヘル9位。日本語版が今月ようやく発売される見通しとなった。ゲーム内容はこちら
今回は高級野菜に走るみんなを尻目に、私は一番安い麦と、次に安いカボチャをひたすら栽培し配達し続けた。収入は低いが、ほかの人と競合しないので序盤はよかったように思う。何が出るか分からないが一気にカードを増やせるパック買いを、助手の「官吏」で無料にできたのも奏功した。しかし、あまりに麦とカボチャにこだわりすぎ、後半は失速。高級野菜である豆やニラを栽培し始めるのが遅く、収入が伸び悩んでしまった。
最初からニラで攻め続けた鴉さんは、白菜をほしがるお客さんばかりがやってきて大弱り。その間に序盤は畑を増やし、多品種栽培でどんなお客にも対応できるようにしていたくさのまさんが終盤に大儲けして1位。
時間は初プレイで3時間。カードドラフトで駆け引きが多いのと、8種類のアクションを好きな組み合わせ・好きな順でできるというのが手間取った(時間短縮のため、アクションフェイズは2人ずつ同時プレイという工夫はある)。とはいえ、『アグリコラ』でも『ルアーブル』でも思ったことだが、時間の長さを感じず、熱中していたらいつの間にか時間が経っていたという印象だ。
このゲームの面白いところを3つ挙げるとすれば、独特のカードドラフト、野菜を増やす楽しみ、僅差の得点状況があるだろう。
このゲームでは、追加の畑、野菜を交換する市場、収入源となるお客様、特殊効果を持つ助手が全部混ぜこぜにやってくる。各ラウンド4枚の手札をもち、1枚を場に出してパスするか、場札から1枚と手札から1枚を取って自分のボードに並べる。手札にほしいカードが2枚あっても、1枚は場に出して、誰も取らなかったときのみ取らなければならない。ほしいカードがなければ、ぎりぎりまでパスして、絶好の場札が出るのを待つ。ここで生まれる駆け引きは実に濃密。『ボーナンザ』のローゼンベルクらしいカード処理である。
野菜はお客さんに売るか、畑に植えることができる。お客さんは毎ラウンド配達できないと機嫌が悪くなり、罰金を払わされるので、何とか調達しなければならない。でも工夫して1コでも余らせ、畑に植えると、畑にはドバーンと野菜が増え、以降毎ラウンド1個ずつ収穫できるようになる。『アグリコラ』の野菜や麦のような栽培の楽しみである。
得点は毎ラウンド、お金で買うのだが、5から6のマスに行くには6文、11から12のマスに行くには12文というように、進めば進むほど多額のお金が必要になってくる。そのため毎ラウンド1マスか2マス買えれば御の字で、なかなか進まない。最後はだいたい同じマスで、所持金の勝負になる。ちょっとヘマしてもリカバリーでき、誰もゲームから置いていかれないのがいい。
助手は22枚あり、コンボも効くので研究したくなりそう。ゲーム中の操作が多いのが玉に瑕だが、それに十分見合ったゲーム愉しみが得られるだろう。『アグリコラ』や『ルアーブル』とは違う系統の収穫ゲームである。
洛陽の門にて
Vor den Toren von Loyang
At the Gates of Loyang
U.ローゼンベルク/ハルゲームズ
1〜4人用/10歳以上/100分
ホビージャパンより日本語版が今月発売予定
洛陽の門にて

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フレスコ(Fresko)

寝坊して1日棒にフレスコ

職人となって教会の天井に描かれたフレスコ画を修復し、ビショップの期待に応えるボードゲーム。今年のニュルンベルクで発売されたばかりの新作で、プフェファークーヘルにて『ヴァスコ・ダ・ガマ』などエッセンの人気作を抑えて1番人気となった。デザイナーは新人。
職人はまず、朝何時に起きるかを決める。早起きすれば、市場で顔料を買うにもフレスコ画を修復するにも先手を取れるが、その代わり顔料の値段は高く、職人の機嫌も悪い。寝坊すれば逆に、顔料の値段は安く、職人の機嫌はよくなるが、市場でも教会でもやれることはもうなくなっているかもしれない。
得点の低いプレイヤーから起きる時間を決め、後から選ぶプレイヤーは残った時間から選ぶことになる。いわゆるワーカープレイスメントである。「金はあまりないけど、職人の機嫌がいいな。明日は久しぶりに6時起きするか」「寝坊大好きなので8時起きで」妙にリアルな会話。
さて手番順が決まったら、このラウンドのアクションをプロットする。市場での顔料の購入、教会でのフレスコ画修復、顔料を買うお金を稼ぐ肖像画描き、顔料を混ぜて新しい色を作る調合、そして職人の機嫌を直す劇場の5アクションに、5人の職人コマを自由に振り分ける。同じアクションに何人も投入すれば、それだけたくさんアクションができるようになっている。でも、さくさん投入しても手番順によって何もできないこともあるから、起床時間を考慮に入れなければならない。
全員選んだらオープン。顔料の購入から、手番順にアクションを行う。全員のアクションが終わったら、次のラウンドへ。教会のフレスコ画が一定数修復されたらゲーム終了で、その時点で名声の高いプレイヤーが勝利する。
さてフレスコ画の修復の仕方。教会には25枚のタイルが並んでおり、タイルに指定された顔料を使うと取り除ける。取り除いたときにタイルの得点が名声として入る。顔料は赤・青・黄の三原色が基本で、調合すれば別の色が作れる。赤と青で紫、青と黄で緑、赤と黄で橙。さらに、紫と赤で桃色、緑と橙で茶色も作れる(拡張ルール)。調合に手間がかかるタイルほど、修復したときの得点が高い。実際はキューブを交換するだけだが、キューブの色が変わるのは本当に色を混ぜ合わせているようで楽しい。
顔料は市場などで手に入るが、同じ色ばかり集めてしまうと修復も調合もできない。ランダムに手に入る顔料を調整する手腕も試される。いわゆるリソースマネージメントという、ドイツゲームの主軸となるシステムである。
第1ラウンドでみんなが3原色のタイルを修復する中、寝坊して調合を行った。得点が入らないので起床時間の選択は最初である。そしてまた寝坊。そんなことをしているうちに、お金は貯まるわ、職人の機嫌はマックスによくなって追加の職人がやってくるわといいことずくめ。遅起きは三両の得である。それで後手でも得点の高い修復に挑むことができた。ところが、得点が跳ね上がると起床時間の選択は後になる。そのせいで今度は早起きさせられたが(みんないかに早起きしたくないか分かる)、今度はほしい顔料を集めたり、肖像画の特権を取ったりしてリードを守り、最後は怒涛の追い上げをかわして1位。
肖像画ボーナス、修復ボーナス、茶色と桃色の修復という拡張が3つ入っており、今回は最初から全部入れて90分。ルールはその分多くなるが、ゲーム慣れしているメンバーならば全く問題なく遊べる。3つ全部入れなくても、肖像画ボーナスは入れたほうがよさそうだ。
ドイツゲームの主軸であるリソースマネージメントに、近年流行りのワーカープレイスメントを加え、カードテキストを一切なくしてスマートに仕上げている。それでいて顔料を混ぜるという仕事の楽しさからか、既視感がない。ドイツ年間ゲーム大賞を視野に入れてのことだろうか、クイーンゲームズ社は「ファミリーゲーム」というが、フリークが遊ぶにも歯ごたえがあるゲームだった。
Fresko
M.ルスコウスキ、M.ズーセルベック/クイーンゲームズ(2010年)
2〜4人用/10歳以上/45〜60分
メビウスゲームズより近日発売予定