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ハンザ・テウトニカ(Hansa Teutonica)

最高レベルでも手遅れ
ハンザ・テウトニカ
中世の北ドイツを舞台に、豪商となって交易能力を上げ、商館を建てて都市をつなぎ、名声を高めるボードゲーム。昨年のエッセン国際ゲーム祭で発売され、フェアプレイ誌のスカウトアクションで9位、ボードゲームアンケートで6位という高い評価を得ている。
盤面には北ドイツの都市が道でつながれている。そして各プレイヤーのパネルには現在の交易能力を示すパラメータ。そしてボードに配置する手下のコマがある。
ゲームはアクションポイント制で、手下のコマを道に置き、道がいっぱいになったらその両脇の都市のどちらかに商館を建てたり、そこに落ちているチップを獲得したり、新しい交易能力を獲得したりする。道にあったコマは全部取り除かれ、また新たに置けるようになる。
商館は、隣接する道がいっぱいになるたびに得点が入るほか、ゲーム終了時にも得点になる。また、商館のネットワークによって、さらに高得点が狙える。このゲームの最も重要な得点源である。
チップは特殊能力になるほか、集めれば集めるほど得点になる。置く場所は前に取った人が決められるので、自分の商館への利益誘導に使うこともできるだろう。
交易能力は5種類あり、それぞれどの都市で上げるか決まっている。商館ネットワークの価値を上げる「鍵」、アクションポイントを増やす「手紙」、商館を建てられる場所を増やす「地位」、手下の移動を増やすほか、上級の手下が手に入る「本」、手下の補充を増やす「巾着袋」がある。どれも疎かにできないし、最高レベルまで上げれば得点にもなるが、能力を上げたときは商館を建てられないので、これにばかりこだわっていては盤面が出遅れてしまう。
面白いのは、手下のコマは盤面のどこにでも自由に配置できるところと(森からひょっこり現れる感じだろうか)、道を全部自分の手下で埋めないといけないところである。カードで置くところが指定されているとか、隣接して置くといったルールはない。このためドイツゲームに典型的なエリア・マジョリティではない新しいプレイ感覚がある。
どこに置いてもいいのだから、誰かが途中まで置いた道に1個だけ置いて邪魔してもよい。その手下を追い出すにはコストがかかり、追い出された人には補償もあるのでお得。膠着したら、移動して一箇所にに集めるという手もある。
もう1つ面白いのは、得点がやや低いところで終了条件になっている点だ。ほかにチップがなくなる、10都市に商館が全部建つという終了条件もあって、どれで終わるかの駆け引きもあるが、最終的に40〜50点いくにもかかわらず、誰かが20点に達したところでゲームが終わるようになっている。
この20点はじわじわと入ってくるが、西端と東端の都市を商館で最初につなぐことで7点が一気に入ってくる。たいていは誰かがつないだらゲームが終わるだろう。しかし、その後にボーナスがあるので、つないだ人が勝つとは限らないところがポイント。
能力アップはそこそこにして商館をつなぐことに全力を傾けると、ボーナスが取れない。しかしボーナスに集中してしまうと、西端と東端の都市がつなぎにくくなる。ボーナスも商館もバランスよく取るか、どちらかを極端にするか悩ましい。
さらに、能力を上げてばかりいると、商館を建てるのが遅れる。しかし能力アップをしなさすぎると、商館を建てるスピードが遅い。商館も能力も同時進行で進めるほかないが、どれくらいの配分をするかも難しいところだ。
序盤に能力控えめでチップを集めた鴉さんが、後半から商館をどんどん建てて有利な態勢に。能力を先に上げた私は、商館を建てるいい場所が残っておらず、チップ頼りとなった。チップが切れて終了。鴉さんが1位。初手でボーナスを取りにいったPsy+さんにわずかの差で3位。tomokさんが2個ぐらい置いてそのままにしておいたのは、全員にその道を使わせないことでダメージを与えるいい作戦だったと思う。
時間はメーカー公称の60分ではとても終わらないどころか2時間コースだったが、レベルアップしてできることが増えるのが楽しい。能力・商館・ボーナスの振り分けや、盤上の要所をめぐる駆け引きも悩ましい。オリジナリティが高く優れたゲームだった。
Hansa Teutonica
A.シュテーディング/アルゲントゥム出版(2009年)
2〜5人用/12歳以上/60分
ゲームストアバネスト:ハンザ・テウトニカ

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シェンシ(ShenShi)

魂を取り合うお坊さん

お坊さんたちが悟りを目指して瞑想を繰り広げるボードゲーム。タイトルの「シェンシ(身世)」は中国語で(悟りの)ステージという意味。8つのステージを最初に登りつめて完全な悟りを開いたら勝つ。
『盗賊の親方』『ギャングスター』『プラネットスチーム』などのルドアートの新作。テーマもイカしているが、コマは金属製、座布団は布製の豪華コンポーネントに、BGMのCDまで付いている。昨年のエッセン国際ゲーム祭でひときわ目を引いたゲームだったが、生産が間に合わず、ようやく今年になってから発売された。
ステージを上げる方法は、お寺の中で瞑想しているほかのお坊さんを取ること。宙に浮く座布団で移動してほかのお坊さんに近づき、同じマスに入ると、そのお坊さんは盤外に出され、自分はステージが上がる。他人が達成した瞑想のステージを乗っ取るという設定らしい。
手番には自分のコマを2マスまで移動する、座布団で移動する、盤外にいるお坊さんを投入する、自分のお坊さん同士の位置を交換するという4つのアクションから3アクションを行う。自分のお坊さんは大小2人(師匠と弟子)おり、手番にはどちらも移動しなければならない。移動しないでいると邪念に惑わされてしまうとのこと。
移動は座布団かタイルの上のみしかできない。座布団で移動するときは縦横一直線に移動する。赤い座布団は特別で、スクロールして反対側から出てくることができるのと、ほかの空いている座布団を1枚はねのけられる。
弟子はほかの師匠を取り、師匠はほかの弟子を取ることができる。弟子で弟子、師匠で師匠を取ることはできない。取ったら2ステージ上がるが、相手の師匠を取ればそのうち1ステージは相手から奪うことができる。
完全な情報公開ゲームである。相手の間合いに入ったらやられるので、お互い逃げ回りながらチャンスを狙うのかなと思っていたが……ボードがせまくて逃げ場がない! とられない場所がほとんどなく、できるだけトップ目の師匠を狙うという方針でゲームが進んだ。すぐにtomokさんと鴉さんがリーチとなり、1手差でtomokさんの勝ち。2〜3人だったらもう少しゆったりした展開になるのかもしれない。
ShenShi
A.シュミット/ルドアート(2009年)
2〜4人用/12歳以上/45分
Ludoart:ShenShi
(メーカーのサイトでしか取り扱われていないので仲間を募って共同輸入した。定価は『プラネットスチーム』より更に高い64.90ユーロだったが、送料が付加価値税(日本の消費税にあたるもの。ドイツのショップはこの19%を含んだ定価を表示しているが、輸出の場合は非課税になるため、約2割引で買えることになる)分くらいとなり、8000円で入手できた。この取引を機に、ルドアートショップの送料の欄に「Japan, Taiwan, China」が加わった。)