たった6マスの土地で建物を建て替え、いち早く全部宮殿にするドイツのゲーム。日本にもファンの多い鬼才F.フリーゼが昨秋に発売した新作で、アークライトから日本語版が発売されている。内外での新作評価は決して高くないものの、『ドミニオン』にフリーゼ流の解釈を施し、ドイツゲームらしい拡大生産のゲームに仕上げた作品として注目される。
はじめは清水・大麦・ホップ(ビールの原料)がちょっとだけ生産される畑から始める。生産物を売って、そのお金で手札から建物を建てて、その効果で生産や収入を増やす。最終的には宮殿を建てるが、宮殿は『ドミニオン』の勝利点カードのようなもので、値段が高い上にそれ自体ではお金にならない。できることがどんどん増えてウハウハな前半と、逆に少なくなって苦しい後半の対比が面白い。
清水・大麦・ホップは別々に価格が変動し、皆が同じものを出荷すると値下がりしてしまう。一方、最終目標である宮殿は、皆が建てれば建てるほど値上がりして手が届かなくなっていく。また、次のラウンドの手番は収入の少なかった順なので、儲けすぎると後がつらい。さらに、マイデッキがあって捨て札が循環し、順番は変わらないので、ほしいときにほしいものが手札に来るとは限らない。そんなままならなさがフリーゼ好きにはたまらないわけだが、一番のポイントは建物のコンボである。
建設コストを下げる「建築屋」と収入を上げる「銀行」があれば、早いうちに高い建物を作ることができる。手札を余計に引ける「農業試験場」と、手札を破棄してデッキを圧縮する「ゴミ屋」があれば、ほしい宮殿カードがすぐ手に入れられるだろう。ただしコンボも、建物以上に賞味期限があるので、タイミングがよくないと役に立たない。13種類の建物を上手く使いこなせた人が勝利できる。
4人プレイ。私はお金があればどんどん宮殿に急いだが、案の定収入がなくなって立ち往生してしまった。序盤から圧縮を仕掛けた鴉さんがリーチしたが、お金をいっぱい貯めてから宮殿を建て始めたぽちょむきんすたーさんが逆転勝利。
デッキは最初から最後まで固定で、シャッフルもしないので全くデッキ構築ではない。最終目標の宮殿によってできることが減っていくのが『ドミニオン』で手札が勝利点カードだらけになるのと似ているが、ゲーム自体は全くの別物。デッキの中身は皆同じなので、「うわー、それもう建てたんですか。いいな」などとコメントし合えるのがいい。
Fürstenfeld
F.フリーゼ/2Fシュピーレ・アークライトゲームズ(2010年)
2〜5人用/12歳以上/60分