死後もボードゲームを遊べるか
本日24時から放送の『深夜のジレンマラジオ』第39回のテーマは「ボドゲを仕事にすること」だが、おそらくミスタイプで「ボドゲを死後にすること」になっている。これはこれで興味あるテーマだったので調べてみた。
古来、権力者のお墓にボードゲームを入れるということが行われていた。世界最古のボードゲーム『セネト』は古代エジプト時代、『六博』は漢王朝時代の副葬品として出土している。
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また台湾では「紙紮(しさつ)」といって、故人があの世で快適に過ごせるように、燃やしてあの世に届ける紙製品が売られている。住宅や生活用品、最近はスマホもある中で、麻雀もあった。日本円で約8000円。死後もボードゲームを遊んでほしいという遺族の思いがそこにはある。
福島県二本松市には「将棋の墓」と呼ばれる江戸時代の将棋好きのお墓がある。墓石は王将の駒、台石は将棋盤、水入れは歩の駒をかたどっており、戒名は「飛角院金銀桂香居士」。ほかにも阪田三吉氏や村山聖氏など、駒のかたちをした棋士のお墓は珍しくない。もっともこのようなお墓を作ったのは、死後も将棋を続けられるようにというよりは、将棋一筋で生きた証としてなのかもしれない。
以前、ボードゲーマーに100の質問で「自分が死んだとき、お棺に入れてほしいゲームは何ですか?」という質問があったが、回答者の約半数が「何も入れないでほしい」で、あとはトランプやダイスなどが挙がった。汎用性が高く、燃えやすく、あまり勿体なくないものということだろうか。
これ以降の話は死後の世界があるとしたらという仮定での思考実験である。死後の世界はなく、死んだら終わりだと考えている人には全くのナンセンスなので、最後の段落まで読み飛ばしてほしい。
ボードゲームを遊ぶためには、自分の身体と、ボードゲームの用具と、一緒に遊ぶ相手という実体が必要である。しかし死後の世界にこの世から実体をそのまま移すことはできない。お棺と一緒に燃やしてあの世に出現させるにはどうしたらよいだろうか。
コミック『死役所』(あずみきし/新潮社)では、死んだときに手にもっていたものは、マンガでも日記でも、身につけていたものと同様に死後の世界に持ち込むことができる。確かに古来より、死者は裸ではなく衣服をまとった姿で描かれ、お棺に入れた杖や六文銭、道中の食料となる米なども携行できることになっている。つまり身に着けていれば、物質的なものであってもあの世に持っていけると信じられていることになる。
そうだとすればボードゲームもお棺に入れておけば、あの世に持ち込むことはできると考えてよいかもしれない。ただし衣服・杖・六文銭・道中の食料と同程度に、故人にとって必要なものでなくてはならなくては持ち込めない可能性もある。箱が擦り切れるくらい遊び込み、日常生活の一部といえるくらいのものであれば、持ち込める確率が上がりそうだ。
こうして何とか自分の身体と、愛してやまないボードゲームをあの世で獲得できたとしよう。次は一緒に遊ぶ相手である。さまざまな境遇の死者があちこち行き交う中で相手を見つけるには、同好の士が集まる場が必要となる。仏教の六道で考えれば、天上界のうち、いまだ欲望にとらわれている「六欲天」あたりが妥当ではないか。欲望にとらわれているといっても、帝釈天や四天王がおり、他と比べるとかなり平和なのでじっくり遊ぶことができる。
六欲天の寿命は長く、一番下の「四大王衆天」でも500年(人間でいうと900万年)あるとされるので、まず遊ぶ時間には困らないといえる。しかし500年間もボードゲームをしているのは、よほどの愛好者でも飽きてしまって苦痛に変わるかもしれない。
以上、ボードゲームを死後も遊べる可能性を探ってみたが、生きているうち、元気なうちに遊んでおくに越したことはないのは確かである。人生100年、110年時代とはいえ、ボードゲームを遊べるくらい健康でいられる期間はずっと短く、しかも病気・事故・天災などで早く亡くなる可能性もそこそこある。自分の健康と、一緒に遊んでくれる仲間や家族に感謝しつつ、死んでも遊び続けたいくらいの気持ちでボードゲームを楽しもう。
『ゴーポップ!』日本語版、4月14日発売
オリジナルはフォックスマインド(アメリカ)から2014年に発売された『ポップイット(Pop It)』。
順番に6列から1列のバブルを好きな数だけ押し、交互にポコポコ押していく。各列には3~6個のバブルがあり、全部押してもいいし、少し残しても良い。こうして対戦相手に最後のバブルを押させたほうの勝ち。総シリコン製でバブルを押す感触も気持ち良いアブストラクトゲームだ。