Posted in エッセイ

下手の考え休むに似たり

この格言は碁や将棋から生まれたという。下手な者の長考は時間を浪費するだけで、何の効果もない。相手が考え続けるのをあざけっていう。

長考問題はボードゲーム愛好者の中で定期的にあがる話題である。自分の手番で選択に迷ったり、盤面の状況を読んだりして長い時間を費やすこと。多くのボードゲームはルールとしての制限時間がないため、どれくらいから長考になるかはゲームやメンバーによって変わる。

例えば『麻雀』では10秒を超えると長考とみなす人が多いというし、『カルカソンヌ』の大会ルールは15分の持ち時間があり、これを手番数で割ると25秒。『アグリコラ』はプレイ時間が1人あたり30分で約40手番なので1手番あたり平均45秒、『コードネーム』はプレイ時間15分で10手番くらいなので1手番あたり90秒(親がヒントを考える時間はその半分くらい)でデザインされている。あくまで平均なので、これらをちょっと上回ったくらいでは問題にならないが、何倍もの時間を費やしたり、それが繰り返されたりすると長考とみなされる可能性が高い。

長考問題の基本は次の2点である。定期的に話題に上がるのは、②がたびたび起こっているからだろう。

【①マナー違反】
他プレイヤーに無為な時間を過ごさせ、みんなの貴重な時間を奪うのはマナーとして良くないことである。

【②無自覚へのストレス】
周囲が長考だと思っても本人は自覚しておらず、かといって注意もしにくいのでストレスがたまる/トラウマになる。

それならば長考に対する注意を喚起しよう、あるいはもう同卓しないことにしようということになるが、③のように一概に言いきれない面もある。これも定期的に話題になる理由だ。

【③しかし一概に禁止できない】
自分の手番をうっかり忘れていることもあるが、周囲から急かされるのは不快なものだし、注意されて焦ればもっと長考になる恐れもある。ルールを十分に把握していない場合や、予め自ら断って行う場合もあり、ある程度までは大目に見ないと息苦しい。

【長考する他プレイヤーに対して】
どのような対策が可能なのか。まずボードゲームの目的にはコミュニケーション・勝敗・思考などがあって、それぞれどれくらい重きを置くかはその人次第であることを認識したい。
プレイスタイルが違いすぎる人が同卓すると、長考問題だけでなく、さまざまな問題が発生しやすい。ならば自分と合わない人を避ければいいのかというとそうでもなくて、コミュニケーションメインであっても、勝敗を目指さないプレイや、全く考えない手番も長考と同様に興趣を損なうため、みんなが楽しむためにはプレイヤー間の摺り合わせ(一般に経験者が多いほうが少ない方に寄り添うこと)が必要である。
また、前の人の手番で盤面が大きく変わったり、選択肢がやたら分岐したりするなどゲーム自体のデザインもある。チェスクロックアプリなどで制限時間を設けるという方法もあるが、時間ばかり気になって楽しめないかもしれない。与えられた時間と、プレイヤーの向き不向きを踏まえたゲーム選びによって緩和するという方法もある。

【長考する自分に対して】
前の人の手番から考えておくなどしてテンポよくプレイできるよう心がけ、長考になりそうな場合は予め「長考しまーす」「ちょっと待ってくださいね」などと断るほか、ときには諦めも肝心である。
「下手の考え休むに似たり」は、長考している他プレイヤーに言うべきでないが、自分自身が長考しそうになったときに思い出すとよい言葉だ。「迷うくらいならどっちもどっち」「悪手/好手だと思っても後々そうとは限らない」「運や他プレイヤーの選択で結果が変わるかも」「失敗したら他プレイヤーから狙われなくなってラッキー」ぐらいで考えておくと、思いつきの一手が案外いい手になるかもしれない。

以下のリンクはこれまでボードゲームの長考問題に関して書かれた記事である。上記の内容もどこかですでに言われていることばかりだが、要約として読んで頂ければ幸いである。
(写真・リンク:ハシビロ製作所)

2005年
biscoの地雷備忘録:長考反対キャンペーン!!
ジョーコデルモンド:長考反対キャンペーン
2009年
希望の船:長考とダウンタイム
2011年
部屋とボードゲームと私と酒と泪と男と女:ゲームにおける「長考」について長考してみた
togetter:ボードゲームのマナーと長考について
2013年
遊星ゲームズ:長考反対?(超いまさらな話題)
晴耕雨読:決定にいたるプロセスについて考える(“長考”に対する緒言のようなもの)
togetter:「#こんな長考はよくない」のまとめ
TGiW:困るんです―長考型
TGiWアンケート:長考
非電源ボードゲームで未来のゲームを妄想する:ボードゲームにおける長考問題は解決されるべきではない
失われた時を求めて:ボードゲームの長考について
2015年
ボドゲ神拳:長考問題を解決する3つの方法
2016年
iwatamの個人サイト:ボードゲームの長考
Aoi Yuki Blog:ボードゲームの長考問題を考える(‘-‘*)
2018年
メシフクロウの雑記:ボードゲームで長考する人について思うこと
2019年
びろぐ:長考は悪なのか?理想のプレイヤーとはどうあるべきなのか?
キリンノックスのボードゲームブログ:ボードゲームにおける長考問題
2022年
フェアリーノート:ボードゲームの長考について考えてみる。
ネルログ:ボードゲーム長考問題 本質は長考の是非じゃない
フェアリーノート:ボードゲームの長考について考えてみる。
ほらボド!:第421夜オンライン収録「長考問題について考えよう」
灰銀:長考か早打ちか問題。
・TGiW:下手の考え休むに似たり

Posted in 日本語版リリース

カードプレイで窮地脱出『ブロックス シャッフル』日本語版、7月23日発売

マテルは7月23日、『ブロックス シャッフル(Blokus Shuffle: UNO Edition)』日本語版を発売する。ゲームデザイン:N.ヘイズ&B.タビシアン、2~4人用、7歳以上、30~45分、3850円(税込)。

マテル社の人気ゲームである『ブロックス』と『UNO』を合体させた作品で、オリジナルは2021年に発売された。ピースをできるだけたくさん置いた人が勝ちという『ブロックス』のルールに、『UNO』のカードプレイを加えた。

手番には2枚の手札から1枚をプレイして、その効果を適用。その後で自分のピースを盤上に置いて、手札を1枚補充する。ピースを置くところがなくなった人から脱落してゲームを続け、全員置けなくなったところで置けなかったピースのマス数が少ない人(ボード上に最も多く置けた人)が勝利する。

カードはスキップ、リバース、ドロー2から、どの色のピースでも置ける(ワイルド)、辺と辺を隣接して置く、ボード上から自分のピースを回収する、他のプレイヤーのピースを移動する、2連続手番というルールを変更するものまで8種類。運の要素が入り、定石を覆すドラマチックな展開が楽しめる。