アッシリア(Assyria)
腹が減っては戦ができぬ
チグリス・ユーフラテス河岸を舞台に、食料を調達し、ジッグラトを建設するボードゲーム。フランスのイスタリ社が昨年のエッセン国際ゲーム祭で発売した新作で、同社では初めて、非フランス語圏のデザイナーを起用した。デザイナーのオルネッラはイタリア人で、『オルトレマーレ』『ヘルマゴール』『君主論』などですでに評判を確立しているデザイナーである。
イスタリ社がアレア以上にフリークから人気を集めているのは、徹底的なテストプレイにある。ゲーム好きが毎晩のように集まって、試作品を遊びこみ、作り変える。そのためこの『アッシリア』も、オルネッラの作品というよりはイスタリのゲームという印象を受けた。やりたいことはたくさんあるのに、できることはあまりに少ないというマゾヒスティックな苦しさが、イスタリの特徴である。
ラウンドの最初には食料が配られる。カードが安い順に並んでおり、安いカードを取れば手番が上がり、高いカードを取れば下がる。こうして決められた手番順に、ボードに小屋のコマを置く。ここでいきなり飢饉チェック。小屋を置いたマスに指定された食料がないコマは取り除かれてしまう。したがってどこに小屋を置きたいかを考えて、食料カードを選ばなければならない。
こうして生き残った小屋から得点やラクダが入ると、今度はラクダを使ってジッグラトを建設したり、神官に賄賂を贈ったり、神様に捧げ物をしたりする。これらは2〜3ラウンドごとに起こる決算で大きな得点源をもたらすいわば積み立てである。
第2、第5、第8ラウンドで洪水が起こり、小屋の一部が流される。そこでこれまでに積み立ててきた分の清算。賄賂は、影響力の大きい順に得点になるほか、追加の得点・カード・ラクダが手に入る。捧げ物は、ジッグラトの件数×1〜4の点数。これまでの苦労が報われ、ドーンと点数が入るところだ。
8ラウンドでゲームが終わり、ラウンド中に小屋から入る得点と、洪水の後に入るボーナスで一番得点の高い人が勝ち。
これも公称とは異なり2時間クラスのゲームである。ラクダが貯まらず、ジッグラトを建てられずにいた私は、なけなしのラクダを神官に賄賂し続けた。その一方で、どんどんジッグラトを建設して侵略してくる鴉さん。ボードは狭く、ジッグラトを誰かが建てるたびに小屋を置ける場所がなくなってしまう。結局、賄賂の競合がなかったおかげで鴉さんと同点1位。
このゲームは、拡大生産しないところが面白かった。いくらジッグラトを建てても、得点源が増えるだけで、生活は全く楽にならないのである。特に食料カードを使いきると小屋が急減し、得点もラクダも手に入らなくなってしまう。食料を選ぶにもコマを置くにも先手番が大切で、どこで食料を我慢して先手番を取るかが悩ましい。思わず言いたくなる。「イスタリめ〜」と。
Assyria
E.オルネッラ/イスタリゲームズ(2009年)
2〜4人用/12歳以上/45〜90分
ゲームストアバネスト:アッシリア
単行本化してほしいボードゲーム連載
アシェット・コレクション・ジャパンの『パズルコレクション』。20号くらいまで定期購読して、付録の立体パズルを置くところがなくなったのでやめてしまったが、「ゲームの基本」「ゲームの歴史」という連載を読みたい。
91号からは「世界遊戯博物館」の伊藤さんが執筆されているが、その前はどなたが書いてものだろう。特に興味があるのは、51号(ライナー・クニツィア)、65号(ラベンスバーガー)、68号(ハスブロ社)、69号(クラウス・トイバー)、71号(ピアトニク社)、74号(チケットトゥライド)、78号(カタン)である。
残念なことにいずれもすでに品切れで、入手できなくなっている。だれかアシェット・コレクションにかけあって、この連載だけ単行本化してくれないものか?
もうひとつ単行本化してほしいのは、冒険企画局が『ゲームジャパン』誌に連載していた「それでもボードゲームが好き」である。時々立ち読みしていたが(このページぐらいしか読むところがないもので)、マンガありリプレイありニュースありで、非常に興味をそそられる連載だった。ニュースだって、その時代の世相を反映しているから、そっくり載せても読める。
アークライト社のTRPG専門誌『ロール&ロール』の連載だった「ボードゲームジャンクション」が単行本化されたのは、TRPGに興味のないボードゲーム愛好者にとって朗報だった。同じように、パズルに興味のないボードゲーム愛好者、TCGやデジタルゲームに興味のないボードゲーム愛好者も相当いるはずで、こうした単行本化は結構売れると思うのだが、どうだろうか。