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アバンドン・シップ(Abandon Ship)

目立たないように逃げろ
沈没する船から、自分がひそかに応援しているネズミを逃がすゲーム。R.クニツィアの新作で、多人数でも遊べるファミリーゲームである。メーカーはアメリカのアルデラック・エンターティメント・グループ(AEG)。日本では、アークライト、バネスト、プレイスペース広島の3社がそれぞれ別の邦題で販売している。
登場するネズミは7匹。このうち最初に配られるタイルで3匹のネズミを指定される。このネズミを無事に逃がすと得点になり、その合計点で勝敗を競う。
長〜いボードは、妙に縦長の船と海。船がスライドすることで、海に沈む様子を表している。船底近くにネズミを並べてスタート。
ネズミの進め方はダイスロール&ドラフトである。ダイスをジャラ〜っと振って、順番に好きなダイスを1つ選んではその色のネズミを進める。ダイスによって目の構成が異なり、やたら早く進むネズミとノロノロ進むネズミ、気まぐれなネズミなどがいて面白い。
1つ以外全部のダイスが選ばれたら、いよいよ船が沈む。タイルを引いてその数だけズブズブ。ネズミのいるマスが海面まで来ると、そのネズミは哀れドザエモンに。複数のネズミがいる場合、一旦はセーフで、次に移動したときに逃げ遅れたほうが犠牲になる。「ああ、オレのネズミが〜!」とは心の中で思っても口に出してはいけない。
こうしてネズミは1匹、また1匹と脱落しつつも、船の上を目指して駆け続ける。でもここにもうひとつクニツィアの罠があった。それは「1位のネズミは、乗客の混乱に紛れて行方不明になってしまう」というルール。踏み潰されてしまうのだろうか。このルールのおかげで、早ければいいというものではなくなり、ゴール前のけん制が起こるのが楽しい。
得点になるのは2〜5位の4匹のみ。もちろんその前に海に落ちたネズミは0点。結構脱落してしまうので、途中で拾えるチーズも得点は小さいがバカにできない。
序盤はお互いにけん制しながら、満遍なくネズミを進める展開。なのでちょっとの手遅れだけでネズミが死ぬ。ほかの人のネズミを推理する余裕も手がかりも得られず、とにかく自分のネズミを正直に進めるしかなかった。終盤になってどの色にでも使え、しかも何回でも選べる11の目が出た途端、ネズミが飛ぶようにゴールして一気に片がついた。私のネズミは2匹も海に落ちてしまい、残る1匹も下位だったが、1匹も上がれない人もいた。
「クニツィアにしては(以下略)」という声も聞かれたが、クニツィアらしい仕掛けがあちこちにあって、でもあまり悩まずに気軽に遊べるゲームである。
Abandon Ship
R.クニツィア/AEG(2009年)
3〜7人用/10歳以上/30〜45分
アークライト:沈没!
ゲームストアバネスト:沈みゆく船
プレイスペース広島:アバンドン・シップ
アバンドンシップ

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ミスターゼロ(Mister Zero)

ゼロの誘導
まず目を引くのがボックスである。波平さん(?)がロボットと宇宙空間でこのゲームを遊んでいるイラスト。アブストラクトゲームとはいえこのシチュエーションにはいろいろ思いを馳せざるを得ない。ミスターゼロとはいった誰のことなのか……?
1985年にドイツ年間ゲーム大賞にノミネートされた2人用ゲーム。赤と緑のチップを交互に置いて、中央にいるコマを自分の陣地に誘導する(ちょっとだけ『ロボトリー』みたい?)。
中央のコマは、チップを全部置き終わるまで動かない。0〜9から、好きなチップを、マスとマスの間(ブリッジ)に置く。コマは常に一番数字の小さいチップが置かれたブリッジを通ることになっている。そのため、自分が望む方向に誘導するには、できるだけ小さいチップを置かなければならない。
チップが同じ数字の場合は、進行方向からみてより右手のほうに進む。スタートでは進行方向が決まっていないので、そこからのブリッジだけは、一番小さい数字が2つあってはならない。
小さいチップのほうがよいといっても、大きいチップも置かなければいけない。それに得点計算では、大きいチップを通ってもらったほうがよい。そこが悩ましいところである。
チップを全部置き終わったらいよいよコマの移動開始だ。上述の通り、色に関係なく一番小さい数字のチップが置かれたブリッジを通って移動する。移動し終わったチップは裏返す。そして自陣のポイントについたとき、その時点で裏返っているチップを取って自分の得点とする。
そこからロボットはさらに移動を続けるが、すでにチップが裏返ったところは通らない。行ったり来たりしながら、今度は相手の陣地のポイントにたどり着くだろう。それまでに通って裏返しになったチップが相手の得点となる。
問題は、自陣のポイントつくまでに、どれだけ多くのルートを通るか、数字の高いチップの上を通ってくるかであり、ただ先に自陣のポイントに着けばいいというものでもない。お互いによいルートを目指した攻防は実に深い。
くさのまさんと勝負。相手の出方を見ながら置く必要があり、さらに残りのチップも考慮に入れるのでついつい先の先を読みたくなる。先に自陣のポイントに入れた私が僅差で勝利。コンピュータに計算させたら強そうだが、ボックスの波平さんは勝つことができたのだろうか?
Mister Zero
W.バウアー、R.シュヴァイカート作/ダカーポシュピーレ(1984年)
2人用/10歳以上/30分
絶版・入手難