ケルト世界のドラフト&陣取り『イニシュ』日本語版、2月中旬発売
オリジナルはマタゴー社(フランス)から2016年に発売された作品。ゴールデンギーク賞で3部門にノミネートされている。古代ケルトの入植者となり、王となるべく覇権を競う壮大な叙事詩的ボードゲームだ。
プレイヤーは、船で新たな地を訪れたケルトの族長となり、精霊の啓示を受けるために聖域を築き、氏族を平和に守るために砦を建て、新たな場所を求めて周囲の領地を探索する。氏族は互いに協力して移住を進めていくが、彼らの違いはやがて紛争へと至る。氏族の忠誠を束ね、指導力を見せつけて、王冠を手に入れよう。
システムはカードドラフトとエリアマジョリティーがメイン。ラウンド制で、アクションカードをドラフトし、手札からカードをプレイして氏族の配置、氏族の移動、聖域の建設などを行う。ほかのプレイヤーの氏族がいる地域に移動させると衝突が起こり、カードを破棄させたり、叙事詩カードで乗り切ったりする。こうして自分の氏族が6つ以上の地域に存在するか、自分が族長となっている地域に、ほかプレイヤーの氏族が合計6体以上あるか、自分が存在する地域に聖域が合計6つ以上あれば勝利する。
アイルランド神話に基づいたカードテキストと、美麗なアートワーク、ギザギザ組み合わせ式のユニークなゲームボードで、独特な魅力を放つボードゲームだ。
内容物:領地タイル16枚、建物18個(聖域9個、砦9個)、カード67枚(叙事詩カード30枚、行動カード17枚、地勢カード16枚、早見表 4枚)、トークン17個、氏族フィギュア48個ほか
クマ牧場(Bärenpark)
計画的にタイル配置
入り口の看板は多言語になっていて楽しい。「ビョルンパーク」はデンマーク。
このゲームではゴビグマ、シロクマ、パンダ、コアラが登場する。いろいろなかたちのオリや厩舎をびっちり並べて得点を競うパズルゲームだ。ローゼンベルクが『パッチワーク』以来取り組んでいるタイプのゲームで、『パッチワーク』の出版社であるルックアウトシュピーレ(ドイツ)から発売され、オーストリアゲーム賞を受賞した。
各プレイヤーには4マス×4マスの空き地ボードが渡され、ここにタイルを置いて動物園を作る。はじめは1~3マスの「トイレ」「遊び場」「屋台」から。
手番には手持ちのタイルを1枚、空き地に配置する。空き地には一輪車、ミキサー車、ショベルカー、工事現場のアイコンがあるマスがあり、ここを覆うと対応するタイルや新しい空き地をもらえる。こうしてもらったタイルを次の手番にまた配置して、動物園が広がっていくわけだ。
タイルは大きいほど得点が高いが、動物園はもってのほか狭く、大きいタイルのスペースを計画的に作っていかなければならない。複数のアイコンを同時に覆えばその数だけタイルをもらえるので、選択肢を増やしておくと少し楽になる。「このタイルをここに置いて、空き地を広げて、次にこのタイルをここに置いて、あのタイルを手に入れて……」
計画的に進めるのと同時に、早さも大事な要素。というのも中央のタイルは数に限りがある上に、先に取るほど得点が高いタイルもあるからだ。ここにほかの人の動向も見据える必要と、インタラクションが生まれる。
空き地タイル1枚につき1マスだけ、タイルを置けないマスがある。これがなかなか邪魔で工夫の余地があるのだが、ほかのマスを全部埋めるとボーナスとして、このマスにクマの像を設置できる。クマの像も先に取るほど得点が高い。
進め方としては、空き地タイルを1つずつ丁寧に埋めてクマの像を獲得していく作戦と、複数の空き地タイルを同時に進めて広いスペースに大きいタイルを置いていく作戦があり、これも他の人の動向に大きく左右される。その点でパズルゲームにありがちなソロプレイ感は少ない。
誰かが4枚の空き地ボードを全部埋めたら1周して終了。基本ルールではタイルの得点の合計を競うが、発展ルールでは「シロクマのタイルを3枚配置する」「川を3枚つなげる」などの条件が加えられ、先に達成した順にボーナスが入る。空き地タイルを埋めつつ、これらも達成には相当テクニカルなパズル思考が求められる。
4人プレイで45分。2枚のタイルが手元にあって、それを置く順番でその後の展開がだいぶ変わる。ただ手前から埋めていけばよいというわけでもない。大きなタイルはあまり置けなかったが、中ぐらいのタイルでこまめに埋めて1位。出来上がった動物園は詰め込まれすぎていて決して見栄えの良いものではなく、最後の達成感は低いが、毎手番クリエイティブな思考ができて過程に満足感の高い作品である。
Bärenpark
ゲームデザイン・P.ウォーカー=ハーディング/イラスト・K.フランツ
ルックアウトシュピーレ+ホビージャパン(2017年)
2~4人用/8歳以上/30~45分