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バッグビルドゲーム『オルレアン』日本語版、拡張2種と共に2月18日発売

Engamesは2月18日、『オルレアン(Orléans)』『オルレアン:侵略(Orléans: Invasion)』『オルレアン:交易と陰謀(Orléans: Handel & Intrige)』日本語版を同時発売する。ゲームデザイン・R.シュトックハウゼン(『侵略』は+I.ブラント&M.ブラント)、イラスト・K.フランツ、2~4人用、12歳以上、90分(『侵略』は90~120分)、各5500円、4500円、3000円(税別)。

フランス中部の都市オルレアンを舞台に、有力貴族となって街の発展に貢献することを目指す。人物チップを袋から引いてアクションを行い、新しい従者を袋に入れる「バッグビルド」で知られる。オリジナルは2014年、dlpゲームズ(ドイツ)から発売され、ドイツ年間エキスパートゲーム大賞ノミネート。翌年アークライト社から日本語版が発売されたが絶版となっていたが、日本語ロゴも価格も抑えての再版となる。

『オルレアン』では毎ラウンド、最初にイベントカードがめくられて今回の課題が与えられた後、各自、布の袋から従者チップを見ないで引き、プレイヤーボード上のアクションスペースに配置する。それぞれのアクションを行うには指定された組み合わせの人物チップが必要で、チップが増えるほど、いろいろなアクションができるようになる。アクションは人物チップの獲得から、マップ上の商人の移動、建物の建設があり、18ラウンドで得点を競う。成長の実感と得点パターンの構築が楽しい作品だ。

第1拡張セット『侵略』は6つのシナリオが入っており、表題になっているシナリオ「侵略」はブラント夫妻がデザインした協力ゲームとなっている。街に迫る侵略者に対応するため、城壁や塔を作り、お金や食料を備蓄する。ほかに1人用のシナリオが3本と、2人用のシナリオが1本、新しい要素「大工」を加えたシナリオが入っている。

第2拡張セット『交易と陰謀』は4つのモジュールが入っており、自由に組み合わせて拡張できる。達成すればボーナス得点になる「契約」、展開を多様にする「新イベント」、別パターンの「新公益事業」、そして表題になっている「陰謀」は公益事業に代わって、ほかのプレイヤーを妨害できるようになる。妨害対象になったプレイヤーは、賄賂を払って免除してもらうこともできる。

追記:Engamesの予約サイトでは拡張を含め全て即日完売となった。キャンセル分が後から販売される。

Engames:オルレアン 日本語版
Engames:オルレアン:侵略 日本語版
Engames:オルレアン:交易と陰謀 日本語版

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ステップアップ幻想

初めての人にはまずライトなボードゲームを遊んでもらって、そこから徐々にルール量が多いゲームを紹介していく……ボードゲームを広める手法としてポピュラーなこのやり方に疑問符が付された。

ボードゲームポッドキャスト「ほらボド!」第350回で、Youtubeで紹介されるボードゲームが『ボブジテン』などライトな一部のゲームに集中していて、そこから戦略性の高いゲームにステップアップしていかないという話をしていたとき、ボードゲーム大好き芸人のいけだてつや氏が次のように語った。

「ステップアップみたいな感じでご紹介してハマっていくみたいな、よく聞くんですけど、俺そんな感じでハマった人見たことないんですよ。」

これに共演したテンデイズゲームズの田中氏、アークライトの刈谷氏が同調。これまでそれで何人もハメてきたというmomi氏が反対すると、田中氏は「ステップで云々みたいな話っていうのは、幻想か、もしくはビジネス的なトーク」と続けた。いけだ氏はさらに語る。

「超ライトゲームみたいなのを紹介して、ステップで考えて(少し難しめのゲームを)ご紹介しますみたいなのをやったとき、もう2回目って聞く耳持たなくないですか。超ライトゲーム以外はルール多!とか、メンドクサ!とか、この前ぐらいのでいいんだけど!みたいなとか(笑)。」

そこから紹介者への信頼へと話は続くが、ステップアップ幻想説はとても興味深いテーマである。

私も『ボードゲームワールド』(2013年)の巻末に「段階別おすすめリスト」としてレベル1からレベル4まで、キッズ&ファミリー、友達&パーティー、ゲーマー&ガッツリ/2人、3~4人、5人以上に分けて紹介した。例えばキッズ&ファミリーの2人であれば、『どうぶつしょうぎ』『ガイスター』『コリドール』『ドミニオン』とステップアップしていく。次のレベルへのチェックポイントとして、ルール量、プレイ時間、戦略的に楽しめること、先読みなどを入れた。

この流れは、ボードゲームの種類が増えた現在もそれほど違っていないと思う。好みやプレイスタイルの違いや、デジタルゲーム経験の有無はあるとしても、momi氏がツッコんだように初めての人がいきなり『ディプロマシー』から入ることはまずない。ボードゲームに興味を持った人は初めは定番と呼ばれるものを遊んで、それが楽しければもっと重めのゲームを遊んでいくというケースが多いのではないか。

そこでステップアップ幻想説は、「レベル0」(ステップアップ的な観点が通用しないという意味でのゼロであり、レベルが低いという意図はない)と呼べるような超ライトゲームがどんどん増え、レベル1と大きく断絶していることに由来すると考えられる。

〈レベル0ゲームの特徴〉

  • ルール説明が30秒ぐらいで終わる
  • 1ゲームのプレイ時間が5~10分くらい
  • 戦略性や先読みは求められない
  • 勝敗よりも盛り上がりが大事
  • 必然的にパーティーゲームが多い

このようなゲームばかり遊んで、「ボードゲームとはこのようなものだ」という認識が定着すると、レベル1以上のゲームは面倒くさくて興味が湧かなくなる。ステップアップ幻想の正体は、レベル0ゲームの流行なのではないか。

もちろん、レベル0ゲームも楽しいのは間違いないし、レベル0ゲームだけでいいというのもひとつの趣味志向として尊重されるべきである。それにレベル0ゲームの流行は、ボードゲームの認知度アップやボードゲーム人口の拡大に確実に役立っている。

しかし、レベル0ゲームは上記のような特徴から、やりこむほどに深みが出てくるものではなく、何回か遊んだら飽きられやすいという欠点もある。レベル0ゲームを趣味として何年も遊び続けるというスタイルは想像しにくい。

ボードゲームを広めるだけでなく、一過性のものではなく文化として定着させるには、レベル0からレベル1への導線を何とか工夫するか(動画とか?)、それが無理ならば見込みのありそうな人を選んででもレベル1からのスタートを推奨する必要があるだろう。いきなり『ディプロマシー』はないと思うが、いきなり『カルカソンヌ』ぐらいなら十分アリだ。

なお継続できる趣味にしてもらう上で大切なことは、紹介者にそれなりの信頼があることや、そこそこわかりやすく説明できること以上に、上から目線だと思われないことである(これが本当に難しい)。

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