2012年にアメリカで出版されたボードゲームの研究書の翻訳。著者はオーストラリアの研究者で、博士論文を一般向けに書籍化したもの。タイトルにあるユーロゲームを中心に、ボードゲームを趣味として遊ぶホビーゲーミングの歴史と文化を扱う。
ユーロゲームといっても多様であるため漏れなく包括する定義ではなく、多くのものに見られる9つの特徴を挙げ、詳細に分析している。
①高品質な内容物、②具象的なゲームボード、③短くて比較的単純なルール、④お金や勝利点の相対的蓄積量を競う、⑤非対決的なメカニクス、⑥不完全情報、⑦個々人の達成を強調する歴史などのテーマ、⑧コントロール可能で軽減されたランダム要素、⑨1~2時間のプレイ時間
本書はゲーム研究に留まらない。Boardgamegeekユーザー調査からボードゲーム愛好者(ホビーゲーマー)の多くが「特定の知的レクリエーションに対して過大な関心を持つ、教育水準の高い男性」であると分析。必然的にコレクターになりやすいことを示す。そして最後に、プレイヤーはボードゲームのどこに「悦び」「快」を見出しているか、他人のそれと両立しないときにどう折り合いをつけているかを考察し、合理的プレイヤー・快楽主義的プレイヤー・社交的プレイヤー/プレイスタイルの分類を行っている。
訳者のひとりである沢田氏は今年、「ユーロゲームの誕生と消失」(『現代風俗学研究』第20号)という論文を発表しており、先日のゲームマーケットライブでは「ユーロゲームとは何か」という2時間の講義を行っているが、どちらもこの書籍を参照した内容で、ボードゲームという趣味に新しい視点を与えてくれる。