ヘヴン&エール(Heaven & Ale)

美味いビールを仕込む物語
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古い修道院の院長となり、神の御許でビール醸造所を運営するボードゲーム。エッセン・シュピールのスカウトアクションで6位に入り、ドイツ年間エキスパートゲーム大賞にノミネートされた。戦略性が高く、下手をするとほとんど点数が取れないまま終わってしまう分、上達の余地は限りなくあるザ・ゲーマーズゲームである。タイトルは「ヘヴン&ヘル(天国と地獄)」のパロディだが、修道院とビールの結びつきは古く、8世紀まで遡るという。
美味しいビールを作るのに必要なものは何か。大麦の麦芽、風味を加えるホップ、発酵させるための酵母、きれいな水、樽となる木材、そして製造を司る監督である。このゲームでは、ビールが出来上がるのはゲーム終了時。それまで手を尽くして、この6つを総合的に高めていくことを目指す。
メインボードにはいろいろなタイルや決算コマが配置されており、手番には自分のコマを好きなマスまで進めてタイルを取ったり、決算を起こしたりする。材料を生み出すタイルを取り、お金を支払って自分のプレイヤーボードに配置する。決算を起こすと、指定された決算パターンのタイルから材料やお金が入ってくる。このお金で新たなタイルを取り……なかなかの自転車操業である。
決算パターンは材料別、収穫量別などいくつかあるが、それぞれゲーム中に1回ずつしか使えない。したがってできるだけ同じ種類のタイルを集めてから決算したいところだが、そこまでお金が続かないのが現状。1~2枚取ったところで使わなければいけないことも多い。そこで活躍するのが修道僧(別名おっさん)である。修道僧は比較的安価に手に入り、決算では隣接するタイルから材料やお金をもたらす。さらに、周囲6マスを全て埋めることで置ける小屋でも材料やお金がもたらされるほか、監督の腕も上げられる。このように、1枚のタイルで何度か決算を起こすことができるので、ためらわずに回していきたいところだ。
メインボードを全員が1周するたびにラウンド終了となり、規定数のラウンドでゲーム終了。最後に全部の材料と監督の腕前を見て、どれだけ上質のビールができたかで得点し、そのほかにゲーム中に達成したボーナスを加えて得点の多い人が勝つ。
今回、私は高価なタイルを獲得して早めに決算する作戦。実際は、お金がないから早めに決算せざるを得なかった。しかしこれで特権カードも早めに獲得でき、また偏った材料が中盤でマックスになって臨時収入が入るようになった。これで終盤まで手に入らなかった材料をカバーして同点一位。
ビール醸造というフレーバーはゲーム中にあまり感じられないものの、タイルの選び方と配置の場所、決算の順序には無数の可能性があり、クリエイティブで奥の深いゲームである。エッガートシュピーレはカナダのプランBゲームズに買収されてしまったが、依然としてドイツゲームの正統な後継者であることを強く感じさせた。
Heaven & Ale
ゲームデザイン・M.キースリング&A.シュミット
イラスト・C.フィオーレ
エッガートシュピーレ(ドイツ)
2~4人用/12歳以上/60~90分