「ゲーム障害」とボードゲーム

世界保健機関(WHO)が先月発表した国際疾病分類(ICD-11)において、「ゲーム障害(gaming disorder)」が依存症のひとつとして新たに加えられた。デジタルゲームやビデオゲームをすることへの抑止力が欠如し、ほかの興味や日常生活より優先し、悪影響が起こってもやめられなくなる状態で、12ヶ月以上にわたって勉強や仕事などに支障をきたす場合、そのように診断される。該当する人はごく少数であるとしながらも、特に日常生活が圧迫されたり、心身の健康に変化が見られる場合はゲーム時間に注意するべきであるという。

この認定について、無害な趣味を病気とみなした過剰な診断であるとか、単にゲームを楽しんでいる人と本当に問題を抱えている人の区別ができなくなるといった意見がある。実際、「ゲーム脳」をはじめ、デジタルゲームやビデオゲームは有害であるという言説は跡を絶たず、今回のWHOの発表によってさらに広がる可能性がある。

ボードゲーム界においても、「デジタルゲームは危険だからボードゲームを遊びましょう」というように、デジタルゲームを悪者にしてボードゲームを推すことがごく一般的に行われている。いわく、デジタルゲームはリアルなコミュニケーションがないがボードゲームにはあるとか、デジタルゲームは頭をあまり使わないがボードゲームは頭を使うだとか、デジタルゲームは独りだから無制限に遊んでしまうがボードゲームは仲間がいないと遊べないから時間が限られるとか、「あなたとは違うんです」といわんばかりだ。

しかし実際には、ボードゲーム愛好者の多くは、デジタルゲーム「も」遊んでいる。以前に当サイトでとったアンケートでは、回答者の7割がデジタルゲームも遊んでいると回答している。ボードゲーム愛好者の多くは、アナログ・デジタル問わずゲーム愛好者なのだ。そしてこの趣味は単なる気晴らしに留まらず、そこで得られた体験を仕事に活かしている人も多い。

また、WHOの定義でゲーム障害はデジタルゲームに限定されているが、ボードゲーム愛好者にも重度になると生活に支障をきたす。「ボードゲームを遊びたい」という抑止力が欠如し、日常生活より優先され、悪影響が起こってもやめられないという経験は程度の差こそあれ愛好者なら感じたことがあるだろう。それだけ、ボードゲームにはデジタルゲームに勝るとも劣らない魅力があるということでもある。過ぎたるは及ばざるが如し、薬も過ぎれば毒となる。
Yahoo!知恵袋:夫の趣味に困っています。

したがって今回の「ゲーム障害」認定についてボードゲーム愛好者としてできることは、デジタルゲームを貶めることではなく、デジタル・アナログを問わないゲーミング一般の魅力やポジティブな効用を再確認し、世間の誤解を解いていくということではないかと思う。どうしても我田引水と取られてしまいがちなので、なかなかに茨の道かもしれないけれども。

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