じっくりと島をデザイン
お偉いさんの要求はわがままだ。「この島では店を沢山建てろ」「この島にはあなただけガラス工房を作って」「青いガラス細工を集めろ」「この島ではガラス工房とショップと宮殿を全部同じ軒数にしろ」「この島には客を3人以下にして」……こんな人物カードの要求を満たすように、島をデザインしていくのがゲームの中心だ。プレイヤーによって狙いが異なるため、達成は容易ではない。
中心となるシステムは「ワーカームーブメント」である。建物タイルを買う、それをボード上に建設する、ガラス細工を作る、ショップから収入を得る、人物カードを買う、ゴンドリエーレ(ゴンドラの船乗り)を配置するといったアクションは、ボード周辺にあるアクションスペースに船を移動して行う。何隻かの船がアクションスペース上にあり、空いているところに進めてアクションを行うことができる。ほかの船があるスペースでは、まずその船をどかしてから、後ろの船を進めなければならず、これにはお金がかかる。「ワーカームーブメント」といえばS.フェルトの『ルナ』(TGiWレビュー)があるが、船はみんなが共有していて、どの船を動かしてもいいため、選択肢は広い。
ゲームのポイントとなるのが、ガラス細工の製造だ。ガラス工房タイルを買い、ボード上に建設し、製造アクションを行うことでガラス細工ができる。このガラス細工はすぐに売ることができ、ゲーム中の重要な収入源になるのだが、製造のとき、島に煙と熱が立ち込め、住民を脅かすため、名声点が下がってしまう。そして名声点が十分になければ、製造することができない。宮殿などを建てて名声点を稼ぎ、その名声を使ってガラス細工を作り、その収入でまた新しい建物を作るという自転車操業。お金も名声点もカツカツなところがゲーマーズゲームらしい。
そんなカツカツぶりを少し和らげてくれるのが「特別な建物」。これを建てると、特別な建物カードを受け取り、ちょっとした特殊効果が得られる。特定のアクションのたびに収入が増えたり支出が減ったり、ガラス細工の色を変更できたり、選べるカードの枚数が増えたりする。これを活かしたアクション選択ができると、ゲームを進めやすい。
タイルの山が切れたらゲーム終了となり、得点計算に移る。ゲーム中にゴンドリエーレを置いた島に人物カードを適用し、その条件を満たせば名声点が入る。ゴンドリエーレを置いていない島には、人物カードを適用できない。どれだけ多くの人物カードを適用できるか、得点が最大限になるように建物などを配置できるかが勝敗を分ける。
4人プレイで約90分。人物カードを慎重に選ばないと全く得点できないため、選択に悩んだ。1ゲーム目はcarlさんが名声点を最大限削ってガラス細工を量産し、そのガラス細工が名声点になる人物カードで大量得点して1位。2ゲーム目はtomokさんが人物カードをたくさん集め、少しずつ加点して1位となった。島の状況を見ながら、人物カードをもっと増やすか、それともゲームを終わらせにいくかという選択肢が悩ましい。ゲーム終了時にボーナスカードの条件を満たして大逆転というゲームはよくあるが、このゲームはそうではない。ボーナスカードがほとんどの得点源で、ゲームを通してその条件を満たすようコツコツ進めていくというプレイ感覚が新しかった。
Murano
I.ブラント、M.ブラント作/ルックアウトシュピーレ(2014年)
2~4人用/10歳以上/60分