運んでもらって葉っぱ集め『ファストスロース』日本語版、12月10日発売
オリジナルは2Fシュピーレから2019年に発売された作品。自らは一歩も動かないナマケモノが、森の動物たちに運んでもらって葉っぱを集めるピック&デリバーのレースゲーム。
手番には2〜3枚の動物カードを引いて、1種類の動物カードを何枚でもプレイし、ボード上の動物コマを移動させる。動物を自分のナマケモノのところまで呼んで、葉っぱのある木まで運んでもらう。葉っぱを集めるほどカード補充や手札上限に制限がかかる中、一番多くの葉っぱを集めたナマケモノの勝利となる。
登場する動物は12種類から毎ゲーム6種類。ナマケモノを鼻で飛ばせるゾウ、移動力の高いユニコーン、水中をすいすい移動するイルカなど、動物によって移動できる地形や特殊能力に違いがあり、組み合わせは256通り。さらにゲームボードもモジュラー式になっており、リプレイアビリティが高められている。
ファストスロース(2Fシュピーレ+サニーバード, 2019-2021)
自分では全く移動できないナマケモノを、いろいろな動物たちに運んでもらって葉っぱを集める変則ピック&デリバリー。目先の動物だけでなく、他のプレイヤーが利用している動物の動きを読んでうまく乗り換えたい。 pic.twitter.com/R20f61Zmz7— Table Games in the World / ボードゲームニュース (@hourei) January 11, 2022
ゲームマーケット2021秋:新作ゲームの数々
ゲームマーケット2021秋には、およそ500タイトルの新作が発表されたと見られる。その中からピックアップしてジャンル別に紹介しよう。少部製作のところはすでに入手難になっているが、通販で手に入るところもまだあるので、気になったものはとりあえず検索して頂きたい。
トリックテイキング
トリックテイキング作品は、以前からゲームマーケットで人気である。2021大阪・2021春の当サイトの新作評価アンケートでは『luz-ルイス』『トリッククエスト』『ヒーフー!!』などがランクイン。新作タイトル数ではエッセン・シュピールを超える。カードゲームで制作コストがかからず、トリックテイキング自体の面白さは保証されているため手に取りやすい。海外作品も次々と日本語版が発売されている中で、アイデアの源泉はまだまだ涸れないようだ。
HAMELN CAVE(ハーメルンケイブ)(I AM YAW)
勝利したプレイヤーのほうに進む船をコントロールして洞窟脱出を目指す2人用トリックテイキング。相談ができない中で、相手の出したカードから狙いを読んでフォローする。移動だけでなく、デッキに入ってきた亡霊の退治もしなければならない。
バックハンダー(符亀)
フォローするべきスートが予め公開されているトリックテイキング。獲得したトリックの中からカードを出して上書きすることもできる。最後は2位のプレイヤーが勝つので、上書きで獲得トリック数を調整しなければならない。
ラムダイス(アソビダスト)
ダイスを置くとスートを変えられるトリックテイキングゲーム。しかしダイスを振るので数値も変わり、思わず勝って(負けて)しまうことも。
ウチューカイギ(すてきな山)
獲得したトリックによって特殊能力が発動するトリックテイキングゲーム。セットで得点になるが、同じカードを取りすぎると減点。
ウルティア(Xuhs Scobog)
手札を見て達成できそうな役を宣言し、一番難しい役を宣言したプレイヤーをほかのプレイヤーが阻止する3人用トリックテイキングゲーム。決まれば即勝利という難易度の高い役もある。
紙ペン
人数を問わず遊べるところから、コロナ禍でもてはやされている紙ペンゲーム。ロール&ライト、フリップ&ライトだけでなく、新しいメカニクスが国内外で次々と発表されていて発展が著しい。
豆と共にあれ(HOY GAMES)
テラミスティカ風フリップ&ライトゲーム。カードでめくられた建物からリソースが生まれ、それで新しい建物の建設や開拓を行う。統治者は諸国を巡回しており、自分の国に近づいたときに建設するとコストが安いので、それまでコツコツ準備しておく。リソースが間に合ったときの気持ちよさ。趣向の異なる4種類のシートが入っている。
航海の時代〜新航路開拓〜(A.I.Lab.遊)
めくられたカードの航路をシールで貼って航路を作り、一筆書きでリソースや得点を得る。シールを重ねて上書き可能。タイル配置でもよさそうなものをシールにしたのは、終わった後でも記録しておけるというメリットがあるという。
ヘクサ・ルインス(メロボド)
ロール&ライトで出てきたリソースを使い遺跡を目指す。途中でどこに寄り道していくかはリソースと相談。日付と時間によってダイスが変わる。
アニミズム(フダコマゲームズ)
カードをプレイヤー間で回しつつ、ルートをつないでリソースや得点。最後は各シートに記入した自分のルートの得点を合計する。リソースで購入したパターンを記入でき、ダイスロールは特殊アクションのときのみ。
2人用
同じくコロナ禍で人気なのが2人用である。多人数が集まれない中で、ごく親しい友人や家族と手軽に遊ぶことができる。アブストラクトゲームが多いジャンルだが、運やデクスタリティなど、さまざまな要素を取り入れて幅広い層にアピールしている。
VICKE(ピーナツデザイン)
自分の船で相手の島を探索して、宝がある2つの島(自分からは見えない)を先に見つける。航路コマを置くことで移動スピードを上げたり、相手の船をブロックしたりできる
サバンナラッシュ(イオピーゲームズ)
自分の受け持つ動物でエリアマジョリティと連結ボーナスを競う。動物によって数値・コマ数・特殊能力が異なり、相手のコマも置いてもよいルールにより高度な戦略性をもたせている。
ユビエイム(Proto Craft)
専用の発射台からおはじきで弾丸を飛ばし、敵を倒しつつ進む2人すごろく。ボードの表裏で2つのゲームができる。
Bossa/坊茶(ぼっさ)(Bossa/坊茶)
ダイスの両隣に昇順で差分が1ずつになるようにタイルを配置する2人ゲーム。先に置ききったら勝ち。
感染将 ー4種混合-(N&Iリサーチ・クリエイション)
4つのウイルスが人間となり、お互いに感染・まん延・ダメージを与えて戦う。
LINKCARNATION(piyopiyo-gaming)
カードを並べてお互いに効果を打ち消したり強めたりして得点を競う。5種族のデッキがあり、2人/ペア戦なら2種族、3人プレイでは1種族を選ぶ
コミュニケーション
コロナ禍の煽りを食ったものの、ゲームマーケットの華は多人数コミュニケーションゲームだ。オンラインで遊べるルールを付属しているところもあった。
オジサンメッセージ(オジサンメッセージ)
カードを組み合わせておじさん構文を作り、即ブロックを狙う。思った以上に下ネタ寄り。
シルエッティア(JOLDEENO)
透明カードを重ね合わせてお題を当ててもらう。セットコレクションの要素があり、あえて難しそうなお題に挑戦しなければならないことも。
メドゥーサの敗北(ノンプロ&ゾーイモーイ)
固まった石像の体でお題を全身で表現し、勇者に当ててもらう。メドゥーサはお題を当てるか、石像のふりをしている勇者を当てる。みんなが固まったポーズを取っているのが楽しい。
笑ってはいけない音読(ノンプロ&ゾーイモーイ)
配られたお題カードの雰囲気で桃太郎を輪読。読んでいても聞いていても笑ってしまったらチョークコマを受け取る。お題カードを見ているだけでもう笑えてくる。
一瞬の名画、あるいは無意識の目覚め(エオカク)
指示された図形で10秒以内に絵を描き、どのお題だったか当ててもらう。図形と時間の制限で必然的に抽象画になるが、全員が当たると得点が下がるのでほどよいわからなさが必要だ。
ナビラビ(Rock And Games)
司令役が出したカードで指定のアイテムを集め付きを脱出する2チーム戦ゲーム。最初は自分の司令役が誰かわからないが、同じ方向にやたら誘導してくるなど、自分の動きと次の司令から推理していく。
ビストロ・フリップ(バナナムーン)
手札の食材・料理法と、山引きした料理名を組み合わせて作られるメチャクチャな料理を、お題に沿っていかに美味しいかプレゼン。最後の山引きが無茶振りになる。
単語探知機タンタンゴ(角刈書店)
お題を2つの座標軸で表現して当てる協力ゲーム。プレイヤーが考案したキーワードを縦軸と横軸にして座標チップを置き、お題を表現する。キーワードは汎用性の高いものも尖ったものも用意しておくとよさそう。
みんなでメイキングBLザ・リアクション(ボドまん)
与えられたシチュエーションで手札の顔カードを組み合わせ、自分が考えたセリフを言って誰がよかったかを投票で決める。
バンジョーな感情(SUNABA.inc)
ランダム再生されるバンジョー演奏にぴったりあうと思う表情カードを出して『ディクシット』式で投票。表情の写真にはバンジョー演奏者自身が登場する。
WOLFUME(ウルフューム) – 香水人狼 –(アーアーアーゲームズ)
9種類のアロマから1人だけ違うものが渡されたプレイヤーを、香りの印象で特定する正体隠匿ゲーム。自分だけ違うような気がしたら話を合わせなければならない。
ゲーマーズ
ゲームマーケットの創作同人ゲームは15分前後のものが多いが、中には少数ながら90分クラスのゲーマーズゲームも見られる。コンポーネントが多く値段も高いが、コンスタントに発表することで信用を固めつつあるサークルも出てきた。
オーチャードプラン(luck movies)
中央20マスのアクションスペースにワーカーを置いて個人ボードに果樹を育てて収穫。セットコレクションで売る。弱いアクションスペースを取ると手番順が上がり、強いと下がる。
ACADEMIC SOCIETY(アナログランチボックス)
ワーカープレイスメントで学者の権威を上げ、達成した研究でエンジンビルド。学者は平社員にするとワーカーが増えるが、その分権威が下がってしまう。
詠天記(アクサン・シルコンフレックス)
次にめくられる天気を読んで、稲を育てて勾玉にし、中国に出荷してアイテムをもらう。天気は晴れ・雨・曇り・雷の4種類があり、カウンティングやこっそり見もできる。
レース
すごろくはボードゲームの基本だが、単なるすごろくでは見向きもされない。進め方はダイスだけでなく、カードプレイやアクションポイントなどがあり、テーマもさまざまな趣向が凝らされている。
デモリションレーシング2055(BrainBrainGames)
何マス進めるかを順番に選択するが、親が仕込んだバクダンがあると進めない手本引き風レースゲーム。残ったものを親が選ぶので自爆することもある。コースやマシンによって判断材料があり、読み合いが生まれる。HPがゼロになると脱落。
あるクマ(ASJ)
クマが追いかけてくる森の脱出を目指す1対多ゲーム。1人でもクマに追いつかれたら負け。お互いにバリケードを作って進路を妨害する。クマとヒトの行動順はコイントスで決める。
オボンダービー(http://Azb.Studio)
精霊馬を作ってカード効果で進むレースゲーム。『ソクラテスラ』『サメマゲドン』のように変な馬の姿と名前が楽しめる。
HAKONE(Paix GUILD -ピースギルド-)
選手をドラフトして駅伝。大学別に特性がある。移動は『ロイヤルターフ』方式で、区間によって補正がかかる。
ノルンの船(ノルンの船)
チップ一斉出しでコマを進め、反対側からダイスで進んでくるブラックホールに一番近いところで離脱すれば勝利。『ウミガメの島』式に他のプレイヤーに運ばれたりして計算通りにいかない。
オークション&ドラフト
リソースの分配方法としてオークションを用いるゲームは以前ほど多くないものの、読み合いの熱さで人気は根強い。またオークションに替わるドラフトも人気である。
Stampede(四等星)
好きなだけダイスを握って一斉に振り、出目の合計が多い人が落札するオークションゲーム。支払う金額は2位の出目の合計というヴィックリーオークションを実装し、インフレを誘導している。
サーオボロス(倦怠期)
競り落としたカードに、その後のビッドでチップを置いて完成させると得点になるオークションゲーム。資金のチップはオークショナーで落札してもらったり、カードが完成すると手に入る。
ウィキッド・ラビリンス(タクティカルゲームズ)
握り競りで「魂の欠片」を集めてグレードアップし、得点につなげるセットコレクション。「魔女の気配」を握って落札プレイヤーにマイナスを食らわせることもできる。競り落とせなくても帰ってこない5回の競りでビッドをどう分配するかが悩みどころ。
懐祭(なつまつり)(エレメントクリエイターズ)
握り競りでお祭りイベントを取り、4方面で思い出ポイントを集める。同じものを集中して集めれば得点が高いが、花火は中途半端だと低くなったりもする
肛門で語る人生(トイドロップ)
カード2枚を組み合わせて「お供え物」を競り落とす。組み合わせた数字はホワイトボードに記入され、最後に一番多かった人は脱落。なお肛門自体はゲームに出てこない(HGみたいな「こうもん様」は出てくる)。
仮面村ポーカー(COLON ARC)
1枚だけ配られるカードをドラフト(取るか回す)して村を作り、役を作って得点を競う。
ドラ猫(ミラーハウス)
リアルタイムで自分のデッキのカードを並べてルートを作りアイテムや得点をゲット。カードはドラフトで追加されデッキが構築される。
ギルドビルド(Hakuroku)
アクションドラフトで冒険者を雇い、討伐やセットコレクションで得点を稼ぐ。冒険者はぜんぶ鳥というこだわり。
ギャンブル
ギャンブルにもさまざまなアレンジが加えられ、駆け引きや考えどころが仕込まれている。
パトロンホールデム(こげこげ堂本舗)
2人の冒険者の能力を見て、クエストを達成できそうかベット。一番多く達成できた人が総取りする。アイテムカードで能力が上がるので、現状達成できなくても賭けてみる。
あるちん(あるちん)
茶碗にダイスを入れて役を作るが、6枚の特殊カードを使ってダイスを変更したりほかのプレイヤーから奪ったりできる。
インフィニティカジノ(ゲンゲゲームズ)
チップに金額を自由に書いてベット。ダイスが出ればその金額に応じた報酬を得られる。金額が最大・最小のベットは無効になるが、無制限なので億とか兆は当たり前。無量大数までの一覧表付き。
オーバーポーション(たちあいゲームズ)
ポーションをグラスに注いでいってあふれたら負けるチキンレース。各自がどれくらい注ぐかはカード裏面でだいたいわかるが、意外とそんなに入っていないことも
ユーロスタイル
タイル配置やセットコレクションを組み合わせた作品群。エンジンビルドを取り入れる意欲的な作品も生まれている。
フジヤマクリエイト(ななつむ)
ヘックスタイルを色が合うように配置し、動物コマを置いて得点を稼ぐ。タイルは引いたら両隣のプレイヤーに渡し、渡されたものを配置する。
式神怪道(杓子兵器)
『宝石の煌き』の要領でリソースを集めて式神を取る。陰陽ポイントで2つのコマを動かし、手番順が変わったり得点になったりするのが特徴。
グッドナイトファンタジー(USAPAGAMES)
『ザ・マインド』のように無言で昇順にカードを出すが、カードに効果があって難局を乗り越えたり、新しいカードを購入してクリアしやすいデッキにしたりできる。
かばんにいっぱい(盤上遊戯製作所)
タイルを集め、クマさんのお店で補充して、季節ごとに得点する。1位のコマは木のお家のブランコに乗れる。
ナナカードゲーム(MoB+)
手札と場札から3枚、同じ数字のカードを出す。場札はめくるだけだが、手札は最小または最大の数字しか出せない。中央の7で3枚揃えられれば即勝利。
マイベストシェフ(スマートエイプゲームス)
リソースで従業員を集め、その従業員の能力でさらにリソースを増やしていくエンジンビルドゲーム。従業員カードは効果もイラストもほぼユニーク
ダマフィア(I AM YAW)
ワーカーを6ヶ所に配置して1枚ずつ解決し、報酬や新しいワーカーを得る。同じところに複数のワーカーがいれば、順番に解決して暗殺などが起こる。
その他
以上のジャンル分けに収まりきらないイノベーティブなゲームも数多く発表された。独特のテーマ作品が見られるのもゲームマーケットの醍醐味だ。
幻のナントカ文明(まほろば)
親に質問しつつ子音と母音の組み合わせを表す記号から、指定されたワードを解読。パターンは毎回変わるが、「ン」や濁点・半濁点は同じなのでそこから判明することも。
ごみ屋敷カードゲーム((詫)僭越)
キャラクターの能力を生かして家中のありとあらゆる部屋をごみで埋めることを目指す。昨年の秋に完売し、ブラッシュアップしてクラウドファンディングで再版。
スイレントスイレン(中村誠)
数多く作られたモネ『睡蓮』の微妙な違いを見分ける神経衰弱。
リニアモーターカーを食え!(バグハウス)
モンスターたちが正体を隠しながらゲテモノの闇鍋。モンスターによって勝利・得点条件が異なり、お互い推理しながら鍋に入れるものを選ぶ。
おへやで運動会(ゲーム学科1年1組実験室)
ステイホームで年令を問わず軽く体を動かして遊べるゲーム集。
以上58タイトル、当サイト管理人が全ブースを周って気になったゲームを紹介したが、ごく一部に過ぎず、実際に遊べたものでもない。当サイトでは約1ヶ月にわたって新作評価アンケートを行い、実際に遊んだ方の生の声を伺い、結果を1月に発表する予定だ。