文化コンサルティング―ボードゲームにおける人種バイアス
より良い世界のために
ボードゲーム『フロストヘイヴン』作者のアイザック・チルドレスは、いわゆる文化コンサルタントを雇い、物語に文化的バイアスの可能性がないかチェックしてもらった。チルドレスがこれを行うきっかけとなったこと、そのプロセスはどのようなものだったか、『フロストヘイヴン』の何が変わったのか。そして業界の新しい感性について考える。
ダニエル・ヴュルナー
君はオーク役でプレイしたいだろうか? ボードゲームやロールプレイングゲームで肌が緑のキャラクターを選ぶと、身体的なメリットはあるが、この種族のデメリットもすべて受け入れなければならない。オークは強い。オークはバカだ。オークにはカリスマ性がない。これらは決して偏見ではない。すでにキャラクターメイクの段階から、多くのロールプレイングゲームでは、将来オークの男性や女性が特定の職業に就くことを難しくしている。知能のペナルティが-1だと、魔法使いになるのは簡単でない。また、カリスマ性が平均より1ポイント少ないと、対人能力がうまくいかなくなる。だから、どうしてもオークをプレイしたいなら、斧と盾を持たせよう。体力+1だと、おそらく戦士になれるだろう。オークの評価はこんなものだろう。
トールキンの中つ国からファンタジーフライトゲームズのテリノスに至るまで、ファンタジー世界は、私たちの社会や偏見から解放される機会を与えてくれる。ところがプレイすると多様性よりも、固定的な人種概念が想像力を制限してしまう。これらのゲームは、私たちの社会に対する考え方に影響を与えるのだろうか? チュービンゲン大学の教育学者エドウィン・リシュカは、この問いに対する答えとして美学教育論を提唱する。「知識を直接伝えることに重点を置く学校教育に加えて、メディアやアートを受容することで感覚的な学びもあります。例えば、小説の登場人物に自分自身を重ね合わせますね。私たちは、彼らの経験を共に経験し、共有し、私たちの知識に加えるのです。これは、インタラクションによって特別な役割を担うゲームにも当てはまります。」
ハンス・イム・グリュック出版のモーリス・ブルンホファー社長はこのテーマを誇張せず、もう少し具体的な表現をする。「子供のころにヒーロークエストを遊んだからと言って、バーサーカーにはなりません。」しかしこうも言う。「私たち西洋人は自分たちの世界を作りたがりますが、このような形では社会を真正面から描くことはできません。だから、もしヒーローグループ全体が白人で構成されていたら、子供の私は無意識のうちに有色人種はグループの中でアウトサイダーだと学んでしまうでしょう。」
ボードゲームが社会に影響を与えると仮定した場合、出版社、作家、デザイナーは、どのようにして自分たちのゲームにもっと責任を持つことができるだろうか。『フロストヘイヴン』の例は、ひとつの可能性を示している。
じわじわ進むイモムシレース『ワームアップ』日本語版、2月5日発売
今年生誕100周年を迎えるA.ランドルフの作品で、オリジナルは1994年、ブラッツシュピーレ(ドイツ)から”Würmeln”という題名で発売された。ヴェニスコネクション版・ミルトンブラッドレー版を経て、2008年に”Worm Up!”というタイトルでアバクス社・イーグルグリフォン社などから発売されている。丸いコマを並べてイモムシに見立て、レースを繰り広げる。
4~7とXの手札から1枚を選び、一斉にオープン。小さい数字を出した人から自分のイモムシの最後尾を前に付け替えて進めるが、数字がかぶると進めない。
イモムシは基本的にゴールラインに向かって進むが、自由に方向を変えられるのでほかのプレイヤーの進路を塞いでもOK。さらに「X」を出してかぶっていなければ、自分のイモムシを進める上にゴールラインを動かすことができる。
これだけのシンプルなゲームながら、イモムシがじわじわゴールに向かう様子は本当にイモムシが進んでいるかのよう。ゴールラインの変更に次ぐ変更によって勝敗は最後の最後まで読めないものとなる。バッティングを避け、先行するイモムシの妨害をかいくぐって、チェッカーフラグを切るのはどのイモムシだろうか?