『エジツィア』ルール改訂
昨年秋にハンス・イム・グリュック社(ドイツ)から発売され、高い評価を得ている『エジツィア』のルールが改訂され、同社のホームページで公開されている。また、ユーザーからのルール質問に答えてFAQページも公開した。
新しく追加されたルールは次の2点。
・各プレイヤーは最初からスフィンクスカードを山札から1枚引いてもつ。これによってどの建設現場から着手したらよいか、おおよその目標ができる。
・「ナイル川が流れる」で船を置かないでパスしてもよい。ただしパスしたらこのラウンドはもう船を置けない。 実際、作業員の能力が上がると食料が供給できなくなるときなど、船を置きたくないことがある。
変更されたルールは次の2点。
・スフィンクスカードを2枚引けるナイルカードを使うには、船をスフィンクスの建設場に置くだけでなく、そこで石材と作業員を1つ以上使わなければならない。そうでなくてもこのナイルカードは強いのではないかという指摘あり。
・ラウンド終了時に残っているカードを獲得するナイルカードは、ラウンド終了時ではなく「ナイル川が流れる」フェイズの後に変更になった。これで同じラウンドから畑や石切り場を使ったり、作業員の能力を上げたりできるようになる。
文章として明示されていなかったルールは次の5点。
・すでに船の置かれているマスに置けるナイルカードは、丸いマスにのみ置ける。絵ではそうなっていたが、記載されていなかった。
・畑の改良は1つの畑に2枚つけることもできる。スフィンクスカードのボーナスには、改良後の状態で適用する。迷うところ。
・1つの建設場に投入できる通常の作業員は1つのみ。ジョーカーと区別して。
・「任意」のカードは手番中だけでなく自分の得点計算のときでも使える。余った畑の改良や、石材を得点に買えるカードなどは最終得点計算で使いたいもの。
・ゲーム終了時に得点にできるのは石材コマではなく石材マーカーが置かれているマスの数。迷う人もいるかもしれない。
ほかに、ルールや例から分かるけれども忘れやすいところが、spielbox-onlineやBoardgame Geekのフォーラムから確認された。
・ナイルカードの効果で2枚追加で引いたスフィンクスカードを戻しても得点になる。だまって2点確保できるので強いと言われる。
・ピラミッドで下の段が未完成でも、その石の土台2つができていれば上の段に取り掛かれる。例ではそうなっている。
・オベリスクだけでなく墓場を作っても採石場か食料市場のマーカーを下に移動できる。標識がオベリスクのところに書いてあるので忘れやすい。
・未使用の作業員2つを同時に使用できるというナイルカードは、船を置かないと使えない。船を置いたときに追加で1つ使えるということ。
・最終得点計算では最も進んでいるプレイヤー=4番タイルのプレイヤーから始める。前ラウンドの最後にタイルを配りなおすためイコールになる。
・2人プレイで石材コマがなくなったら、使っていない色の石材コマを使ってもよい。ちなみにspielboxのレビューでは2人プレイはオススメしないとのこと。
・食糧供給の最後のマスまで行っても、1食料足りないごとにマイナス1点。これも標識が分かりづらい。
あとそれから、メビウス訳では誤解を招きそうな箇所があった。
・使用する作業員1つの能力を3追加するナイルカードは、一時的に3あげるだけ。作業員マーカーは移動しない。
・スフィンクスカードを2枚持つことができるナイルカードは、無条件で取れるのではなく、スフィンクスの建設場で2枚以上取ったときにのみ使える。船を置いて、作業員と石材を使わなければならない。
定評のあるハンス社でこれだけルールに不備があったのは、作者がイタリア人だったことと無縁ではないだろう。デザイナーチームのアッキトッカはこれまで『レオナルド・ダ・ヴィンチ』『コムニ』『ゴースト・フォー・セール』などの作品があるが、全てイタリアのメーカーから出ている。
・Hans im Glück:Egizia – Regelfragen
倉庫の街(Speicherstadt)
ゲーム内容はこちら。いかにもドイツゲームらしい、骨太でシンプルなリソースマネージメントゲームであるが、実際に遊んでみたら印象はかなり違って、リソースよりお金に終始苦しめられるカツカツなゲームだった。シャハトかと思ったくらい。
ゲーム開始時のお金は5金。このお金でカードを買うわけだが、その値段は、そのカードに置かれたコマの数である。需要が多ければ多いほど高いというわけだ。しかし実際、どのカードも1金で買えることはまずなく、2〜3金でやっと1枚だけ手に入る。ラウンドの最後に1金が補充されるが、ちょっと奮発しただけでたちまち一文無しになってしまう。奮発しなくても、2〜3金で次のラウンドを迎えることが多い。
2〜3金といっても、2金と3金とでは格段に違う。お金がないと、たちまち足元を見られ、1個コマを置かれただけで買えなくなってしまうからである。だからほしいカードには、コマを置くのを後回しにして高騰を防ぎたいところだが、そうするとお金を持っている人に先に買われてしまう恐れもある。何というジレンマ。「スタートプレイヤーマーカーのメタルコインは支払いに使えません」とわざわざルールに明記してあるのも、やってみるとよく分かる(これが支払えたら!)。
つまり、このゲームはプレイヤーの手持ちが完全に公開された変則競りゲームなのである。「相手はこちらを買いたそうだから、お金がなくなってあっちのカードはもう買えない。だったらあっちに今置けば安く買えるはずだ」というように先の先が読める。その読みに対しどこまで意表をつき、盲点になったカードを安く買えるかが勝敗を分けるだろう。
勝ち筋はひとつではないから、自分の戦略を変えて相手のほしいカードを奪っても「お仕事」にならない。その優先順位を読み誤ると、トッププレイヤーの独走を許してしまいかねない。ときには下位プレイヤーが共同でトップ目がほしいカードの値を吊り上げることもある。競りゲームの一種だから当然といえば当然だが、コマ1個の置き方が全員に大きな影響を与えるという、かなりプレイヤーインタラクションの強いゲームである。
tomokさんのちょっとした手違いで大量の塩を送ってもらってダントツ1位。消防士のポイント争い、美味しい契約や商人の妨害、そのほか勝利点カードの奪い合いなど、毎ラウンド出てくるカードによって違う駆け引きが楽しめた。
Speicherstadt
S.フェルト/エッガートシュピーレ(2010年)
2〜5人用/8歳以上/45分