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ファンタジスタ

ボードゲームには、デザイナーやメーカーが意図したターゲット(子供・ファミリー・フリーク)があり、それに合わせてシステムやイラストがデザインされている。
システムについていえば、子供向けは運を楽しむもの・記憶もの・ギミックものが代表的で時間は10〜15分くらい。フリーク向けは長期的戦略(ストラテジー)を楽しむもの・カードの種類が豊富なものなどで時間は2時間を超えるものも少なくない。ファミリー向けはこの中間で、短期的戦略(タクティック)を楽しむものが多く、時間は45〜60分くらい。端的には対象年齢の項目にこの違いが現れる。
このようなターゲットを逸脱して遊ぶのはまったくの自由だし、実際楽しいこともよくある。ハバのゲームは子供向けだが、『かくれんぼオバケ』のように大人が真剣に遊ぶとまるで別ゲームに変貌するものも少なくない。ただし、その結果つまらなかったとしても、自分をターゲットとしていないゲームを選んだ人間の問題であり、ゲーム自体に矛先を向けてはならない。ターゲットを逸脱して遊ぶということには、そのようなリスクがあるということは認識しておかねばならない。
さてその上で、ターゲットのマッチングをどこまで逸脱しても楽しめるかが、ボードゲーム愛好者のチャレンジであり、楽しみである。井上ひさし氏の言葉をもじると、
 むずかしいゲームをやさしく、
 やさしいゲームををふかく、
 ふかいゲームをおもしろく、
 おもしろいゲームをまじめに、
 まじめなゲームをゆかいに、
 ゆかいなゲームはあくまでもゆかいに
こんな風に遊べたら楽しい。メーカーやデザイナーが意図した遊び方をするだけでなく、その上に新しく創造的な楽しみ方を見つけられる人が勝者なのではないだろうか。
実際、ルールを一読しただけは想像もつかない妙手を見つけたり、誰もが予想できず、「ファンタジスタ」と呼びたい一手に魅了されることがある。単にひねくれただけ、奇を衒っただけの手になってしまうこともあるが。
難解なゲームの終盤、勝利への道筋があっさり浮かんできたときの興奮、運ゲームだと思っていたものに考えどころがあると気づいたときの唸り、完全情報公開ゲームで遊びの一手が後々効いてくる不思議、コミュニケーションゲームを真顔で遊ぶ中からこみあげてくるおかしさ、歴史をテーマにしたゲームで発見される登場人物の気持ち……そのような意外がまた、ボードゲームの醍醐味である。
このような遊び方は、経験者となった今のほうが得意かといえばそうでもなく、むしろ始めたばかりの頃に多く感じていた気がする。そんな感性を時折確認して、大事にしていきたい。

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セティ(Seti)

すれ違いざまの攻防


今回、くさのまさんと30年ほど前のアブストラクトゲームをいくつか続けて遊んだが、その中で一番だったのがこのゲームである。細長い道を、バックギャモンのようにすれ違って、相手より早くゴールに着くゲーム。1979年、第1回目のドイツ年間ゲーム大賞で美術賞を獲得した。
スタートラインにファラオと神官を並べてスタート。ファラオは八方向に1マスずつ、神官は斜め2マスか桂馬(ナイト)飛びができる。相手のコマのいるマスに入るとコマを取ることができ、取られたコマは逆さまになって自分のスタートラインからスタートする。
そのほかに死神の船というタイルがあり、これを敷いたコマは取られなくなる。しかし敷くのも外すのも1手番かかり、一度敷いても移動するたびに外れてしまうし、布石のために置いても単独では取られてしまうので、無敵ではない。
自分のコマを1つ、ゴール(相手のスタートライン)まで進め、かつそのときに取られなかったら勝ち。1つというところがポイントで、途中までは陣営を固めていくが、相手とすれ違った瞬間、単独で一気に駆け上がる。
くさのまさんと対戦。膠着するかに見えたが、くさのまさんが死神の船タイルをうまく使って着実に攻めてくる。私があちら立てればこちら立たずになるという、絶妙な配置だった。2戦2敗。
コマの数が基本ゲームで3個、発展ゲームで5個しかないため、一手でも気を抜くことができない。すごく頭を使ったが、タイルの取り外しがゲームを深くしていて面白かった。
Seti
A.シュタイナー、H.ヴィット/ビューテホルン(1979年)
2人用/8歳以上/30分
絶版・入手難