タケノコ(Takenoko)
上野動物園、ジャイアントパンダの交尾確認(日テレNEWS24)
これでニュースになるくらい、パンダは人気者である。フランスのメーカーがパンダのボードゲームを作るとき、舞台を中国ではなく日本にしたのも当然のことだっただろう。作者のA.ボザがこの作品を作ったのは、2003年に上野動物園を訪れたときパンダ像を見たことがきっかけだったとインタビューで答えている。この作品が日本語版になったのは、作者にとってフランス年間ゲーム大賞受賞に勝るとも劣らない喜びだっただろう。
ときは中世。中国の皇帝から日本のミカドに友好のしるしとしてパンダが贈られた。臣下たちは、竹園を用意してパンダの世話をするという仕事をミカドから与えられた。土地を耕し、灌漑し、3種類の竹を育てる。自分に与えられた得点パターンを作り出し、ミカドの期待に応えよう。
「13歳以上」という表示があるが、ドイツゲーム的には8歳以上くらいの難易度である。サイコロを振って天候(この手番のアドバンテージ)を決め、2アクションを行い、目的カードのパターンを作って得点を増やす。
アクションは六角形のタイルを置く、川を引く、庭師を移動して竹を育てる、パンダを移動して竹を食べる、新たな目的カードを引くの5種類。基本的に2アクションは違うものをしなければならない。
目的カードはタイルが決められたパターンで並んでいる、竹が決められたパターンで生えている、パンダが決められたパターンの竹を食べるの3種類。難しいものほど得点が高い。何手番かかけて頑張るか、あきらめて新しい目的カードを引くか迷うところだ。誰かが規定枚数の目的カードを達成したところでゲーム終了となり、得点の高い人が勝つ。
竹はタイルを置くだけでなく、川を引いて、庭師を移動して初めて育てられるので、手間がかかる。さらにそこにパンダを移動して食べさせるのはなかなかたいへん。かと思えば、ほかのプレイヤーに便乗してあっという間に進むこともある。盤面の状況を見て、うまく流れるに乗れるかがカギだ。
竹園にはパンダが侵入禁止のタイルがあって、パンダがあまり動けない。近くの竹ばかり食べまくるパンダ。私はタイルのパターンボーナスを狙ったが、その色のタイルがなかなか引けない。方針転換して竹を揃える目的カードでやっと得点し始めたが、時すでに遅し。
一方、順調に得点できたくさのまさんやcarlさんも、いつの間にかできあがっていた感じだったという。場をコントロールするよりも、場に適応することが求められるゲーム。目的地カードのうちどれが一番近いか、よく見極めなくてはならない。
Takenoko
A.ボザ/マタゴー出版(2011年)
2〜4人用/13歳以上/45分
ケベック(Québec)
Win-Winで作るケベックの街
ケベック州はカナダ東部に位置し、大都市のモントリオールを擁する。カナダで唯一、フランス語を公用語にしている州である。ここで2008年から斬新なパーティーゲームを発表してきたメーカー、ル・スコーピオン・マスク社が初めて本格的なボードゲームに取り組んだ。これにフランスのメーカー、イスタリ社が協力し、北米とヨーロッパで同時にリリースしたのが『ケベック』である。州都ケベック・シティーが建設された1608年から現代に至るまでの400年間を描く。
昨年のエッセン国際ゲーム祭で、アスモデ社傘下のフランスメーカー共同ブースにおいて発表された新作で、体験卓はいつもいっぱい。何度も並んだが卓が空かず、結局帰国後に遊ぶことになった。いろんなアイコンが書かれた丸いタイルにコマを乗せていく様子がゲーマー的にそそる。
ボードに並べられた丸いタイルは街の建物で、4つの時代(ラウンド)にわたって建設していく。建設に携わったコマは5つのエリアに送り込まれ、マジョリティーを競う。さまざまな得点方法が用意され、どこに力を入れれば得点が上がるのか、抜け目なく考えなければならない。
自分の番にできることは基本的に2つ。建築士を新たな建物に置くか、建築士がいる建物に労働者コマを置くか。建物には特殊効果があり、労働者コマを置くたびに使える。
建築士としては、労働者にたくさん来てもらうとその建物の価値が上がる。誰も訪れてくれないままだと、泣く泣く放棄しなければならないこともあるので、みんなが求めているものを予想して新たな建物を始めたいところだ。店を開いて客を待っているような感じで、ゲーム中も「いらっしゃい」「毎度ありがとうございます」といった会話が起こった。
建物は訪れた労働者の数にかかわらず、建築士が移動した時点で完成となる。完成した建物の労働者は、建物の色に従って5つのジャンルのエリアに送り込まれる。それぞれのエリアでラウンドの最後に最多数を競うので、これも建物の選択に影響を及ぼす。その時代の建物が全部できるか、誰かが労働者を使い切ったらラウンド終了。
ラウンドの最後には、1エリアずつ得点計算を行う。まずは全員、置いてあるコマの数だけ得点がもらえるが、一番多かった人は半数を2つ目のエリアに持ち越せるのである。持ち越せば、またトップ賞を取れる可能性が上がる。そしてそこでトップ賞を取った人は、半数を3つ目のエリアに…というようにして5つのエリアを回る。ワイングラスをピラミッド状に重ね、上から水を注いでいくようなイメージ。上流にたくさんコマを配置したほうが有利だ。
4ラウンドでゲーム終了。最後に、自分が完成させた建物のボーナスがある。労働者がたくさん訪れているほど、また建物が隣接しているほど得点が上がる仕組みで、最後に大得点が入る。特殊能力でも、その時点での労働者コマの状態で得点できるものがあり、地道に積み重ねることも必要だ。
江別自宅ゲーム会で4人プレイ。第2ラウンドに城砦にまとめてコマを置き、大量得点できた。あとは特殊能力ちまちまと稼ぐ。序盤に先行したため、建物は分断されてつながらなかったが、最後のボーナスで一気に追い上げたほかの人を振りきって逃げ切り1位。筒井さんが辺鄙なところに建物を作り、誰にも利用してもらえず笑っていると、そこからどんどん隣接させて大きな島を作ったのは見事だった。
エリアマジョリティーゲームの特徴だと思うが、長期的戦略よりも、相手の出方に応じた臨機応変さが問われる。下手な手を打ったように見えても後々功を奏したリ、逆にベストだと思ってもほかの人に崩されたりする。先の先まで読めない分、周囲をよく観察しておかなければいけないところが、近年のゲーマーズゲームには珍しいプレイ感で、(トレンドではないのかもしれないが)楽しい。
Québec
P.ボードワン&P.ポワソン・マルキー/ル・スコーピオンマスク&イスタリゲームズ(2011年)
2〜5人用/13歳以上/90分
ボードゲームショップ検索:ケベック