アダムとイブ(Adam et Eve)
ボードゲームの禁断の果実
昨年のエントリー「既婚ボードゲーム愛好者」で、買い過ぎや仲間はずれで奥さんの不興を買う愛好者の姿を見た。この悩みに一縷の望みをもたらしてくれそうなゲームが登場した。東京・中野でフェティッシュなボードゲームを扱う異色のショップ、ドロッセルマイヤーズがプロデュースした「男女協力型心理洞察カードゲーム」『アダムとイブ』である。
かくいう管理人も、妻とはめったにゲームをしない。日中は平日も土日も仕事や家事でいっぱいで、夜は子供と一緒に朝まで寝てしまう。そのため、このゲームのリリースが明らかにされて以来、とても楽しみにしていた。そしてようやく、お正月に満を持してプレイ。
2人でプレイする場合は「創造編」「楽園編」「地上編」の3つの難易度を選べる。1ゲームは5分くらいなので、創造編から全部遊んでもよい。2人のプレイ経験に合わせて、ちょうどよいところで止めればよいだろう。
太陽と月でそれぞれ1〜6のカードがあり、各自5枚ずつある手札を、5回交換してポーカーの役を作る。2人の役が一致していれば得点。何の役を狙っているか相談してはならず、相手の捨て札から推察しなければならない。
最初の手札が良かったからといって全く交換しないでいると、相手にサインを送ることができず、ひとりよがりな役で失敗に終わってしまう。かといって相手の様子を伺ってばかりいると、ワンペアくらいで終わってしまうかもしれない。3回のプレイの合計が、2人の相性ということになっている。
創造編は、ジョーカーのリンゴがあるので役を作りやすい。相性60点。「余裕だね」「ぬるいくらいだね」楽勝ムードで楽園編に進む。
楽園編ではお邪魔カードの雷が登場し、雷カードを捨てるたびに中央の神様/蛇モードが変わる。神様モードではリンゴがNGで、蛇モードでは太陽がNG。役が共通しなかったり、モードで許されないカードがあったりすると即ゲームオーバーなのでなかなか得点を伸ばせない。「信じてるよ!」「え〜」25点。ここから先は茨の道と知りつつ、地上編へ。
地上編はさらに、中立プレイヤーが登場する。毎回1枚ずつカードをめくり、5枚で偶然できた役よりも、2人の役が上回らなければならない。中立プレイヤーはジョーカーが使えるので強く、厳しい戦いを強いられる。「もうスリーカードだよ?」「どうしよう……」20点。
妻は地上編が一番よかったそう。厳しい戦いだからこそ、フルハウスなどの高い役が、ぎりぎりのところでできたときはハイタッチをしてしまった。相手の手札を読むばかりでなく、ハイリスク・ハイリターンで高い役を狙うか、安全確実にいくかというポーカーの楽しさもある。
同性ではあまり盛り上がらなさそうだし、カップルでも、いつもボードゲームを遊んでいる方向きではない。エデンの園に降り立ったアダムとイブがそうであったように、ボードゲーム経験の少なさが、このゲームを楽しむ上でポイントであるように思う。このゲームから、2人でボードゲームにハマる人たちが増えたらいいな。
Adam et Eve
渡辺範明/ドロッセルマイヤー商會(2011年)
2人用/10歳以上/5〜30分
ドロッセルマイヤーズ:アダムとイブ
ドイツ・メンサ賞に『世界の七不思議』
対象となったのは2007年から20011年の5年間にドイツで発売されたボードゲーム。運だけのゲーム、知識だけを問うゲーム、キッズゲームは除く。会員が1人5タイトルまで推薦でき、推薦数の多かった上位5タイトルが12月の決選投票にかけられる。
決選投票では『世界の七不思議』が15.5%で2位の『ドミニオン』15.4%をわずかに上回った。3位は『ストーンエイジ』の13.5%、4位は『ビッグ・ペンタゴ(Das grosse Pentago)』9.6%、5位は『トリオビジョン(Triovision)』9.0%。昨年も2位だった『ドミニオン』が昨年に引き続き接戦を繰り広げたが、来年からは過去に5位以内に入ったゲームは除外されることになった。
ほかに、審査員推薦(Spieletipp)としてコスモス社の『ウルル(Ulutu)』と『カミサド(Kamisado)』も選ばれている。
『世界の七不思議』は配られたカードから1枚選んでは、残りをとなりの人に渡す(ドラフト)というようにして、選んだカードを並べて都市を建設するカードゲーム。7人まで遊べるプレイ人数の幅と、何人で遊んでも30〜40分というプレイ時間の短さ、そして軍事、文化、土木、七不思議など、戦略と展開の多様さが人気を呼び、日本語版も発売されている。『ドミニオン』も成し得なかった四冠(ドイツ年間エキスパートゲーム大賞、ドイツゲーム賞、アラカルトカードゲーム賞、国際ゲーマーズ賞)を達成するなど、2011年のゲーム賞を総なめしている。
・Mensa Spielepreis