コソボ治安維持部隊にボードゲーム
ドイツ年間ゲーム大賞(Spiel des Jahres)委員会は7月中旬、コソボ駐留中のドイツ部隊にボードゲームを持ち込んで慰問したことを紹介している。
南欧・旧ユーゴスラビア領に位置するコソボは2008年、セルビアから独立したが、独立を認めないセルビアの反発、アルバニア人と非アルバニア人との民族紛争が収まっておらず、NATO関係国によるKFOR(コソボ治安維持部隊)が駐留している。隊員は全部で4900人おり、そのうちドイツ人が700名を占める。
ドイツ年間ゲーム大賞委員会は選考委員、役員、アシスタントの5人でコソボを訪問。250タイトル、3500ユーロ分のボードゲームをもちこみ、ルール説明付きで5回、ボードゲームの夕べを開催したという。持ち込まれたのは『カタンの開拓者たち』『ブラフ』『カルカソンヌ』『チケットトゥライド』などの大賞受賞作品から、『ニムト』『ごきぶりポーカー』『スカルキング』などのカードゲーム、『くるりんパニック』『カラバンデ』『インドアカーリング』などのアクショゲーム、そして『世界の七不思議』『アンドールの伝説』『村の人生』などの重量級まで。
ドイツ兵の多くにははじめからのボードゲームファンが多く、コソボに向かう飛行機のパイロットから『アンドールの伝説』のことを尋ねられ、現地では毎週「人狼ナイト」が行われていたという。
ドイツではシュミット社が第一次世界大戦中に『イライラしないで(Mensch ärgere dich nicht!)』を戦地に送り、国民的ボードゲームになったという歴史があり、軍隊でのボードゲームは余暇の一つとして認知されている。
ドイツ年間ゲーム大賞委員会の目的は授賞だけでなく、ボードゲームを文化財として家族や仲間に推奨することであると宣言されている。以前には小児病院を訪問して、入院中の子供たちにボードゲームを遊んでもらった実績がある。ボードゲームを通して外国に住む隊員に故郷のことを思い出し、平常の状態を取り戻してほしいという狙いは、うまく叶ったようだ。
リンク先には軍服を着た隊員がボードゲームを楽しむ様子が移されている。
・Spiel des Jahres:Spiel des Jahres bei der Bundeswehr im Kosovo
バトルシープ(Voll Schaf)
一手先に取られて
はじめに今回の舞台となる牧場を、タイルを並べて作る。1枚のタイルは4マスの六角形となっていて、順番に好きなように並べていく。穴だらけの牧場にするもよし、広がりのある牧場にするもよし。すでにここから戦いは始まっているのだ。自分の色の羊タイルを重ねて、ボードの端の好きなところに置いたらスタート。
自分の番には、重なった羊タイルを好きな枚数で分割し、その分割した何枚かを一直線上に障害物にぶつかるまで移動する。残った何枚かはそのマスにおいていく。こうして羊の群れがあちこちに広がっていくことになる。順番に行って、移動できるマスがなくなるまで続け、より多くのマスを自分の色の羊で専有できた人の勝ち。
直線に移動してだんだん移動できるところがなくなっていくのは、『それはオレの魚だ!(Hey, That’s My Fish!、2003年)』とプレイ感が似ているが、ゲームの準備が楽なのと、羊コマに重量感がある(ポーカーチップのような感じ)のがいい。見た目とは裏腹に、ゲームが始まるとすぐたいへんシビアなゲームであることに気づくのは同じ。
3人で10分ほど。囲碁のような感覚で、ほかの羊の侵入を阻んで自分だけの領地を作りたいところだが、そうは問屋がおろさない。はじめはのんびり広がっているのが、一度火種がつくと、みんなが一挙に押し寄せてくる。うず高く積み重なった羊が周囲をブロックされて動けなくなったら悲惨だ。相手の羊タイルの枚数を気にしながら、どこを優先的に取るべきか考えなければならない。「うわー、そこ取られた!」「えー、こっちに来るの?!」先の先を読むゲームだが、先の読めない展開があちこちで起こって盛り上がる。
Voll Schaf
F.ロッタ/ブルーオレンジ(2013年)・フッフ&フレンズ(2014年)
2-4人用/7歳以上/15分
テンデイズゲームズ:バトルシープ