プランタ・ヌボ(Planta Nubo)
タイル上にタイルを重ねる
ソーラーパンク世界で大木の上にある庭園で花や植物を育て、飛行船で運び、酸素を生産するゲーマーズゲーム。デザイナーはローゼンベルクと『ラ・グランハ』のコンビ、出版社は『アップルジャック』のザ・ゲームビルダーズ(ドイツ)。シュピール’23で発表され、スカウトアクションでは「規定票未満で評価の高かった作品」に挙げられている。シュピール会場で購入。
ゲームのメインはポリオミノパズルだが、さまざまな形の花床タイルを配置して、その上にある花キューブを配達し、キューブがなくなったところに森タイルをかぶせるという複層的な構造になっている。さらにその周囲にモジュールカードを配置して起動させることにより、アクションのコンボを生み出している。
中央には3×3枚のアクションタイルと、その周囲に花床タイル12枚が並んでおり、2枚のタイルの間に工具タイルを置いて、そのどちらかを実行する。最初は24の選択肢があるが、同じタイルには同じ工具を隣接しておけないというしばりのために、選べる場所がどんどん減っていく。ワーカーではないが、メカニクスとしてはワーカープレイスメントといえるだろう。
これによってできることは花床タイルの配置、その上に出てくる花キューブの配達、花床タイルを置くための障害物の除去、プレイヤーボード周囲のモジュールカードの起動などの基本アクションである。花床タイルはポリオミノになっていて、後から森タイルをかぶせるには隙間なく敷き詰めなければならない。配達できる花キューブの色を見つつ、どの花床がよいか考える。隙間は1マスの土タイルで埋めることもできる。
花を配達するとグリーンエネルギーが発生し、その数だけエネルギーダイスがプレイヤーボードを周回する。これによってモジュールカードがスタンバイになり、さまざまな追加アクションが可能になるほか、半周するたびに新しいモジュールカードや酸素ファームカード(終了時得点)を追加できる。エネルギーダイスをいかに早く回し、効率の良いカードコンボを作れるかが勝敗につながる。ゲーム中や終了時に獲得した酸素ポイントの合計で勝負。
ほかにも余った工具で起動する職人、プレイヤーごとに異なる条件達成により上がる定期収入、ダブルアクションなどを可能にするボットポイント、花から土タイルを作るコンポストなど、要素てんこ盛りで非常に遊びごたえがあり、自然保護という流行のテーマと相まってリプレイ欲求が高い。プレイ時間は初回3時間くらいかかるが、1つのアクションによって別のアクションが起動する連鎖が気持ちよく、カードテキストがないのも好みで、また遊びたくなっている。
Planta Nubo
ゲームデザイン:M.ケラー&U.ローゼンベルク&A.オデンダール/イラスト:L.ジーグモン
ザ・ゲームビルダーズ(2023年)
1~4人用/12歳以上/プレイヤー人数×30分
(国内未発売・日本語版情報未確認)
書籍『ボードゲームで社会が変わる: 遊戯するケアへ』11月20日発売
ボードゲームこそが属性や能力主義による社会の分断を乗り越える「共存の哲学」である。プレイする束の間、「個人の属性」も「能力の違い」もリセットする、遊戯(ゆげ)の力が、必ずこれから、誰もが一緒に〈楽しめる〉社会をつくっていくというテーマで対談。また三宅香帆(書評家)、辻田真佐憲(近現代史研究家)、安田洋祐(経済学者)、小川さやか(文化人類学者)、安田峰俊(ルポライター)、三牧聖子(政治学者)の各氏が専門に関連するボードゲームをプレイした体験記も収録されている。
おすすめボードゲームや購入ガイドなど、ガイドブック的な側面は残しつつも、思想面を掘り下げるところが本書の特徴。著者の與那覇氏の精神科デイケアでの体験、当サイト管理人の普及活動やボードゲームシーンの振り返りを手がかりに、目的指向ではない「ボードゲームをただ遊ぶ」ことの重要性を考察した。愛好者から未経験の方まで、ボードゲームの魅力を伝える実験。
大上段に構えたタイトルですが、「趣味を思想にする」という試みに興味のある方はご一読頂ければ幸いです。
もくじ
第1章 なぜボードゲームに注目するかー「ブーム」の理由と現在地
第2章 ボードゲームをどう楽しむかー有識者6名とのプレイング
第3章 どんな未来をボードゲームは開くかー「遊戯(ゆげ)するケア」の可能性
第4章 ボードゲームはなにを私に考えさせたかーリワークデイケアでの体験から
第5章 ボードゲームはどこまで世界を掘り下げるかー「えっ!」と驚くテーマの作品たち
はじめての買い方ガイド① 超・初心者のためのボードゲーム購入術
はじめての買い方ガイド② シチュエーション別おすすめボードゲーム10選
- 河出書房新社:ボードゲームで社会が変わる: 遊戯するケアへ
- 読書メーター:ボードゲームで社会が変わる: 遊戯するケアへ
- アゴラブックレビュー:一緒に楽しむのに「能力」はいらない
- 読売新聞書評
- こここ:今なぜ、対面で“遊ぶ”のか? 能力主義を乗り越える一冊(遠藤ジョバンニ)
- kimilab journal:ボードゲームの体験を言葉にし、思想にする~(石田喜美)
- ソークオフだよ人生は:『ボードゲームで社会が変わる』におけるウォーゲームの微妙な扱いについて(中黒靖)
- note:ボードゲームと社会(ふかくさ)
- note:ボードゲームと学びに関する4つの立場(Yuki FUKUYAMA)
- 琥珀色の戯言:【読書感想】ボードゲームで社会が変わる: 遊戯するケアへ(fujipon)
- 教育ICTリサーチ ブログ:『ボードゲームで社会が変わる 遊戯(ゆげ)するケアへ』ひとり読書会(為田裕行)
- note:ゲームのアドバイスとアドバイスしすぎと「能力」の主語の移行と『ボードゲームで社会が変わる』 (米光一成)
- NEdit Lab:ボードゲームで医療が変わる!?(小倉加奈子)