『イーオンズ・エンド:新たな時代』日本語版、2月22日発売
協力型デッキビルド『イーオンズ・エンド』(2016年)シリーズ作品として2019年に発売された。「探索行」キャンペーンで何回かゲームを行い、プレイするたびにプレイヤーも敵も強くなっていく。
カードに書かれたストーリーを読み進めながら地下からの侵略者ネメシスと戦う。初期状態で公開されているネメシスは1体のみだが、カードに従って指定の封筒を順番に空け、より強力なネメシスに挑む。1ゲーム終わるごとに手に入る「トレジャーカード」でプレイヤーも成長していく。
キャンペーンがクリアしても、ランダムな強敵に挑むことができ、他のシリーズを追加すれば、より多くの組み合わせで戦える。また、付属のプロモカード27枚には、ネメシスカード1種、呪文カード3種、宝石カード1種が含まれている。
内容物:ルール説明書 1冊、初ゲームの手引 1枚、探索行終了後の手引 1冊、体力ダイヤル 2個、封筒 7通、カード 441枚、プレイヤーマット 4枚、ネメシスマット 1枚、巣窟マット 1枚、体力トークン 45個、チャージトークン 24個、波動トークン 20個、飛行体トークン/幼体トークン 19個、パワートークン 10個、プレイヤー番号トークン 7個、カード仕切り板 19枚、破孔タイル 19枚、プロモカード 27枚、その他(カードサイズ:63.5×89mm)
ボードゲーム市場は飽和しているか
今月17日、ファンコゲームズ(アメリカ)が親会社の業績不振によりゴライアスゲームズ(オランダ)に売却されるというニュースが報じられた(BGG News)。ファンコゲームズは玩具メーカーのファンコ社が2019年にフォレスト・プルザン・クリエーティブ(アメリカ)を獲得して始めたレーベルで、『パンナム』やディズニーなど版権ものを制作してきたが、5年ももたなかった。
このニュースに関して、アレーキャットゲームズ(イギリス)は、市場はだんだん飽和してきているというコメントを出した。「家庭に保管できるボードゲームの数は限られているため、ゲーマーは自然と購入に慎重になる。(少なくともヨーロッパでは)生活費の高騰と相まって、購入するゲームが減っている。出版社は慎重かつ冷静にならなければならない。」
ボードゲーム市場の飽和はこれまでに時々言われてきた(BGG Forum/BGG Forum/Reedit)。クラウドファンディングによる粗製乱造、既存のメカニクスの使いまわしなどが理由だが、一愛好者としての日常感覚に基づいたもので、根拠となるデータは挙げられていなかったように思う。
Boardgamegeekに登録されている新作(拡張セット除く)の数を数えたところ、2019年の5119タイトルをピークに減少に転じていることがわかった。2023年は4768タイトルと、ピーク時から7%減少している。
また、キックスターターの卓上ゲーム部門において、成功したプロジェクトの出資総額が2021年の2億7000万ドルから、2022年には2億3640万ドルと、12%下落している(2023年は未発表)。ただしタイトル数は増加の一途をたどっており、1タイトルあたりの平均出資額が7万7000ドル(1100万円)から5万8000ドル(860万円)になった。
国内では先日報じたように(TGIW)、日本語版ボードゲームが2021年の235タイトルをピークに減少に転じ、2023年には196タイトルと17%下落した。矢野経済研究所の発表では国内ユーロゲーム市場が2020年の68億6千万円をピークに、2021年は67億4千万円、2022年(見込)は66億円と減少している(TGIW)。各データの推移は以下の通り。
以上減少傾向に転じたデータを見てきたが、2020年以降はコロナ禍・ウクライナ侵攻・物価高の影響があり、今後これらが解消されて回復することも考えると、これらのデータをもって市場が飽和状態にあるとは言えない。また、古参ゲーマーのゲーム棚は確かに「飽和」していても、新しいゲーマーが入ってくる限り、市場はまだまだ飽和状態にならないだろう。エッセン・シュピールもゲームマーケットも参加者が増え、コロナ前のレベルに戻りつつある。教育現場でのボードゲーム活用や、Z世代からの人気、これまでボードゲームがポピュラーでなかった新興諸国での流行により、市場はまだまだ伸びるという予測もある(Play Today)。今後減少傾向がどれくらい続くのか、今後の推移を見守っていきたい。
近年の人口減少について「明治時代の日本人口が3000万人だったから問題ない」という話と同様、むしろここ最近のリリースが多すぎたから、健常な数に戻りつつあるともいえる。選択肢過多効果(選択肢が多すぎるとかえって選べなくなる現象)を考えると、リリース数が減少することは必ずしも悪いことではない。それに減少したといっても、10年前の数値と比べると依然としてずっと多い。ボードゲームという趣味自体に飽きたのでなければ、「遊びたいゲームが見つからない」ということは当分ないだろう。むしろ、何年か前に1度遊んだきりになっているボードゲームを、棚から取り出して遊ぶチャンスが増えたとポジティブにとらえたい。
(縦軸の目盛は新作数が1000ずつ、日本語版とKS成功額(ミリオンドル)が100ずつ)