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『スーパーマリオパーティ』はボードゲームか?

先日、近くの小学校の「将棋・囲碁・オセロクラブ」にボードゲームの講師として招かれ、いくつかのボードゲームを紹介してきた。1グループ4~5人で何グループかに分かれ、各グループで代表を決め、その代表がゲーム置き場から遊ぶボードゲームを選んでくる仕組み。『ブロックス』、『ウミガメの島』、『ナンジャモンジャ』、『アップルトゥアップル』、『おばけキャッチ』、『ハッピーサーモン』が遊ばれた。『ナンジャモンジャ』はすごろくやの丸田さんが「Youtubeのおかげで、知らない小学生は今いない」と仰っていたが、その通りだと思った。「知ってはいたけど、初めて遊んだ」と楽しんでいた。

さて、クラブ名から分かるように、普段はこういったボードゲームを遊んでいない小学生に対し、まずボードゲームの全体像を概観してもらおうと、10分くらい時間を頂き黒板で説明した。将棋・囲碁・オセロと、人生ゲーム・モノポリー・麻雀を対置し、その違いを考えてもらって、プレイ人数や運の要素の話をした。

さらにこれらをまとめてボードゲームとして括り、その特徴を考えてもらった。コマやサイコロなどの道具を使うこと、人と対面して遊ぶことに加えて話をしたのが「電源を使わないこと」だったが、これについてNintendo Switchの『スーパーマリオパーティ』はどうなのかという、いい質問が出された。

将棋・囲碁・オセロ・麻雀もオンラインで当たり前のようにプレイされているし、近年は『カタン』や『アグリコラ』などの定番から、『テラミスティカ』や『テラフォーミングマーズ』などのゲーマーズゲームまで、人気ボードゲームのスマホアプリが続々とリリースされ、遊んでいる愛好者も少なくない。また、『アルケミスト』『マンション・オブ・マッドネス』『アンロック!』『ワーワーズ』など、アプリをダウンロードしたスマホやタブレットを使うボードゲームも増えてきており、電源の有無のボーダレス化が進んでいる。

『桃太郎電鉄』から『サモンズボード』にいたるまで、デジタルゲームにもボードゲームというジャンルはずっとあった。『スーパーマリオパーティ』もそれに連なるものではあるが、Nintendo Switchの画面を寝かせ、人と対面して遊ぶこともできる。かつては電源を使う=テレビ画面を見るので人と対面はしないだったのが、その図式が崩れつつあるのだ。『スーパーマリオパーティ』はボードゲームなのか、そうでないとしたらどういう答えがスッキリするのか、分からなくなってきたのでツイッターで尋ねてみた。


回答をまとめると、『スーパーマリオパーティ』はテレビ(ビデオ)ゲームであるという点は一致しつつも、ボードゲームであるかどうかは分かれた。ボードゲームであるという方の中でも、「電源を使うボードゲーム」や「ボードゲームをするテレビゲーム」というように重点の置き方も異なっている。プレイ感から見るか、機材から見るかという視点によって変わるのだろう。一方、ボードゲームでないという意見は、電源を前提としないリアルな道具(ゲームボード、カード、コマ、サイコロ)の有無で見ているようだ。

『スーパーマリオパーティ』は……
→ テレビ(ビデオ)で遊ぶボードゲーム(プレイ感)
→ ボードゲームがテーマのテレビ(ビデオ)ゲーム(機材)
→ ボードゲームでない(リアルな道具)

このように見解が分かれるところからも、「電源を使わない」「非電源」はボードゲームの定義として相応しくなくなっているのだろう。このことは(デジタルと対比される)「アナログゲーム」という呼称が適切かという問題にもつながってくる。

これに代わるものとして「リアルな体験」はどうだろうか。ボードゲームとは、電源の有無にかかわらず、リアルな体験をするゲームであると。リアルな体験のためには、非電源の道具があったほうがよいだろうが不可欠ではない。リアルな体験をしないオンラインのボードゲーム対戦サイトはどうかという疑問に対しては、オリジナルがリアルな体験をするものであれば、二次的なかたちでボードゲームだといえばよいだろう。

VRゲームが続々と開発されたり、Nintendo Switchには『1-2-Switch』という、プレイヤー同士が目線を合わせて遊ぶゲームが収録されているように、テレビ(ビデオ)ゲームでもリアルな体験の模索が行われている。現代のゲームは全体的にリアルな体験を指向しているのかもしれない。しかしその度合において、ボードゲームはもともとバーチャルではないリアルなものであり、むき出しの対人・対面コミュニケーション要素がゲームに組み込まれているものも少なくない。そこにボードゲームの魅力がある。小学生にも、そこを意識してボードゲームを薦めようと思う。

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『クマ牧場:がんばれ!グリズリー』日本語版、8月下旬発売

ホビージャパンは8月下旬、『クマ牧場:がんばれ!グリズリー(Bärenpark: The Bad News Bears)』日本語版を発売する。ゲームデザイン・P.ウォーカー=ハーディング、イラスト・K.フランツ、2~4人用、8歳以上、30~45分、3600円(税別)。プレイするためには『クマ牧場』本体が必要。
さまざまな形のタイルを自分の敷地に隙間なく配置して、4種類のクマたちを飼育し、できるだけ価値の高いクマの動物園を作り上げるパズルチックなタイル配置ゲームの拡張セット。今春に制作が発表され、今夏に世界同時発売となる。
2つのモジュール「グリズリー」と「モノレール」が入っており、1つだけでも両方組み合わせても加えることができる。「グリズリー」では巨大なクマのために7マスのタイルが登場し、これに合わせて牧場自体の完成が4枚から5枚に増える。大きいタイルを置くためには、利用できるタイルの最適な組み合わせを見つけるパズル思考が求められる。
「モノレール」は緑地タイルに塔を配置し、その塔に車輌を取り付けていくもので、クマ牧場に立体の要素が導入される。モノレールは牧場をジグザグに通り抜けなければならず、地面のタイル配置に工夫が求められる。
さらに、追加のトイレタイルと新たな契約タイル6枚が入り、新しい挑戦が待っている。
内容物:出口付き用地ボード4枚、グリズリーの飼養場タイル12枚、クマの像チップ4枚、動物小屋タイル4枚、モノレール塔28基、モノレール車輌24枚、契約タイル18枚、トイレタイル6枚、ルールシートほか