ロバの橋(Eselsbrücke)

そこが思い出せない!
『神経衰弱』などの記憶ゲームは、ゲーマーにはあまりウケない。得手不得手の差が激しいのはもちろんだが、勝敗がゲーム経験に全く関係ないからではないだろうか。ボードゲームをそれほどやりこんでいない人でも、やりこんでいる人に素で勝てる。そういう意味で記憶ゲームは、運ゲームと同じく初心者向けと言えるだろう。
今回のドイツ年間ゲーム大賞ノミネート3作品の中で、誰も予想しなかった『ロバの橋』も、記憶という要素を全面に出したゲームである。3枚から5枚のタイルが何だったかを、ストーリーを作って記憶し、何ラウンドか後に当てなければならない。
タイトルの「ロバの橋」はドイツ語で覚えにくいものを覚えるための手がかりという意味。水を怖がるロバは、小さな水溜まりでもわざわざ橋をかけたほうがよい。そのものを覚えたほうが簡単そうでも、わざわざ語呂合わせなどを考えて覚えたほうが長く覚えられるものだ。ドイツでは、いったんイニシャルにして、それに別の単語を当てて覚えていく。例えばギターの線EADGHEを、「Eine Alte Dame Geht Heute Essen(1人の老婦人が今日食事に行く)」というように(日本でも、年号の暗記などはそうである。「生稲(1917)晃子がロシア革命」とか)。
ロバの橋
自分の番になったらタイルを3枚引いて、その3枚でストーリーを作ってみんなに聞かせる。覚えてもらいやすくするには、筋の通った話にしたいところだが、引いてくるタイルは「ケーキ」「恐竜」「牢屋」のように脈絡がないものばかり。筋が通らなければ、インパクト重視でいこう。聞かせたら、3枚のタイルは伏せておく。
全員がそれぞれ3枚ずつ引いて話をしたら第1ラウンド終了。第2ラウンドもまた3枚引いて、ストーリーを作ってみんなに聞かせ、タイルを覚えてもらう。
第1ラウンドのタイルを思い出すのは、第3ラウンドになってから。しかも第3ラウンドは、4枚引いてストーリーを作った後に、第1ラウンドのタイルを当ててもらわなければならない。はるか過去のように思えるんですけど!
タイルを時計回りに1枚ずつ配り、受け取った人はそのタイルを手がかりにして、残りのタイルを当てる。当たれば得点、間違えば失点。ストーリーを作った人は、誰も間違わず当ててもらえたら得点。
同様に第4ラウンドに第2ラウンドのタイルを思い出す(第2版では、第5ラウンドがなくなった)。ここでも、そのラウンドに新しいタイルが追加されるので混乱するのは必至。1枚でも当たればいいほうで、全滅なんてことも多い。当たったら常に1点だが、間違ったときの失点がどんどん大きくなるので、みんながほとんど0点のまま終盤を迎える。
第5、第6ラウンドは、新しいタイルの追加は行わず、それぞれ第3、第4ラウンドのタイルを思い出す。混乱はしないが、枚数が4枚、5枚となっていて凶悪である。写真のタイルで私が作ったストーリーは、「つくばで竜巻が起こってゴミがぶちまけられ、つくばの国王が責任を感じて王冠を脱いでクラゲパーマにした」である(全部当ててもらえた)。
記憶を片隅から呼び起こすのに、こんなにエネルギーが必要なものかと思い知る。ストーリーを思い出せても、タイル名までたどりつけないことも多い。うんうん唸って5人で1時間。最初は思い出せなかったのが、何かのはずみでひらめくと無性に嬉しい。「あったあった!」「それそれ!」「うわーオチのところが思い出せない……」プレイしている当人たちは気が抜けなくて苦しかったが、隣卓からは大いに盛り上がっていて楽しそうだったという。
Eselsbrücke
S.ドラ、R.z.リンデ/シュミット(2011年)
3〜12(2人1チームで6チーム)人用/8歳以上/30〜45分
ショップ検索:ロバの橋

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