ウルフレンド・サーガ(Wolflend Saga)

格差と直接攻撃

ボードゲーム情報誌『GameLink』3号の付録は、鈴木銀一郎氏のデザインである。これまでの付録を振り返ると、骨太のシステムをもつ『マーチャントギルド』はドイツゲーム風味、バラエティに富んだキャラクターが登場する『キングダム』は日本ゲーム風味だったが、今度はスタートラインが不均等で、直接攻撃でバランスを取るアメリカゲーム風味である。
同士のヒット作カードゲーム『モンスターメーカー』をテーマにしており、ウルフレンド大陸で、最も繁栄した種族となることを目指す。
手番にはまずダイスを2個振り、出た目のエリアでお金や資源がもらえる。お金を使って自分の街の人口を増やし、よそのエリアに移動し、新しい街を作る。街はさらに都市にグレードアップすることもできる。誰かが5回、街か都市を作るとゲーム終了で、いろいろなボーナスを足して勝敗を競う。基本は『カタン』のような作りだ。
資源の出方が変わっている。ダイス2個で最も出やすい7のエリアは金貨4枚、次に出やすい6と8のエリアは金貨3枚、5と9のエリアは金貨2枚と、出やすいエリアほど儲かる。しかも同じ数字のエリアはそれぞれ固まっており、推奨の初期配置は寡占状態のため、序盤から一気に貧富の差が広がるようになっている。1周で何十枚と金貨を貯めこむ人と、全然収入がない人に分かれるのだ。
この不平等は、2,3,11,12を出した人が配置できる悪疫やモンスターによって解消される。悪疫やモンスターが置かれると、お金や資源が産出されなくなり、除去にはコストがかかる。お金持ちは当然、どんどん街や都市を作り、周囲のエリアに広がっていくので、集中砲火を浴びるというわけだ。
aveさんが中央に一気に都市を建てられる状態になると、悪疫とモンスターが次々と襲いかかった。しかし何とか弾き返し、5回目の建設を果たした。ゲーム終了フラグを取るとボーナス5点がある。ここからは各自1回だけ手番がある。みんな反撃できない上家のエリアを狙い、aveさんのエリアをことごとく蹂躙。不毛なエリアでゲーム中ずっと低収入だったdjさんと私は、エリアボーナスで一気にのしあがった。でも1位だったのは、悪疫で街連結のボーナスを奪い取られた後、ひそかに回復していた鴉さん。
ゲーム終了後、1時間くらい感想戦(というよりデザイナーの意図を考える会)が行われた。ドイツゲームに慣れていると、こうした意図的に不平等なスタートラインには違和感を感じる。そのため、このゲームをどう捉えたらよいのかはみんな戸惑ったようだ。不毛なエリアをあてがわれたdjさんと私は結果的に上位だったが、ゲーム中の見せ場はほとんどなかった。自由な初期配置ルールで好きなエリアから始めた方がよかったかもとか、いやいや、誰かが一気に走るからゲームにスピード感があっていいのだとか、いろんな意見が交わされた。
ウルフレンド・サーガ
鈴木銀一郎/シュート・ザ・ムーン(2010年)
3〜5人用/60分
Game Link Vol.3付録

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