ドイツ年間キッズゲーム大賞2021に『ドラゴミノ』
3月までは幼稚園や小学校で反応を見ることができた昨年と異なり、1年を通して対面ができない中での選考。審査委員会はテストに参加してくれる家庭を募集し、テレビ会議で意見を集約。また従来設けているアドバイザーが、順次再開した施設でテストして情報を提供した。こうして推薦リスト7タイトルと、ノミネート作品3タイトルを選出できたという。
3タイトルのノミネート作品について紹介動画が流れ、各デザイナーにオンラインでインタビューを行った後、大賞が発表された。大賞を受賞した『ドラゴミノ』は、『キングドミノ』のB.カタラと『バイキングの谷』(ドイツ年間キッズゲーム大賞2019)のフォー夫妻(ともにフランス)の共作で、オリジナルはブルーオレンジゲームズ社(フランス)から発売され、今年のフランス年間ゲーム大賞でキッズ部門に選ばれている。
フォー夫妻は『ストーリーテイラー』もノミネートされている。ノミネート作品3タイトル全て、さらに推薦リスト7タイトル中、3タイトルの合計6タイトルがフランス人デザイナーの作品となっている。
本賞とエキスパートゲーム賞の発表と授賞式は7月19日、ベルリンで行われる。
トスカーナの城(The Castles of Tuscany)
アクション改良の優越感
15世紀のイタリアを舞台にお城の周りを発展させるゲーム。名作『ブルゴーニュ(2011年)』をミドル級にリメイクしたものである。ダイスはなくなり、カードプレイでタイルを配置するようになった。プレイ時間は短縮されたが、タイルを配置したときに起こる効果を改良できることで、どこに重点を置いて発展させるかという戦略性がある。
手番にできるのは1アクションだけで、カードを引くか、場からタイルを取るか、タイルを置くかのいずれか。タイルはスタートのお城からつながるように配置しなければならず、どの色でも置けるわけではない。タイルを置くには同じ色のカードを出さなければならないが、カードは山札から引くので揃わないこともある。手札を見てタイルを選ぶか、ほしいカードを念じて山札から一か八か引くか迷うところだ。
タイルを配置すると、種類によってさまざまな特典が得られる。
- お城(緑):場のタイルをいきなり自分のボードに置ける
- 街(赤):アクションの改良ができる
- 倉庫(青):どこにでも置けるジョーカータイルを獲得する
- 農場(黄緑):植えた作物で得点する
- 石切場(灰色):追加アクションができる石を獲得する
- 村(オレンジ):ジョーカーカードになる村人コマを獲得する
- 修道院(黄色):カードを3枚引く
- 馬車(ベージュ):何が出るかお楽しみのご褒美カードを引く
このほか、プレイヤーボード上の1種類を全部先に埋めるとボーナス得点がもらえる。誰かのタイルのストックがなくなるたびにラウンドが終了し、3ラウンドでゲーム終了。独特の得点計算方法で、1ラウンドの得点×3+2ラウンドの得点×2+3ラウンドの得点×1の合計得点を競う。つまり前半に多く得点を取るほど有利になる仕組みだ。その分、先行逃げ切りで逆転しにくいとも言える。
とはいえ序盤から高得点を狙えばアクションの改良が後回しになり、早い段階で伸び悩むことになるだろう。追加アクションとアクションの改良がどう噛み合うかが、勝敗を分けることになりそうだ。
アクションを改良すると、カードを引ける枚数、保有できるタイル数、石、村人コマ、ご褒美が増える。しかも累積するので、そのアクションをしたときはかなりのアドバンテージになる。これからタイルを置く場所を見据えて、どのアクションを改良するかも考えどころだ。
アクションがシンプルなので手番の回り方が早く、ダウンタイムのストレスが少ない。ほしいタイルの取り合い、早取りボーナス競争などほかのプレイヤーとのインタラクションもほどほどに用意されている。自分が先行しているアクションをしたときの優越感(「私だけ4枚引けるぞ!」)が堪らず、次のゲームはどのアクションを伸ばそうかと楽しみになってくる。
The Castles of Tuscany
ゲームデザイン・S.フェルト/イラスト・A.シュテファン&C.シュテファン
アレア(2020年)
2~4人用/10歳以上/45~60分
「複雑なゲームはやりたくないけど、『ブルゴーニュの城』のメカニクスや雰囲気を味わいたいという平日の夜などにおすすめ」Reich der Spiele: The Castles of Tuscany