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オラクル(Oracle)

3段階で集めるチップ

ギリシャ神話がテーマのトリックテイキングゲーム。S.ドラの3年ぶりの新作で、トリックテイキングは『ニエット』『七つの印/スラフオフ』に続いて3タイトル目である。目標達成型だが、目標の選択肢を極端に広げ、通好みの作品に仕上げている。

5スートのマストフォローで、切り札はなく、勝者はスートに関係なく数字の大きい人(同じ数字ならリードカラー優先、どちらもリードカラーでなければ先に出したほう勝ち)で、最弱の1と最強の12があると1が勝つというのがトリックテイキングのルール。1スート枯らしておくと、勝ち負けの調整がしやすくなるが、読みきれないドラマチックな展開もある。

大きい数字で勝つとフェニックスチップ(2点)、中間の数字で勝つとペガサスチップ(3点)、低い数字で勝つとヒドラチップ(5点)がもらえるが、いずれも場になくなり次第終了となり、その後に勝つと「敗者チップ」という、その種類のチップの得点を帳消しにしてしまうチップを受け取らなければならない。また勝てば他の人に押し付けることもできるが、ここで大事なのがゲームの始めに配られる「オラクルカード」である。

オラクルカードはゲーム終了時のチップの状況でボーナスがもらえるもので、「ペガサスチップとヒドラチップを1枚ずつ持っていれば9点」「敗者チップを1枚持っていれば11点」といった目標が書いてあり、ゲームの始めに8~10枚(!)配られてそのうち2枚を選ぶ。選択肢は多く、手札と相談しようにも見当もつかない。達成しやすいけれども得点が低いのを取るか、難しいが高得点のを取るかは賭けのようでもある。

たった1枚で達成の可否が変わってしまうものも多いので、最後の1トリックまで気が抜けない。棚ぼたもあるが、終盤の詰めはコントロールの余地がある。プレイ人数分のラウンドを行って合計点を競う。

同じ目標達成型のトリックテイキングゲーム『七つの印』においても、取りすぎると失点チップを取っていたが、『オラクル』はボーナスのために敢えて取る場合もあり、プレイヤー間の思惑を複雑にする。ほかのプレイヤーの思惑をかいくぐって、最後に目標通りに寄せられた時は嬉しい。

Oracle
ゲームデザイン・S.ドラ/イラスト・C.オッパラー
スケリッヒゲームズ(2020年)
3~5人用/8歳以上/30~60分
ゲームストア・バネスト:オラクル

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スペースドラゴン(Space Dragons)

手柄を立てれば後ろから撃たれる

スートのないトリテというか、オークション的なシステムでスペースドラゴンを撃退するドイツのカードゲーム。スペースドラゴンを倒すと大きな手柄が得られるが、妬むライバルたちが後ろから攻撃してくる。

9枚のカードが配られ、これを同時ピックアップドラフトしたらスタート。今回のスペースドラゴンカードが1枚めくられ、スタートプレイヤーから時計回りに1枚ずつカードを出す。

トリックテイキングとはいうもののスートもトランプもなく、一周オークションといってもよい。数字の一番大きなカードを出した人がスペースドラゴンカードを獲得する。

しかし数字の一番大きなカード以外にも役割があるところがポイント。カードにはアイコンがついており、スペースドラゴンカードを獲得したプレイヤーにダメージを負わせる背後攻撃、ダメージを防御するシールド、ダメージを回復する修理がある。

リードプレイヤーが大きな数字を出してスペースドラゴンを狩りに行くのは危険だ。ほかのプレイヤーが次々と背後攻撃を仕掛けてきてドラゴンの報酬に全く見合わないこともある(ダメージはゲーム終了時に失点)。

全てのカードには上部に科学・雰囲気・犯罪のアイコンがあり、7ラウンド終了時にそれぞれのアイコンの最多・最少でボーナス得点やペナルティ失点がある。各自、出したカードは自分の前に並べておくので、お互いの状況を確かめつつ、どのアイコンを集めるべきか、回避するべきかを考えてカードを出さなければならない。ドラゴンカードにもアイコンがあり、魅力度合いが変わってくる。

最初のドラフトで手札状況がある程度推測できるところもポイント。ベタなテーマと裏腹に、周到なプレイが要求される。

Space Dragons
ゲームデザイン・R.ハールホフ/イラスト・F.ビーゲ
シュピールヴィーゼ出版+ペガサスシュピーレ(2021年)
3~5人用/10歳以上/15~20分
通販:ゲームストア・バネストボードゲームキューブ