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勝利への道(Verflixxt!)

毎年、ドイツ年間ゲーム大賞のノミネートは愛好者の予想を裏切ってきたが、昨年からその傾向を強めた。愛好者も決してフリーク向けのゲームを予想しているわけではないので、審査員たちは愛好者の考えるような家族ゲームからあえて距離を置き、将来のために何か新しいものを提示しようとしているのかもしれない。
ノミネートされた5作品のうち、難易度が最も低いとされているVerflixxt!(くそったれ)は、クラマーとキースリングという大賞の常連作家で、しかもメーカー大手のラベンスバーガーから発売されていながらあまり注目されていなかった作品だ。ラベンスバーガーはエッセンでYESを、ニュルンベルクではオーストラリアを推しており、この作品は大々的に宣伝していない。おそらくラベンスバーガーにとってもノミネートは意外だったにちがいない。
Verflixxt!は、シンプルながらもひねりのきいたスゴロクゲームだ。スタートからゴールまで、プラスタイルとマイナスタイル、それからマイナスをプラスにできるラッキータイルを並べる。自分のコマは3つ(5?6人なら2つ)。サイコロを振って、その数だけ自分のコマをどれか1つ進める。
あるタイルの上に自分のコマが1つしかないとき(他にコマがないとき)、そのコマを動かしたらタイルを取らなければならない。プラスだったらよいが、マイナスタイルは誰も取りたくないので他の人のコマと一緒に移動したり、「見張り」と呼ばれる中立のコマを踏み台にする。中立のコマは条件さえ満たせば誰でも動かせるので、これを上手に使うのがポイントだ。
全員がゴールしたら獲得したタイルで得点計算。ラッキータイルは、一番大きいマイナスタイルをプラスに転化できる。-9点が+9点になってしまうのだから重要だ。2枚あれば、2番目に大きいマイナスタイルもプラスに転化できる。これを見越してあえて大きいマイナスタイルを取りに行くという選択もありだろう。
バリアントルールとしてタイルの並び順を変えたり1が出たら別のことができたりするというもあるが、基本的にはこれだけ。遊んでいないので実際にどう運ぶかは分からないが所詮サイコロ次第なので、気楽にマイナスを踏んで「くそったれ」というような遊び方になるだろう。
これが数ある作品を押しのけてノミネートされたことを考えると呆気ない感じは否めない。コンポーネントも地味で、大賞がこれになる確率は低いのではないかと思われる。
Verflixxt!
ゲームデザイン・W.クラマー&M.キースリング
ラベンスバーガー(2005年)
2~6人用/8歳以上/30分

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ルイ14世(Louis XIV)

逃げも隠れもしない、ドイツゲームの王道

調整不足の感が否めなかった『氷河期』、『五番街』でフリークの信頼を揺るがせたアレアは、箱を中箱(これまでの大箱と小箱の中間サイズ)に変更、心機一転してこの作品を発表した。昨年のエッセンで試作段階だったにもかかわらずフェアプレイ誌の人気投票1位、ニュルンベルクで製品版が発売されると、批評家M. クノプフ氏の「特別勝利点」レビューリクエスト1位、愛好家ディット夫妻の「オーバーホフ・ゲーム会」評価ダントツ1位(去年の1位は『サンクトペテルブルグ』)、デザイナーのA.R.ムーン氏のゲーム会「友達を集めて」でもヘビーローテーションだったという人気の高さで、誰しも3年前のプエルトリコ旋風を思い起こさずにはいられない。メーカー記載による10段階ゲーム難易度は『プエルトリコ』7に対して5。さてどんな面白さが待ち構えているのだろうか。
17世紀後半にブルボン朝最盛期を築き、「朕は国歌なり」の名言を残した太陽王ルイ14世の時代が舞台。母アンヌ・ドートリシュ(1番)、甥のオルレアン公フィリップ(2番)、妻のマリー・テレーズ(3番)、皇太子(4番)ほか、ヴェルサイユ宮殿で権力を持つ12人の貴族が登場。宰相コルベール(7番)や、その後に宰相となったマザラン(11番)も、世界史ではおなじみの名前だろう。プレイヤーはヴェルサイユ宮殿の中で暗躍する廷臣となってこれらの貴族をとりこみつつ、与えられた任務を遂行し、名声を上げることを目指す。
ゲームの中心は、エルグランデやアメンラーなどに見られるような陣取りに集約されるだろう。各プレイヤーが12人の貴族タイルに影響力を表すコマを順々に置いていき、一番多く置いた人が特典を得る。1つの貴族につぎ込んでばかりでも実入りが少ないし、あまり広く浅く置き過ぎても勝ちにくい。他の人の動向を見極めて、少ない差分で勝てるよう、メリハリのある配分をしていかければならない。細かい観察力と論理的思考が要求される陣取りは、ドイツゲームの王道と言えよう。
 お金と影響力カード、影響力コマ、任務カードを持ってスタート。スタートプレイヤーから順番に影響力カードを出して、カードに指示された貴族タイルに影響力コマを置いていく。ここで今置いたコマを、その貴族タイルから斜めに隣り合う貴族タイルに移すことができる。この「斜め飛び」がゲームのひとつのキモで、1人の貴族につぎ込んで勝利を確実にするか、それとも広く浅くばら撒いてチャンスを増やすか、一番頭を使うところだ。
もうひとつのキモはコマを置いていく順番。相手の動向を見た後で自分のコマを置くことのできる後手が有利なのは言うまでもない。相手が1個置けば2個、2個置けば3個と調整ができるからだ。スタートプレイヤーはラウンドごとに交替し4人で4ラウンド、機会は平等になっているが、順番をうまく利用できるか、あるいは相手に利用させないかは腕次第。狙っているところをできるだけさらさないようにしながら、また時には臨機応変にコマをマネージメントしなければならない。先に置いた人の予想を裏切りつつ、後に控えるプレイヤーに睨みを利かせて置くのはかなり悩ましい。
さらに陣取りの勝利条件は刻一刻と変わっていく。一定数コマを置いていれば無条件でもらえるもの、1位しか特典を得られないもの、コマを置いていれば負けても特典をお金で買えるものの3種類があり、さらに上位4人の貴族を渡り歩くルイ14世がいると特典が増える。こうした条件を見ながら、無駄のないマネージメントをしたいものである。
特典は12人12様で、任務を遂行するためのチップであったり、お金であったり、勝利点に直結するワッペンであったり、後からコマを置ける陰謀カードであったりとさまざまだ。どれを取るかによって戦略の立て方も変わっていくだろう。でもその中で一番大事なのは任務を遂行するチップ。指示された組み合わせのチップ2枚を集めると、任務を達成したことになる。任務を達成した人には5勝利点と共に、その任務の難易度に応じてさまざまな特殊能力が与えられる。その特殊能力は20種類あり、毎ラウンドお金の収入があったり、手番をパスできたり、トップタイで勝つことができたりと、アメリカンゲームのような派手さはないが使いようによっては均衡を打ち破る十分な力をもっている。
そしてにくい演出だと思わせられるのがワッペンの存在だ。特典や特殊能力、そしてゲーム終了時に残ったお金やカードで得ることができるワッペンはずっと裏返しのままになっており、最後にめくって種類(6種類ある)ごとに数を比べ、最多賞にもう1つワッペンが与えられる。ワッペンを多く集めていれば最多賞のチャンスが増えるが、微妙に運がからんでいる。このワッペンが最後まで見えないことで、明らかな1位がわからなくなり、陣取りにありがちなトップ叩きが起こりにくいようになっているのだ。実際、1位はふたを開けてみるまでわからないぐらい均衡する(だからこそ、最後が運で決まるのは好ましくないという意見もあるのだが)。
さてレポート。メーカー記載は75~100分だが、1回目はインスト別で120分を要した。まずはルイ14世のいるタイルをみんな狙う。ルイ14世のいるタイルは特典が大きいため、争いも熾烈になってたくさんのコマが投入された。その間に、他の人の注目を浴びない周辺の貴族を手堅く狙ったかゆかゆさんとタナカマさんが成長。購入割引の特殊能力を生かしたかゆかゆさんが1位。
2回目は100分。各貴族の特典のアヤがだいたい飲み込めて、無駄にたくさんコマを置く場面が少なくなり、その分シビアな戦いとなったためである。ひたすら中央の争いを避け、人が狙わない貴族を1つや2つのコマで獲得していくタナカマさんがリード。しかし敢えて虎穴に入り、打ちまわしのよさで任務をどんどん遂行していったかゆかゆさんがまたもや1位。私は無駄に突っ張る場面が多くて3位、同点3位に沈みました。moonさんも広く浅くの戦略が奏功せず4位、同点3位。
根本的なシステムが陣取りにある以上、システムの新しさやオリジナリティはあまり感じられず、いたるところに既視感が漂うが、緻密に練り上げられたシステムがテーマとうまくマッチしていること、たえず相手の動向を考えながらうんうん悩むこと、特殊能力が1回では出きれないほどいろいろあること、終盤に向けてできることが増えて盛り上がっていくことから、何度も遊びたくなるゲームだと思った。ただ、コマが同数のときの処理など、ルールが結構複雑なので慣れるまではリファレンス(play:game)を持参したほうがよいだろう。ゲーム慣れしていない人には敷居が高い(写真提供:タナカマさん)。
Louis XIV
R.ドーン/アレア(2005)
2~4人用、12歳以上、75~100分