ゲームマーケット2024春レポート
4月27日(土)と28日(日)の2日間にわたって、東京ビッグサイト東1,2,3ホールにて「ゲームマーケット2024春」が開催された。合計25690平方メートルのホールに915団体が出展し、2日間でのべ25000人が来場した。国際色がどんどん豊かになってきた会場の様子をお伝えしよう。
1日目は曇りで小雨もぱらつき、最高気温20度ちょっとという肌寒さ。先行入場券2500枚は前日までに売り切れ、開場前にはいつものように長い待機列が形成された。開場のアナウンスが流れると、拍手の響きとともに待ちに待った客が会場に流れ込む。
開場後1時間くらいはお買い物タイムで、先行販売や限定販売の情報を予めチェックしてきた来場者たちがあちこちのブースに長い行列を創っていた。やがて12時になると一般入場が始まり、さらに各ブースは混雑し、幅広く取られた通路も渋滞し始める。
今回初めての試みはアメリカからの出展である。サンダーグリフゲームズ、アーケーンワンダーズ、ゲーム生産者組合(GAMA)、ジャパニメゲームズ、そしてワシントン州卓上ゲーム連合である。ワシントン州務長官のスティーブ・龍馬・ホーブス氏によると、今回の出展は貿易使節団であり、アナログ・デジタル共にゲームメーカーが多い(ウィザーズ・オブ・ザ・コースト、ポケモンカードの製造など)ワシントン州で、中小企業を束ねてアナログゲーム産業の振興に取り組み、デジタルゲームとのシナジーや、デザイナーの相互交流を考えているという。
アメリカの他にも、アジアからは多数の出展があった。台湾は今月初めの地震で大きな被害を受けた工場もあったが、無事に出展できたことが喜ばしい。
今回会場の話題をさらったのは、ドイツのボードゲームデザイナー、F.フリーゼ氏である。1日目の午後から行われたスペシャルステージ「フリーゼに聞く!ボードゲームのデザインとは?」は多くのファンが詰めかけたほか、会場内でも同人作品を購入し、記念撮影に気軽に応じていた(togetter:野生のフリーゼ氏まとめ)。
フリーゼ氏はエッセン・シュピールでもボードゲームを購入して回る姿をよく見かけるが、毎日1つは新しいゲームを遊ぶことにしているといい、所有ゲームは2500タイトルにのぼる。ゲームデザインは、メカニクスから起こすことも、テーマから起こすことも、たまにコンポーネントから起こすこともある。例えば『ファイユーム』はメカニクスから起こし、テーマは辞書でFから始まる言葉を探して後づけしたが、テーマ設定によってメカニクスを変更した。ゲームデザイナーには「自分のゲームを好きになりすぎないこと。遊ぶのは他の人だから。そして試作品は友達ではなくきちんと批判できる他のデザイナーに見てもらおう」とアドバイスした。
2日目にはスペシャルステージ「デュトレに聞く!ボードゲームのアートワークとは?」としてV.デュトレ氏が登壇。フランス・リヨンでイラストレーションを学び、数多くのアートワークを手掛けてきたデュトレ氏は、テストプレイよりも出版社とのテーマやムードについての相談に力を入れているという。国・年齢・文化が違っても受け容れられるアクセシビリティから、コントラストや彩度にも気を遣う。「カバーはゲームの世界の窓」といい、イラストはすべて手描きで、デジタル機器を使わない。生成AIはすばらしいツールだが、自分が自由にできること、人間としての仕事に自身と誇りをもつことが大切だと述べた。
会場内では購入だけでなく、滞在して遊べる場所が随所に用意されていた。今回で3回目となる「本当に面白いユーロゲームの世界」では、テンデイズゲームズやメビウスゲームズが協賛し、空き席待ちが出るほどの大人気ぶり。気に入ったゲームはすぐとなりのイエローサブマリンで購入することもでき、有名定番ゲームを遊びたい人たちが絶えなかった。ほかにもキッズコーナーや、特大版のゲームを遊べるビッグゲームパークでは親子連れが楽しむ様子が見られ、コロナ禍後では初となるフードコーナーも常に行列ができていた。
1月1日の能登半島地震を受けて設けられた特設ブース「ごいたコーナー」。『ごいたカード』の販売やチャリティ物販の売上は全額、日本赤十字の災害義援金に寄付される。
4月15日の火災で全焼したボードゲームカフェ「B-Cafe」はマーダーミステリー2作を出展。募金箱や応援メッセージコーナーが設けられた。支援クラウドファンディングが計画されている。
4月6日に発表された「日本ボードゲーム大賞」の表彰が各ブースにて行われた。選考部門「ゆうもあ賞」の『アクロポリス』、投票部門の『チャレンジャーズ!』について、日本語版を制作販売しているEngamesとホビージャパンに、草場純氏から表彰状が手渡された。
会場内は6時間では到底回りきれないたくさんのブースがあったが、その中からピックアップ。
会場内で注目されたボードゲームについては、別の記事で紹介したい。次回のゲームマーケットは、ゲームマーケット2024京都が9月21・22日(土日)京都市勧業館「みやこめっせ」にて、ゲームマーケット2024秋が11月16・17日(土日)千葉・幕張メッセにて。
CMONがヤポンブランドと業務提携
ヤポンブランドは2006年に設立され、エッセン・シュピールにブースを取って日本製ゲームを紹介してきた。これにより『ラブレター』『街コロ』『タイムボム』などが海外出版社の知られるところとなり、数多くの海外版が作られている。
業務提携に伴い、ヤポンブランドの代表は健部伸明氏から野村紹夫氏(ルートイレブン)に交替。健部氏がディレクターを務めていたCMONジャパンとは同じCMON Limited傘下となるが、業務内容が異なるため別々に活動する。健部氏はどちらの職も辞し、フリーランスとしてサポートや製品開発に携わることになった。
「多くの個人作家にとって海外は、社会的・経済事情等により依然として遠い道です。ヤポンブランドの存在は彼らにとっての希望であり続けたい。CMONのバックアップを得て、我々はこれまで以上に活躍できると期待しています」と野村氏。CMON LimitedのCOOであるデビッド・プレティ氏は、「ヤポンブランドは常に日本のゲームデザインを世界に知らしめてきた、素晴らしい大使です。その精神こそが非常に重要であり、私達はその長い伝統の一翼を担えることを光栄に思います」とコメントしている。
これまでは出品者の共同負担とボランティアスタッフによって支えられてきたが、今後は採算性を踏まえた事業体制の構築を進めることになる。野村氏によると、希望サークルを募ってのエッセン・シュピール出展は継続しつつ、これまでのライセンス販売だけでなく、独自の印刷製造による海外展開を計画しているという。