これはゲームなのか?展#2レポート

東京・神田の3331アーツ千代田にて今月15日まで行われている『これはゲームなのか?展』に参加し、大いに刺激を受けてきた。
ボードゲームデザイナー17組が、実験的なゲーム作品を展示・試遊できるようにした企画展。体験を通してゲームにもっている常識に揺さぶりをかけ、面白さや楽しさだけではないゲームの興味深さ、そしてルールの可能性・発展性を探る。
展示されているものは多種多様だが、例えばこんな感じだ。
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『ルールのたまご(CHOCOLATE Inc.)』は、100円のガチャガチャでいろんなゲームのルールが入っている。つまらないと思えば横にあるゴミ箱に捨ててもいいし、気に入ったら持ち帰って育ててもいい。

『創造的なゲーム、ゲーム的な創造(コロコロ堂・高畑慧)』は、参加者がルールにのっとってブロックと、茶色か黒の人を街に配置していく。ルール違反したものは高畑氏が毎晩除去し、最終日に黒と茶色のどちらが優勢だったかを判定する。

『ルールの伝言(橋口貴志/ファウンテン)』は、ノートの図解をもとにゲームを遊んでみて、そのルールをノートの次のページに図解して次の人へと送る。本当のルールはあるが、封筒に厳封されている。

『リモートビューイング(田中英樹/ASOBI.dept)』は、1人がボックスの中を見て、見えた地図の特徴を30秒で伝え、そこがどこだったかを地図上から探す。

『ふぇ?(itten)』は、穴の空いた円形のコマを、視界から消えない範囲でできるだけ遠くに配置して、これを連鎖させてループを作る。
『一生後ゲーム(するめデイズ・ニルギリ)』は、ゲームを購入した人が21人の名前と、それぞれの得点方法を記した紙をマッチ箱に入れておき、その人が亡くなったらマッチ箱を配ってゲームが始まる。1年後に再会して、どれくらい得点できたかを報告し合う。
『記憶交換ノ儀式(米光一成)』は、お題に関する記憶をメモに描いて交換し、もらったメモは自分の記憶としてストーリーを語り合う。
『城のゲーム(朝戸一聖)』は暗室に入ると映像が流れており、そこでルールが説明されるはずだが、いつ始まっていつ終わるか分からない。
いかがだろうか。参加型アートともいえるし、大掛かりなコンポーネントのゲームともいえる。実際、この展覧会は「ゲームとアートの境界に挑む」とされている。
そのあたりは19時から始まったトークショーで明らかにされたように思う。3日目のテーマは「ゲームと編集」で、伊藤ガビン氏を招き、出展者である朝戸一聖氏と野澤邦仁氏が登壇した。司会はunion talesのかんな氏。

ガビン氏は展示作品を「よく分かんない、分かりづらい、もやもやとする」「直感的にはゲームじゃないし、アートでもない」「アートとして見えちゃうと損」と一刀両断。しかし「取り巻く環境を含めてゲーム」であり、それを語りあえることがちょっと面白いと評価した。
出展者はゲームマーケットに出展しているボードゲーム制作者ばかりである。ゲームになっているかどうか微妙なものをアートと呼ぶことに、アートの専門家から反対があるのは当然と言えるだろう。ゲームにゲームの話法があるように、アートにはアートの話法がある。
したがってこの展覧会は、あくまでゲームの文脈で捉えたほうがよいと私は思う。ボードゲーム制作者が何を考えてゲームを作っているかというそれぞれの原理的なものと、その原理的なものによってゲームが現実に拡張されていく可能性を垣間見ることができる。
ゲームマーケットも、見方によっては「これはゲームなのか?展」化しているといえる。ドイツゲームのようなきっかりしたシステムではなく、勝敗が曖昧で、場が盛り上がることを第一とするアクティビティ/レクリエーションゲーム群の増加だ。この傾向を嫌い、輸入ゲームばかり遊んでいる愛好者も少なくない。
トークショーではそのような原理が「インプロビゼーション(即興プレイ)」「達成感」「非日常」「場を共有してできること」と言葉で触れられていたように思う。そのためのツールとして捉えるならば、ゲームは楽器やスポーツと同様、広い意味での遊び/プレイと考えることができる。そこには一定のロジックなりルールが存在しても、その目的は勝敗に限らない。
この試みが果たして、新しいジャンルを生み出すかは分からない。制作者か、相当物好きな人でもなければ、いかにぶっ飛んでいても未加工のアイデアに興味を示す愛好者は少ないだろう。しかし愛好者の拡大と多様化に伴い、こういった実験的な試みに興味を示す人もそれなりに存在することをこの展覧会は示した。ボードゲーム愛好者がクラスタ化し、互いの行き来が不自由になっている現状に穴を空けてほしい。

物販もあるよ!
これはゲームなのか?展

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