……という名のゲーム合宿が、ゲームマーケット2017春の翌週に行われた。一戸建ての貸家を利用し、自炊で1泊2日を過ごす。長く続けているとおしゃべりの時間のほうが長くなりがちだが、今回も集中的にゲームマーケットの新作をプレイした。お付き合い頂いたメンバーに感謝。
うんちばさみ(ランチボックス)
まずは安定のクソゲー枠から。ゲームマーケットではブースで説明を聞いてもよく分からなかったが、やってみてこれまでにない仕組みであることが分かる。
うんちカードをめくり、ハエカードかウジカード2枚ではさんで取る。ハエ/ウジカードは1ラウンドに1枚しか出せず、2枚出すには最低2ラウンドかかるため、どこで1枚目を出しておいて、どこで2枚目を出して取りに行くかが悩ましい。ハエ/ウジカードには限りがあり、ある程度うんちカードがたまったところで一気に取りたいが、競争率が高いので取りにくくなる。そのためうんちカードが少ない時点で早めに仕掛けておくといった駆け引きがある。
?/2~5人用/15歳以上/5~10分
六次化農村(New Games Order)
第2回東京ドイツゲーム賞で審査員特別賞を受賞し、製品化されたゲーマーズゲーム。六次化というのは一次産業(農林水産業)から三次産業(商・サービス業)までを一括して行うという取り組みで、地方ではよく聞かれる言葉である。
農地を作り、農作物を収穫し、直売所に運んで販売する。ひとつの直売所では毎ラウンド基本的に1種類1つしか売れないため、加工して別の製品にしたり、畑を改良して質の高い農作物を出荷したりしなければならない。一方、直売所や加工所をどこに作るか、生産者に恩恵を与える補助金はどれを採用するかは投票で決めるため、ほかの人とできるだけ利害が一致するように進める必要がある。投票で利害が一致すれば直売所で競合することになり、直売所で住み分けすれば投票で対立するという悩ましい仕掛けがある。さらにお金も「貢献度」(ゲーム中のリソースかつ勝利点)もカツカツの中で農地の位置取りや農作物の選択をしていくのは考えることが多い。それでも生産・加工・販売というサイクルを回していくのはテーマ的に楽しかった。
神田恒太郎/3~4人用/大人用/120分
楽園の方舟(TDS)
ゲームマーケットでは、事前チェックで気になって予約しておくものと、実物を見たり説明を聞いたりして買うことにしたものがある。この作品は後者。システム面とルールブックのライティングが素晴らしい。
方舟を作り、沈みゆく島から動植物や祭礼品を運び出す変則ワーカープレイスメントゲーム。毎ラウンド、アクションスペースが公開されてワーカーを配置するが、ワーカーはアクションスペースの手前に右詰めと左詰めで置かなければならず、左詰めのほうはほかのプレイヤーの選択によってどのアクションスペースに行くか変わる。ゲーム終了時には祭礼品、動物、植物の数を競うため、ほかのプレイヤーがほしいものを取らせない配置をしたりできる。また、毎ゲーム組み合わせが変わる方舟カードは、建造するたびに効果が得られ、完成すると得点になるため、こちらにも駆け引きがある。最後に公開して条件を満たしているかチェックする使命カード、フリーアクションを生む「発言力」もゲームの展開に多様性をもたせている。繰り返し遊びたくなる作品。
?/3~4人用/10歳以上/30~45分
戦国ブリッジ(芸無工房)
北条投了先生の作品は無条件で購入することにしている。3月の神戸で発表された『オーデンの触祭』はテーマ・システムともに見事な出来栄えだった。今回はネタゲーではない、真面目な作品である。
戦国大名の個性的な特殊能力を身につけて争うトリックテイキングゲーム。最初に武将が並べられ、手札から入札して獲得する。そして各自武将を1枚ずつもち、その特殊能力を活かしてトリックテイクを行う。獲得したカードが得点になる。切り札のスートを集められる豊臣秀吉(刀狩り)、1回のトリックに同じスートなら3枚まで出せる毛利元就(三本の矢)など、それぞれの武将のエピソードにちなんだ特殊能力となっているところが面白い。武将の組み合わせによって、さまざまなドラマが生まれる。
北条投了/4~5人用/20分
エンペラーズ・チョイス(OKAZU brand)
『ミネルウァ』『横濱紳商伝』に続くOKAZU brand作品で、「これまでで一番重い」という話を聞いて今、興味をもたないゲーマーはいないだろう。ましてやボードゲームライトニングトークで作者のデザイン論を聞いたため、なおさら興味が増していた。このゲームのコアになる部分はどこで、それにどうやって肉付けしたのだろうなどと考えながら遊ぶと面白い。
秦の始皇帝の部下となって、ころころ変わる政策に対応する国造りをする。手番順を競りで決め、その順にタイルを獲得してさまざまなパラメータを上げ、「皇帝の信頼ポイント」が高い順に政策を実行して勝利点を得る。パラメータは「皇帝の信頼ポイント」と勝利点のほかに兵士、領地、法家・儒家、運河、書物、馬車、防御力、人物カードのパワーと多岐にわたり、どれで得点計算が起こるかはプレイヤー次第。どれかに集中して伸ばして大量得点を狙うか、満遍なく伸ばしてどれでも得点できるようにしておくかの選択がある。獲得できるタイルはランダムに引いて4枚一組、3枚一組、2枚一組となっている中から手番順に選ぶため、どんなタイルが出ているか、それを誰が欲しがっているかを見越して競りに臨まなければならない。考えることは多いのだが、政策を決める「皇帝の信頼ポイント」の競争が軸になっており、何を目指すべきかが明確なので、すっきりとしたプレイ感がある。
林尚志/3~5人用/12歳以上/90~120分
おつかみさま(楽々亭)
第2回ゲームマーケット大賞で優秀作品に選ばれた『幽霊島の殺人』。斬新なシステムを用いるサークルとして注目している楽々亭の新作は、「実際に悲鳴を上げるようなゲーム」を目指したという。これは本当に悲鳴が上がる。
みんなが目をつむっている間に筆で手のひらにひらがなを書いて当てていく。プレイヤーの中に「おつかみさま」がいる場合があり、そのプレイヤーはゲームを失敗に導こうと紛らわしい書き方をしたり、分かっていてもわざと外したりする。素で間違うこともあるので、そのたびに怪しいとか言い合う。何回か外すと次の「脱出フェイズ」に移り、人間だと思う人に目をつむって手を差し出す。ここで「おつかみさま」は正体を表し、手ではなくて手首を握る。ギャー! 誰が「おつかみさま」かをめぐって、あなたでしょ、いえあなたでしょ、誰が怪しいんじゃないかと会話が盛り上がるゲーム。振り返れば目をつむって手のひらに書かれるところからもう怖い。
?/3~8人用/12歳以上/20分
猫の手ファクトリー(アナログゲーム倶楽部)
「シド・サクソンのハグルを気軽にプレイしたい」という思いから作られたゲーム。『ハグル』は準備も大変で、1回しか遊べず、敷居が高かったが、この作品はいくつかのルールを用意して、その組み合わせが変わるようにすることで何度でも遊べるようになっている。
各プレイヤーに配られたうわさカードと猫カードを5分以内でできるだけ多く交換して、「ネコ缶」を作る。猫カードは5色あり、どの猫カードがいくつのネコ缶を生産できるかが、中央の生産表で示されている。うわさカードは「○色のネコの生産力が1アップ(ダウン)」などの情報が書かれており、これらを最後に統合することで手持ちの猫カードからいくつの「ネコ缶」ができるか決まる。できるだけ交換して情報を集めたいが、みんなに情報が知れ渡ると同じ行動をするので必要なカードが集めづらくなるというジレンマがあるものの、「これは重要!」「えーそれ知らなかった」などといってゲーム中も得点計算も楽しめた。
イワテリュウヤ/5~8人用/12歳以上/15分
ペリー来ないで(哀愁旅館きたぐに)
クソゲー枠第2弾。私のスカトロゲームマニアぶりについては、拙著『ボードゲームワールド』第6章をご覧ください。
ペリーが来ないように黄金を適宜ウンコに変えて、ほどほどに黄金を集めるゲーム。手番には自分を含め誰かの前に黄金&ウンコカードを置く。オセロのように、黄金に挟まれたウンコは黄金に、ウンコに挟まれた黄金はウンコに。がらりと変わるが、カードを1枚固定できるため、調整も可能となっている。1周するたび、黄金の一番多い人にペリーが近づいてくる。このペリーの接近度が一定に達したプレイヤーはペリーが来港してしまって脱落。それ以外のプレイヤーのうち、黄金の一番多い人が勝つ。自由度が高くて、陥れるのも守るのもみんな次第。その中で目立たないようにして、最後にちらっと出し抜く駆け引きがある。
?/3~5人用/6歳以上/15分
キーわーど(サザンクロスゲームズ)
北条投了先生の作品は(略)。
各自に配られた単語を、猿の鳴き声とジェスチャーでお互い当てっこするコミュニケーションゲーム。最初は言葉を話せないので、これだと思ったらメモに書いて相手に渡す。当ててもらったら言葉を話せるようになり、その人のリードでほかの人たちの単語も当てていく。ところが全員の単語にはある共通点があり、そのNGワードをいうと全員敗北になってしまう。NGワードがだんだん予想されてくるので、それを避けて質問する。1回使ったお題はもう使えなくなるが、難易度を変えていくつか入っているので安心。難しいお題をみんなで協力して解くのはやりごたえがあった。
北条投了/2~5人用/10歳以上/20分
ヌビア~ナイルの古代王国~(COLON ARC)
こちらも会場で実物を見たり説明を聞いたりして買うことにしたゲーム。ある筋では「ピラミッドゲームにハズレなし」とも言われている。
建物カードをピラミッド状に並べていく建設ゲーム。建設コストは、今置いたカードから左下方向と右下方向(ハの字)にあるカードから仮想的に獲得されるというシステムが斬新で、このルールのためにピラミッドの配置に大いに悩むことになる。ピラミッドが高くなるほど利用できる資源も増え、より効果の大きいカードを置けるようになるのが面白い。一手番で複数建設でき、そのコストは総額で支払うため、うまく組み合わせて建てたいところだがそうは手札が都合よく来ない。さらにピラミッドの底辺部に置いて勝利点や特殊能力をもたらすカードは逆ハの字にコストを使うのでさらに考える。プレイ後、スキルアップの余地を感じさせるゲームだった。
田邉顕一/1~5人用/10歳以上/30~90分
以上10ゲームを、食事や睡眠を挟んで合計13時間でプレイした。ゲームマーケットの新作はこれでもごく一部にすぎない。戦いはまだ始まったばかりだ。
ご無沙汰してます。
最近フラムルージュというゲーム買ったので次回これ持って参戦したいと思います(`・ω・´)